2020年度のヒートパイプ国内市場規模を前年度比105.8%の312億8,300万円と推計
~IoT技術の進展や5G通信の拡大、環境問題への取り組み活発化等を背景に、冷却部品・放熱部材の需要は拡大の見通し~
株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内のヒートパイプ市場を調査し、用途別や筐体原料・作動液原料の種類別動向、参入企業各社の動向、将来展望などを明らかにした。
ヒートパイプ国内市場規模推移・予測
1.市場概況
ヒートパイプとは液体の蒸発と凝縮の潜熱を利用した放熱部材で、小さな温度差で大量の熱を移動させることが可能な、主に銅製の管に作動液として純水やフロンガス冷媒を封入した熱伝導デバイスである。
1963年にアメリカで開発されて以降、人工衛星の温度制御や電気機器、家電、電子機器などに広く用いられてきた。また、近年はIoT技術の進展や5G(第5世代移動体通信システム)による通信の拡大、環境問題への取り組みの活発化等を背景に、各製品の冷却部品、放熱部材としてのヒートパイプの需要が拡大しつつあり、2020年度のヒートパイプ国内市場規模(メーカー出荷金額ベース)を前年度比105.8%の312億8,300万円と推計する。
用途別に市場をみると、冷蔵庫(家庭用・業務用)やエアコンなどの電気機器や家電で50%以上の構成比を占めており、次にパソコン、スマートフォン、タブレットなどの電子機器、その他では鉄道車両や宇宙機器、再生可能エネルギー設備用などがある。
2.注目トピック
環境事業として、再生可能エネルギーを活用した熱輸送技術に期待
ヒートパイプが活用される新たな用途として、豪雪地域の融雪設備として再生可能エネルギーを活用したものがある。融雪工法の中でも最も費用が安い地下水散水方式と比較すると、再生可能エネルギーである地下の地中熱をヒートパイプで集熱して舗装部分の融雪を行うシステムは設置費用が必要となり、初期投資が非常に高いことが導入への高いハードルとなっている。が、近年では、環境省からも補助金が出されていることから非常に注目を集めている。
電力エネルギーに頼ることなく、初期設置費用のみで自然エネルギーを半永久的に使用できる設備としては、環境問題の面から考えても非常に有用な設備である。設置を必要とする公共施設や企業、一般住宅は多く、認知度が増えればさらに需要が拡大する可能性が高い。
3.将来展望
最近では、発熱源自体の性能が高まり冷却を必要としなくなった製品や、ヒートパイプに代わる高性能な冷却部品の開発が進んでおり、一部の用途ではヒートパイプの存在、その価値についても懸念されている。
一方で、それぞれの用途においては、常に熱との戦いが行われているのも事実である。特に、今後はIoT技術・DX化の進展により、発熱源となる半導体の使用量が増えるのは避けられない方向であり、そこでの熱問題への対処としては現在活用されているヒートパイプが一番手になるはずで、使用用途範囲の拡大やそれに伴う市場成長も期待できる見込みである。例えば、EV化の進展による自動車1台あたりの半導体使用増加や、水の処理を伴う場面での電子機器類等の使用増加が見込めること、半導体やパワーデバイス冷却への適用拡大がヒートパイプ市場を押し上げることになると考える。
こうした需要の増加を背景として、2030年度のヒートパイプ国内市場は365億300万円(2020年度比116.7%)に成長すると予測する。
調査要綱
1.調査期間: 2021年4月~8月 2.調査対象: 国内のヒートパイプ主要メーカー、関連(作動液等)メーカー、研究機関、業界団体その他 3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、ならびに文献調査併用 |
<ヒートパイプとは> ヒートパイプとは液体の蒸発と凝縮の潜熱を利用した放熱部材で、小さな温度差で大量の熱を移動させることが可能な、主に銅製の管に作動液として純水やフロンガス冷媒を封入した熱伝導デバイスである。 |
<市場に含まれる商品・サービス> ヒートパイプやヒートパイプに類するもの、関連する製品など |
出典資料について
資料名 | 2021年版 ヒートパイプ市場の現状と将来展望 |
発刊日 | 2021年08月31日 |
体裁 | A4 120ページ |
定価 | 165,000円 (本体価格 150,000円) |
お問い合わせ先
部署 | マーケティング本部 広報チーム |
住所 | 〒164-8620 東京都中野区本町2-46-2 |
電話番号 | 03-5371-6912 |
メールアドレス | press@yano.co.jp |
©2021 Yano Research Institute Ltd. All Rights Reserved.
本資料における著作権やその他本資料にかかる一切の権利は、株式会社矢野経済研究所に帰属します。
報道目的以外での引用・転載については上記広報チームまでお問い合わせください。
利用目的によっては事前に文章内容を確認させていただく場合がございます。