学生が作った「豚肉のポン酢炒め」メニュー
(画像=学生が作った「豚肉のポン酢炒め」メニュー)

日清医療食品は7月8日、少ない労働力でも安全・安心で均一な品質の食事を実現する、セントラルキッチン方式を学生に伝えるため、長崎県の活水女子大学で特別授業を行った。少子高齢化の進展で、医療・介護における食事提供は、現地調理が難しくなり、工場等で食材を一括調理して各施設へ配送するセントラルキッチンを活用した調理方式に変化しつつある。

セントラルキッチン方式は、管理栄養士の資格認定国家試験でも問われる項目だが、大学の実習で学ぶ機会が無いことが課題だった。2022年に受験を控える活水女子大学の3年生約60名は、日清医療食品のセントラルキッチンで製造された商品「モバイルプラス」を使用し、簡便な食事提供を体験した。これまで同社は東京都の和洋女子大学、滋賀県の龍谷大学、愛知県の修文大学で同様の産学連携事業を実施しており、活水女子大学で4校目。九州では初めての試みとなった。

日清医療食品福岡支店管理部の坂本真一さんはセントラルキッチン方式について、「少子高齢化によるマンパワーの減少は避けて通れないが、その中でも医療・介護の食事を安全・安心に提供することができる調理方式である」と説明して、そのメリットに〈1〉品質の安定化、〈2〉衛生管理の徹底、〈3〉調理コストの削減、〈4〉労働人口減少の対策――の4点を挙げた。

工場で加熱調理した食品は真空パックに入れられ急速冷却後、配送される。各施設では届いた食品を喫食時間に合わせて再加熱して、和えて、盛り付けるだけなので、通常の調理で求められる野菜などの下処理や調理工程は不要だ。

学生は「モバイルプラス」を使うことで通常だと授業で2時間調理に時間かけるところを45分で、30人分の食事を調理した。献立は主菜「豚肉のポン酢炒め」と副菜2品「ポテトサラダ」「浅漬け(白菜)」に「みそ汁」「ごはん」。

日清医療食品の「モバイルプラス」を使ってセントラルキッチン方式を体験する学生たち
(画像=日清医療食品の「モバイルプラス」を使ってセントラルキッチン方式を体験する学生たち)

体験した学生の小野花梨さんは「工程が少ないことに驚いた。セントラルキッチン方式は言葉だけでは理解しにくい。現場の調理方法を実際に体験できてよかった」と喜びを語った。実習前後の心境の変化について聞くと、「実習前は(工場で作られた食品は)冷凍食品のようだと思ったが、実際に作ってみるとおいしく、イメージがとても良くなった。衛生的で、なにより簡単。下処理がなくスムーズに調理ができるので、慣れたら1人でもできると思った」と語った。

将来、給食業務に携わる仕事がしたい一井麻里子さんは「食べたら、漬物はシャキシャキしていて品質の低下がみられず、おうちで作った料理みたいでおいしかった。医療や介護の現場は忙しく人手もいない。セントラルキッチン方式だと1人でできるし、事前にしっかり調理しているので、食べる人の満足につながると思う」と感想を話した。

授業終了後、活水女子大学の健康生活学部食生活健康学部の准教授、芹田千穂さんは「特に長崎は地域柄福岡等への人口流出が大きく、今後、調理従事者は減り、喫食者は増えることが予想され、当然従来のやり方だけでは対応できない。学生には将来そのような課題に直面したときに、1つの選択肢としてセントラルキッチン方式を利用してほしい」と期待を込めた。