食品産業新聞社
(画像=食品産業新聞社)

〈猛暑続きで出荷頭数少なく、月平均で税抜き560〜570円〉
例年、7月後半は需要が落ち込むなか、梅雨明け後の猛暑で出荷頭数が減ることで豚価が下支えされるケースが多い。2021年は、荷動きこそ芳しくはなかったものの、全国的に気温が高い日が続いたことに加え、豚熱(CSF)発生などによって出荷が減少。このため、関東など一部の地域では増体悪化による出荷減や上物率の低下などの影響で、足りない分を市場で手当てする動きがあり、枝相場は上物税抜きで600円を超える日が多くみられた。

さらに、輸入チルドのコスト高や入船遅れによる供給不安なども相まって、月間を通して高値に張り付いた。結果、同月の東京市場の月間平均は上物税抜き588円(税込み635円)で前年同月比6円安となった。コロナ禍で需要が高まっていた2020年からはわずかに下げたものの、コロナ以前の一昨年比では68円高と依然として高値を付けている。

8月2日の東京市場は同647円(税込み699円)でスタートした。需要面では、首都圏をはじめ全国で再び新型コロナの感染者数が増加傾向にあるなか、緊急事態宣言が延長・拡大され、盆休み期間中の帰省などを控える動きが一層強まるとともに、BBQといった夏の行楽需要への期待は薄く、引き続き家庭内消費中心の展開となりそうだ。供給面では、梅雨明けによる猛暑で出荷はあまり伸びてこないことが予想され、国産の出荷頭数が潤沢とは言えないなかで、輸入チルドも不安定な状況が継続することが見込まれる。このため、8月も盆休み前までは相場の下げ要因は少なく、月間平均では上物税抜きで560円〜570円(税込み605〜615円)と予想する。

〈供給動向〉
農水省が7月21日に公表した肉豚生産出荷予測によると、8月の全国出荷頭数は127.5万頭と概ね前年並みを見込んでいる。ただ、過去5年平均比では2%減少するとし、130万頭を割るものとみられる。8月も梅雨明け後の全国的な猛暑続きが予想され、餌の食い込み低下による増体悪化などで、出荷減や上物率の低下などの影響が懸念される。

農畜産業振興機構の需給予測によると、8月のチルド輸入は3万1,500tと予測。昨年に輸入量が少なかった反動から、前年同月比0.7%増とわずかに昨対を上回るとするものの、北米を中心とした現地価格の高騰や入船遅れなどで、引き続き慎重な買付けにならざるを得ない状況となっている。

〈需要見通し〉
7月の荷動きは決して良くはなく、ウデやモモといった比較的安価な部位に引き合いが集中した。ただ、輸入チルドがタイトにあるなか、7月最終週からはカタロースやバラ、ヒレなど国産にシフトするケースがみられ、徐々に引き合いが強まっている。ウデやモモは「通常、学校給食のストップに伴い荷動きは弱まるものの、そのわりには動いている」(関東の卸筋)。

8月は例年、盆休みにかけて都市人口が減少し、都市部での需要は伸び悩む傾向がある。しかし、コロナ禍での帰省・外出控えから、都市部でも内食化傾向が堅調に推移することが予想される。夏にかけて、BBQといった行楽需要への期待は薄い一方で、家庭内での焼肉需要などによるカタロースやバラのさらなる荷動き良化に期待したいところ。

〈価格見通し〉
8月の豚枝肉相場は、コロナ禍の末端消費と出荷頭数の不透明さが相場にどう影響してくるか、予想が難しい。ただ、上述のとおり、月前半は盆休みに向けた手当てや輸入品との兼ね合いを勘案しても相場の下げ要因は少なく、高値推移することが予想される。

一方で、経済不安と相まって消費者の財布の紐がより一層固くなる月後半は、天候や出荷動向次第でもあるが、相場は下落していくものとみられる。これらの状況から、8月の相場は、盆休み前までは600円前後と強めに推移し、盆明け以降は徐々に下げ、月間平均(東京市場)では上物税抜き560円〜570円(税込み605〜615円)と予想する。

〈畜産日報2021年8月3日付〉