オリーブ油市場の良好コスト環境が一変(画像はイメージ)
(画像=オリーブ油市場の良好コスト環境が一変(画像はイメージ))

家庭用オリーブ油市場は2020年度(2020年4月〜2021年3月)の金額ベースで前年度比0.7%増の431億1,100万円と、引き続き堅調に推移している。一方で重量を見ると、6.3%増の4万6,220tと金額の伸び率を大きく上回った。要因としては、全世界でオリーブの生産量が300万tを超えたことに加え、期末在庫があったことから、オリーブ油のコスト環境が良好となり、安価な輸入品が増加したことが影響したもようだ。

家庭用オリーブ油市場規模(日清オイリオグループ推計)
(画像=家庭用オリーブ油市場規模(日清オイリオグループ推計))

ところが2021年度は、「コスト環境が全く変わった」(製油メーカー)。米国・スペイン間での関税撤廃や欧米でのワクチン接種拡大により、低迷していた消費が回復しているなどの要因もあり、併せてさまざまな穀物相場の連れ高となっているオリーブ油自体の価格が上昇することから、輸入品は前年度に比べると減ると見通される。

オリーブオイルの輸入量と単価の推移(資料:通関統計)
(画像=オリーブオイルの輸入量と単価の推移(資料:通関統計))

大豆や菜種などの歴史的な原料高騰を受け、すでに製油メーカーは汎用油については異例の半年で3回の価格改定を発表している。そのうち、昭和産業が6月1日と8月2日納品分から発表している価格改定には、オリーブ油も対象に含まれている。日清オイリオグループは、「現時点では価格改定を予定していないが、原料相場としては厳しい状況にあることは確か」としており、J-オイルミルズは、「今後の見通しも踏まえ、適切な時期と値上げ幅を検討している状況」とする。

〈家庭用食用油カテゴリ首位奪還に期待、メニュー提案・関連販売・新商品の用途訴求〉
オリーブ油は、家庭用の金額ベースで2018年度から食用油カテゴリナンバーワンの座を守ってきたが、2020年度は新型コロナの影響による内食需要の増加もあってキャノーラ油が2ケタ増と大きく伸長したことにより、僅差で2位という結果となった。だが、「オリーブ油の利用率は汎用油と比較すると低く、潜在的な利用者はまだまだいると考えている」(製油メーカー)というように、さらなる市場拡大の余地は十分にある。

製油メーカー各社は2021年度、さらなる需要拡大を目指し、新たなメニュー提案や関連販売の推進、新商品の用途訴求などに注力する方針を示しており、首位奪還に期待が持たれる。

日清オイリオグループはマンネリ回避策として、手巻き寿司やちらし寿司、ライスサラダなどにオリーブ油をかけるだけで、新たなおいしさが広がる「味変」メニューを新提案する。ピュアタイプの「日清さらっと軽〜いオリーブオイル」は、ドーナツやチュロスといったスイーツなど、多彩なメニューの提案とエンド・催事企画によって、店頭を盛り上げていく考えだ。

J-オイルミルズは、引き続き若年新規ユーザーから強く支持されているJOYL「AJINOMOTO オリーブオイル」とJOYL「AJINOMOTO エクストラバージン」の200g瓶を中心に、プロモーションを展開していく。また、2021年春発売したキャノーラ油にエクストラバージンオリーブ油をブレンドしたクッキング油JOYL「AJINOMOTO EuroliveLight」は、炒め物など普段の調理にオリーブ油の香りや健康感を取り入れたいという消費者の要望に応える商品として、販売を強化していく。

昭和産業は、強みのパスタやミックスとの関連販売とメニュー提案を推進する。また、「コロナ禍の混乱の裏年である2021年は、2020年にできなかった販促を展開していくと共に、各小売が仕掛ける売り場展開に対して、先んじて、どのような提案をしていくかがオリーブ油に限らずキーとなる」と施策を練る。東京五輪についても、「ラグビーW杯の時は内食需要の増加はあった。現状、内食需要が高止まりを継続している中での開催となれば、東京五輪もラグビーW杯と同じく、またはそれ以上に内食需要が高まる可能性もある」と見通す。

〈大豆油糧日報2021年6月17日付〉