食品産業新聞社
(画像=食品産業新聞社)

〈和牛中心に枝肉相場は弱含み、スソ物中心の荷動きに〉
ことしの盆休み期間は、新型コロナウイルスの感染拡大の広がりで帰省や外出が自粛され、大雨による気温低下の影響もあり量販店など小売関係は精肉・素材回帰の動きが強まり、売行きはそれなりに良かったようだ。半面、外食や地方のホテル向け需要は引続き厳しい状況となった。

もっとも、盆休みが明けると小売需要も失速し、緊急事態宣言の延長・対象地域の拡大で玉が動かず、問屋筋も焼材なども在庫を抱える展開に。中間流通の工場も、従業員のコロナ感染で一時的に稼働が止まったとの話もあるが、相場などにあまり影響は見られず、それだけ実需の弱さを示しているといる。結果、8月の枝肉相場(東京市場)も月末にやや戻したものの、月間平均では和牛で前月から100円以上値下がりとなった。

9月は例年、彼岸に向けて量販店の棚替えが進む時期だが、コロナの感染者数が増えるなかで、9月13日以降、緊急事態宣言・まん延防止等重点措置が解除されるのか見通しが立ち難い状況だ。量販店も密を避けるため、チラシなどで催事を大々的に打ち出し難く、需要の下支えは限定的とみられる。長雨・曇天よる葉物野菜の価格次第では、スライス商材の売行きにも影響を及ぼしそうだ。

〈供給見通し〉
農畜産業振興機構の牛肉需給予測によると、9月の成牛出荷頭数は和牛が3万7,900頭(前年同月比1.5%減)、交雑が1万9,300頭(同5.8%増)、乳用種が2万7,500頭(同3.6%減)と見込んでいる。輸入品はチルドが2万1,400t(17.0%増)、フローズンが2万6,600t(2.5%増)と前年実績を上回るとしている。

交雑種の増加はあくまで牛個体識別情報がベースとなるため、今後も弱い枝肉市況が続くようであれば、来月以降に出荷を繰り延べる動きも出てきそうだ(和牛も同様)。また、輸入品は現物のコストが高騰しているにもかかわらず、盆休み明け以降、荷動きはかなり弱まっており、投げ玉も増える可能性もある。このため、ホルスへの代替需要もスネなど一部に限定されるとみられる。

〈需要見通し〉
前述の通り、盆休み明け以降の末端消費は予想以上に弱く、量販店などの末端サイドも在庫を抱えている状況だ。実際に、ここ数日間、和牛を中心にモモの荷動き・引合いが停滞していることも証左といえる。現在は、和牛・交雑ともにブリスケなど切り落とし・小間材で動いているが、肩ロースといったスライス材の需要が本格化するのは暑さが落ち着く今月下旬か10月からとみられる。

農水省の9月の野菜の生育状況・価格見通しによると、白菜は長雨・曇天の影響で生育が停滞しているものの、出荷の大幅減少は見込まれず、出荷数量・価格ともに平年並みで推移するとしている(キャベツは生育順調で出荷数量は平年を上回り、“お買い得の見込み”という)。需要期が過ぎたバラ系は徐々に厳しくなり在庫増の懸念も。ロース、ヒレは輸出向けを除き、外食需要が動かない限り、とくに交雑・ホルスに関して引続き厳しいとみられる。

コロナの感染予防のため全国レベルでさまざまな規制が敷かれるなか、とくに外食需要は、緊急事態宣言が9月13日以降、解除されるとしても、一連の相場にどこまで付いて来ることができるか不透明だ。学校給食も分散登校や短縮授業の影響が懸念される。

〈価格見通し〉
2020年は行政の補助事業の影響もあり、和牛3~4等級を中心に月末にかけて強含みの展開となった。ことしは末端消費が冷え込んでいるため、相場の上げは見込めず、弱含み展開となりそだ。今後の出荷動向にもよるが、和牛の上位等級は値が付く枝と付かない枝の差が激しいと言われており、去勢5等級で2,500円前後とみるが、4等級で2,000~2,100円、交雑去勢B3等級は1,500円前後、逆にホルスはモノが集め難く去勢B2で1,020~1,040円程度と予想される。

〈畜産日報2021年9月2日付〉