マルハニチロの加工事業の2021年4~8月までの業績は、好調だという。売上高は前年比5%増、営業利益は8%増で着地した(会計基準の変更を織り込んだ値)。
ユニット別では、家庭用加工食品ユニット(缶詰・レトルト・フィッシュソーセージ・ちくわ・デザート等)は若干の減収も、他の4ユニット(家庭用冷凍食品・業務用食品・畜産・化成)は好調に推移しているという。半澤貞彦取締専務執行役員がこのほど、本紙「冷食日報」の取材に明かした。
家庭用冷凍食品ユニットの売上高は前年比2%増。家庭用冷食市場は昨春、コロナ禍による緊急事態宣言で需要が大幅増となり異常値が出た裏年に当たるため市場環境は厳しいと見込んでいたが、4~8月の市場はSCIデータで前年比3%増と堅調で、同社も前年を上回った。
業務用食品ユニットの売上高は前年比7%増。第1四半期(4~6月)にコロナ禍が一時的に落ち着き、人流が増えたこともあり売上高が10%増と伸長したことが寄与した。利益面でも、販売増に加え物流改革効果などで改善した。同ユニットに含まれるヤヨイサンフーズの業績も、前期は赤字と苦戦したが、黒字を回復した。
業態別では、CVS(コンビニエンスストア)向け(レジ横惣菜・サンドウイッチや弁当の具材等)が前年比20%増、生協ルートは昨年好調の裏年に当たるが落とさず2%増と好調だった。一方、不調の給食・外食ルートでは、一部チェーン外食向けでは好調なものの、全体では居酒屋チェーンの不調が続くなどしており、前年並程度だが一昨年比では80%程度の苦戦が続いているという。
また、介護食(メディケア食品)は今春発売した「やさしいおかずセット」シリーズは生産が追いつかないほどの高評価を受け、一時休売に陥ったが、生産体制を整えて今秋再開。当初計画の1.5倍規模の注文があり「商品そのものの評価に加え、調理現場の人手不足というマーケットや社会の課題に対応したことが評価されたのではないか」という。
〈タイN&Nフーズ生産は人員減で稼働継続、値上げは来春以降検討〉
コロナ禍の影響が各所で報じられている海外での生産について、タイN&Nフーズの生産は、7割ほどの人員で稼働を継続しており、現地政府方針などで日々状況が変わる可能性はあるが、年末の受注残に向けてなんとか乗り切ろうとしているという。ただ「100%の稼働は難しく、どこかで多少ご迷惑をおかけする所が出てくるのは避けられない情勢」だという。
中国での生産は現時点で大きな影響は出ていないという。
また、値上げについて、各種原材料価格等が上昇し、冷食業界でも値上げを発表するメーカーもある状況だが、「今秋は案内のぎりぎりのタイミングでもあり値上げを見送った。各種情勢を判断しながらだが、仮に値上げがあるとしても来春以降になる」見通しだという。
〈生産面では群馬工場で焼そばライン新設〉
冷凍食品の生産面では、群馬工場(群馬県大泉町)に25億円を投じて焼そばのライン新設を進めており、来秋の稼働を計画する。これにより、生産能力を高めることで、現在応えられていない要望にも応じられるようになる。
また、弁当品を中心とするフライラインが多いことから移設・再編を進めているが、現在保有するフライラインを維持するためにも弁当品の新商品投入を継続していく。
同社では弁当品から惣菜への生産再編を進めているものの「現実的にはフライラインを持っている。もちろん販売を伸ばせるに超したことはないが、何もしなければ販売が落ちてしまう。そのためにも、弁当品の新商品投入が必要」だと話した。
〈冷食日報2021年9月16日付〉