2021年3月に初のプライベートブランドの冷凍食品を投入したエムアイフードスタイル。運営する「クイーンズ伊勢丹」や、スーパーの「ライフ」などで展開し、順調な推移を見せる。
同社ではこれまで冷凍食品にそれほど力を入れていなかったそうだが、コロナ禍に販売が大きく伸びたことで、方針を転換。一部の店舗では、部門の垣根を越えて冷食の売場を作り、今までとは異なる取り組みを進めている。冷凍食品などに携わる松原一樹氏と大島孝徳氏に聞いた。
――2020年4月に発令された最初の緊急事態宣言以降、冷凍食品の需要は高まっている。推移は
松原:新型コロナウイルスの影響でストック需要が高まり、それにより冷凍食品の販売も伸びた。この間、冷凍のPB(プライベートブランド)は取り組んでおらず、NB(ナショナルブランド)品などを展開するだけで、平台や企画などでの訴求は行っていなかった。それなのに、2020年2月以降の既存店の売上は、前年比で20%増~90%増で推移している。平均客単価も、2017年の平均客単価は400円だったが、2020年は440円で、この3年で約40円伸びている。
2020年3~5月は「巣ごもり消費」で伸長し、9月以降はその影響は薄れたものの付加価値の高い商品で売上が伸びてきた。正直、今までは冷凍食品を「ただ置いておくだけの商品」と捉えていたが、コロナ禍で伸長してからは取り組みを大きく見直した。既存店では平台を増設し、新店の場合は既存店よりも広い売り場を設けるようにしている。
中でも「港南台バース店」(横浜市港南区)は実験的な取り組みを多く実施している。今までは、冷凍食品でも生鮮や精肉などセクション別で扱う商品が異なっていた。港南台では部門の垣根を越えて、鮮魚売り場で強い海鮮グラタンなど、今まで埋もれてしまっていた商品を展開できるようにしている。新店や改装した店舗でも同様の取り組みを行っている。
大島:冷凍食品は価格訴求が基本だった。しかし、取り組む中で利用される方が良い商品をストックしたいというニーズもあった。これは差別化になると考え、取引先の特徴的な商品を多く取りそろえるようにした。この取り組みは徐々にほかの店舗でも取り入れられればと思う。
また、2020年はどのスーパーも需要が高まったため、2021年は当社もどのカテゴリーもパッとしない。特にグロッサリーは苦戦している。しかし、冷食は例外的な動きになっている。そのため、品ぞろえのグレードを上げるようにしている。
――販売が好調な商品は
松原:黒豚餃子工房「ひぃ坊家(ひーぼーげー)」の冷凍餃子など、地方で人気のある単価は高めの商品が順調だ。一時は販売を止めていたが、「また置いて欲しい」などの声があり再度販売したところ、コロナ禍に入ってからは伸長している。他は、NB品ではない商品が順調に推移しており、「クイーンズ伊勢丹」のイメージとマッチした、差別化できる付加価値商品を訴求している。
――冷凍スープのPBを販売している。きっかけは
松原:スーパーの「ライフ」さんから「冷凍食品を作れないか」というオファーがあり、開発を開始した。これまで工場に冷凍食品を作るノウハウがなく、完成まで1年近くかかった。今年に入ってから需要は落ち着き、2021年3月は前年割れだった。しかし、PBのスープを販売してから、再び10%20%増という状態になった。発売以降、スープに合った商品などのついで買いで、買い上げ点数も増えている。
大島:スープカテゴリーを見ると、PBの効果で前年比40%増に近い水準となっている。さまざまなスープ商品がある中で、後発として具材感などにこだわり、他の商品に負けないものを作れたと思っている。
――今後の取り組みは
松原:これほどの伸びは予想していなかった。冷凍食品はこれからも落ちることはないカテゴリーと考えており、健康に関連した商品などもそろえられればと思う。また、好調な冷凍スープもより力を入れていきたい。新フレーバーの追加なども検討したい。
大島:他では、漠然としたイメージだが、食卓のメニューを想像できるものなどを追加できればと思う。
〈冷食日報2021年8月2日付〉