矢野経済研究所
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8月30日、香川県三豊市の須田港と粟島を結ぶドローンによる定期貨物便の運航がはじまった。運航を担うのは離島が抱える物流課題の解決に取り組む高松市のベンチャー「株式会社かもめや」、この6月に三豊市と協定を締結し、定期運航の実現に向けて準備を進めてきた。 須田港の沖合4.2キロに位置する粟島は、132世帯、216人の島民が暮らす。高齢化率は83%、人口は10年前と比べると4割減少し、高齢化率は10ポイント増えた(平成27年国勢調査)。定期船の航路はあるが、過疎化が進行する中にあって生活インフラの維持が大きな課題だ。

スタートしたばかりの定期便の積載量は1㎏まで、購入できるのは提携コンビニの商品に限定される。運行は週5日、1日3便、手数料は500円、午前に注文すれば午後には商品が届くという。品物はスタッフが戸別配送、注文は電話や専用の注文票で行えるなどITに不慣れな高齢者に配慮した事業モデルとなっている。
計画では年度内に雨天でも運航できるよう機体の防水化をはかるとともに、来年中には積載量を5㎏まで増やすという。将来的には医薬品の輸送や無人操縦船の導入も視野に入れる。

日本の有人離島数は416島、うち離島振興法の対象は254島、そこに37万6千人が暮らす(平成27年国勢調査)。急速な過疎化と定期航路の縮小が続く中、医療体制や日常生活における利便性の維持は共通の問題である。ドローンによる定期貨物便の就航は他の島民にとっても大きな希望となろう。

問題はいかに事業を継続させるかという点にある。言うまでもなく需要量そのものの安定した確保が不可欠である。定住人口の拡大は容易ではない。まずは観光振興、そして、地域特性を活かした関係人口づくりが求められる。そのためには自然や歴史、暮らし、文化など地域資源の再発見にもとづく島の魅力の再定義が必須であろう。
その意味で先端テクノロジーの活用はそれ自体が新たな地域資源になるはずだ。単なるコストや効率化とは異なる視点で、豊かな自然と共生する「過疎」におけるテクノロジーの新たな可能性を引き出して欲しい。

今週の“ひらめき”視点 9.5 – 9.9
代表取締役社長 水越 孝