自民党総裁選の投開日は2021年9月29日である。河野太郎氏、岸田文雄氏、高市早苗氏、野田聖子氏の4氏で争う構図で、女性の立候補者が2人というのは初のことだ。総裁となった新リーダーには、コロナ対策の舵取りという重要な役割が待ち受ける。果たして誰が勝つだろうか?
自民党総裁選について
まず自民党総裁選について、整理しよう。
自民党総裁選は9月17日に告示され、9月29日に投開票が行われる。告示日に立候補したのは、冒頭紹介した4氏だ。立候補には自民党の国会議員20人の推薦人が必要とされているため、4氏とも20人の推薦人を集めた上での立候補となっている。
どのような仕組みで総裁が選出される?
自民党総裁選は9月29日に投票が行われる。その際、自民党の国会議員は1人1票を有し、計383票分が投じられる。一方で「党員票」も383票分が投じられる。党員票は、全国の党員約110万人の投票結果を集計し、「ドント方式」と呼ぶ仕組みで各候補者に配分される。
この投票で決着をつけるためには、過半数の票を獲得する候補者が出なければならない。仮に4氏がそれぞれ25%の得票を得た場合、決着はつかずに「決選投票」が行われることになる。
決戦投票は1回目の投票の上位2人で行われ、国会議員票の383票のほか、「都道府県票」が計47票投じられる。都道府県票は、1回目の党員投票の結果を都道府県ごとに集計し、最多の票を得た候補に1票が投じられる仕組みだ。
4氏のプロフィールと政策
では続いて、各候補者のプロフィールのほか、掲げている政策を紹介しよう。まずプロフィールについてだが、以下のように、最年少候補者は河野氏で58歳、最年長候補者は岸田氏で64歳となっている。当選回数は河野氏と高市氏が8回、岸田氏と野田氏は9回だ。
続いて、4氏が掲げている主張や政策を紹介する。
河野氏:「日本を前に進める。」
「日本を前に進める。」がキャッチコピーの河野氏は、具体的には5つの主張を掲げており、その中の1つが「命と暮らしを守る政府」だ。この主張に基づき、河野氏は新型コロナウイルスの感染防止対策に全力を傾けるという。
河野氏は現在、新型コロナウイルス感染症ワクチン接種担当大臣であることから、すでに感染対策やワクチン接種などの面で多くの経験を有している。河野氏が自民党総裁になれば、日本のコロナ対策はより加速する可能性が高そうだ。
岸田氏:「声をかたちに。信頼ある政治。」
岸田氏は、自民党の前政調会長で、外務大臣や防衛大臣を歴任した経歴を持つ。自民党総裁選では「新型コロナ対策」「国民を守り抜く外交・安全保障」「新しい日本型資本主義」「地方こそ主役」という4つの主張を掲げている。
そして「声をかたちに。信頼ある政治。」というキャッチコピーにもあるように、政治に対する信頼を国民から取り戻すことを強調しており、国民が納得いくまで政府が説明を行うことの重要性を説いている。
高市氏:「日本を守る。未来を拓く。」
高市氏は前総務相で、自民党の政調会長を2任期経験している。キャッチコピーは「日本を守る。未来を拓く。」だ。最優先事項としては、新型コロナウイルス感染症対策の強化と、有事の経済政策として「日本経済強靱化計画」を実行することを掲げている。
高市氏は4氏の中で最も経済政策を強調しているような印象を受ける。また、会見での記者とのやり取りや、テレビ番組でのコメンテーターのやり取りの様子から、「キレ者」「実力者」といった印象を持つ人も多いようだ。
野田氏:「だれもが『わかる政治』を」
野田氏は現在、自民党の幹事長代行という立場だ。野田氏は過去3度にわたり、総裁選で推薦人が集まらずに出馬を断念しており、そのような経緯もあって今回の総裁選にかける思いは強い。
キャッチコピーは「だれもが『わかる政治』を。」で、国民のだれもがわかる「透明な政治」の確立に尽力する考えだという。また、「こどもまんなか庁」という新たな庁を設立し、子どもを守る仕組みや少子化からの脱却などを目指す考えも表明している。
「衆議院議員選挙」にも注目を
菅義偉首相の総裁任期は9月末となっており、自民党総裁選の勝者が菅政権の後を継ぐことになる。4氏のうち誰が新たな首相になるのか、関心が集まる。
ちなみに、自民党総裁選の後、衆院議員の任期満了に伴う衆議院議員選挙が行われる。いまのところ、衆院選は11月7日が投開票日となることが濃厚だ。
もしこの衆院選で政権交代が起きれば、自民党以外から再び新たな首相が選出されることになる。そのため自民党総裁選と合わせて、その後の衆院選にも注目したいところだ。
文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)