食品産業新聞社
(画像=食品産業新聞社)

〈輸入品は宣言解除も需要回復せず、コスト高で収益厳しい〉
6月の鶏肉需給は、東京などでは緊急事態宣言解除が下旬まで延長されたことで、内食需要に支えられたが、国産生鮮モモは堅調な生産体制や、例年モモ需要が弱まることもあり、週を追うごとに下落した。そのため、高値圏内にあるものの、年末需要を見据え凍結玉の確保が進んだようだ。ムネやササミは量販店での特売回数が増加するなど、堅調な販売を維持した。手羽先需要も引続き強く、一部では品薄感もみられる。

一方で輸入品は宣言解除による需要回復が期待されたが、飲食店では引続き一定の制限下に置かれ、期待したほどの荷動きには至らず。他方で現地コストの上昇や先々の輸入量が前年同期を下回ることを勘案して、仲間相場はもちあいで推移した。収支面では売価を上げなければ厳しい状況にある。6月の月間平均相場は、日経加重平均でモモが630円(前年610円)、ムネが296円(前年257円)と正肉合計926円となり前月比34円安となったが、昨対比では59円高となっている。モモは前月比27円安、ムネは7円安となった。

〈供給見通し〉
日本食鳥協会がまとめているブロイラーの生産・処理動向調査によると、7月の生体処理羽数は前年同月比1.7%増、処理重量は0.6%増と増加基調を予測している。地区別では、関東や中部地区では昨対割れを見込むが、主要産地の北海道・東北地区では羽数1.2%増、重量1.4%増を見込む。南九州では羽数は1.9%増と増加を見込むが、重量は前年並を予測している。夏場の生産・処理は台風や酷暑の影響など自然災害に左右されるが、8月も羽数は2.2%増、重量は3.3%増を予測している。自然災害や酷暑の影響が少なければ、増産基調を維持すると見られる。

農畜産業振興機構の鶏肉需給予測によれば、7月の国産生産量は13.5万tと前年同月比2.7%減を見込む。それでも5〜7月の3カ月平均予測では、5、6月が14万tを超えたこともあり、1.9%増の14.0万tを予測している。輸入品は、6月は前年同月の輸入量が多かった反動で7.4%減の4.7万tとなり、7月はタイからの輸入量は増加見込みも、ブラジル及び米国からに輸入量が減少見込みで、11.2%減の4.6万tの予測。3カ月予測では5月が3割増となったため、1.0%増の4.7万tを予測している。昨対比では増減が見られるが、4.5万tを超えた水準を維持している。

〈需要見通し〉
夏本番も近づき、国産生鮮モモ需要はさらに弱含む見通しだが、オリンピックの需要次第で下落幅は最小限の可能性もある。ムネやササミ、手羽先は引続き一定需要に支えられる。7月はオリパラ開催による変則的な4連休があるが、コロナ禍とはいえハレのイメージが強く、量販店では和牛をはじめ牛肉の品揃えを強化する動きが予測され、鶏肉需要は盛り上がりに欠ける。

しかしスタジアム観戦や屋外観戦、酒場での観戦が難しいなかで、自宅観戦需要が期待される。骨付きモモや、から揚げなどのオードブル、各種総菜需要が期待され、季節的なテーブルミート不振と相殺されるかがモモ相場の下落幅に影響しそうだ。輸入品は緊急事態宣言が解除された以降も外食需要回復には至っていないが、コロナ禍ではから揚げ業態などでテイクアウト市場が形成されていることで、一定量の荷動きが継続すると見込まれる。

〈価格見通し〉
国産生鮮モモは需要の弱まり、生産体制が堅調なことを背景にジリ安と予測する。モモはこの数カ月下落が続いており、7月も下げ基調に変わりはないが、2020年同月水準は上回ると見られる。ムネは日経加重平均で300円こそ下回っているが、もちあいと予測する。そのため日経加重平均ではモモは610円前後、ムネは295円前後、農水省市況ではモモは630円前後、ムネは310円前後と見込まれる。

〈畜産日報2021年7月7日付〉