ひかり味噌「2021年味噌ヌーボー 初熟」
(画像=ひかり味噌「2021年味噌ヌーボー 初熟」)

毎年、業績を伸ばし続けているひかり味噌は、コロナ禍であるにもかかわらず、攻めの姿勢を崩さない。秋の新製品では、これまでになかった新たな切り口で付加価値型の新製品を投入する。新工場の建設も順調に進んでおり、2022年2月の操業を予定している。そこで、今期の業績動向やこれからの事業テーマについて林善博社長に話を聞いた。

ひかり味噌 林社長
(画像=ひかり味噌 林社長)

──第三四半期の業績動向について

金額、物量ともに前年を上回って推移している。

極端な特売は前期から絞り込んできて、それがようやく数字に表れてきた。金額で、「無添加円熟こうじみそ」は2ケタ増、「こだわってます」は5%増となっている。

海外の売上の6割は米国だが、米国のメインアイテムは圧倒的に有機みそとなっており、累計で2ケタ増となっている。

今期(2020年10月〜2021年9月)は金額で5%増、物量で2%増の着地になるのではないかとみている。

業績の要因は国内も海外も業務用の比率が低かったこと。業界では、業務用の販売が落ち込んだことで、出荷数量では前年を下回ってしまった。逆に当社では業務用の販売比率が低いので、業績に与える影響を最小限に食い止めることができた。とはいえ、和定食業態には商品を販売しており、店舗では弁当のテイクアウトが始まっているが、そこで、みそ汁を購入するケースが少ないので、それが今後の課題となっている。

また、外食では人手不足が原因で、みそ汁サーバーを導入するところが増えている。新型コロナにより、業務用の販売が苦しいからといって、みそ汁サーバーの受注が減るという事態にはなっていない。厨房の合理化、味の均一化を理由に引き合いはある。

──コロナ後の景気回復に向けた戦略について

コロナ収束に向けて、産業回復、景気回復の流れが見込まれ、大混乱になるだろう。現在でも、海外のコンテナは全く予約が取れない状況が続いている。世界全体のサプライチェーンが脆弱な状態が続いていると思う。当社では、一方的に利益を犠牲にして量的な拡大は図らない。コロナ収束に合わせてフルスロットルで飛ばさない。量から質へのスローガンをもとに、経営のマネージメントを行いたい。

〈新商品「味噌ヌーボー初熟(はつなり)」新発売、今までにない発想で開発〉
──新型コロナによって生まれたニューノーマル時代への対応について

勤務形態や雇用形態も多様化してくる。オフィスでみんなが集まる必要性もないと思っている。オフィスに来る必要がなければ、一人で黙々と仕事していた方がいい。企業によっては、オフィスの広さを半分にしてしまう所もあると聞いている。そういう意味での価値観は変えなければいけないと思っている。

──年末に向けて、新商品を含めた事業戦略について

新商品は、これまでみそ業界になかった発想で開発したみそを発売する。新商品の「味噌ヌーボー初熟(はつなり)」は、長期熟成が当たり前の大寒仕込みなのに、わずか10カ月で売り出してしまう商品。この商品で早取りの初物の良さを楽しんでもらうことがコンセプトとなっている。天然醸造で熟成期間が長いと食塩値を上げないと品質が不安定になってしまうが、この商品は既存の天然醸造のみそに比べて、一割食塩値を下げている。

最高の原料を使い、原料の良さを若いみそで楽しんでくださいというのがコンセプト。10月下旬には店頭に並んで、1月頃までに売りつくしてしまう計画としている。

今回はロットも少なく、試験的に仕込んで、市場の反応が良ければ、毎年スケールアップしていきたい。みそのコンセプトを変えたという点では画期的なみそとなっている。

もうひとつの即席みそ汁「味噌屋のまかないみそ汁」は、みそとかつお節と最低限の具材だけをセットにした。通常の即席みそ汁はうま味を出すために、いろいろな調味料を添加している。今回の新製品にはうま味調味料をほとんど使っていない。それに依存しなくても、みそだけでおいしさをあじわっていただける即席みそ汁となっている。

2種類のタイプを用意したが、ひとつは3年以上の天然醸造で、もうひとつは蔵に眠っていたこれまで、即席みそ汁としては、市場に出たことのない貴重な熟成みそを使った。ただ、熟成を深めたみその方は小容量生産のため、数量限定発売とした。みそ屋だけが知っているみそを使っていることから、商品名にも「まかない」という言葉を入れている。即席みそ汁を販売しているメーカーはたくさんあるが、みそメーカーならではの差別化、さらにひかり味噌しかできない商品は何かと考えた末に生み出された商品となっている。

ひかり味噌「味噌屋のまかないみそ汁」(熟成赤みそ、蔵出し信州こうじみそ)
(画像=ひかり味噌「味噌屋のまかないみそ汁」(熟成赤みそ、蔵出し信州こうじみそ))

経営の課題として、「イノベーション スルー トラディション」というイメージをテーマに、伝統産業に安住するのではなく、変えていくからこそ伝統が成立する。これからも存続することができる。この秋に発売する新商品ではイノベーションを具現化できた商品だと言える。

──新設の工場の進捗について

順調に進んでいる。現在、機械を搬入しているところ。2022年の1月末に竣工で、2月から操業する。出荷ベースでいくと、4月を予定している。数量は2期工事が終わったところで、1万5,000tを計画している。できるだけ早く生産能力を高めたいと思っている。2020年からの出荷の伸びを考えると付加価値型のみそが伸びているので、付加価値のみその増産体制を整えたい。ただ、今後、いろいろな不確定要素がある中で、他の設備投資や、新規プロジェクトに対応できるようにしておきたいとも考えている。

〈大豆油糧日報2021年8月5日付〉