〈2020年度マーガリン市場動向〉家庭用は前年超え、業務用は原料の歴史的高騰で価格改定の必要性も(画像はイメージ)
(画像=〈2020年度マーガリン市場動向〉家庭用は前年超え、業務用は原料の歴史的高騰で価格改定の必要性も(画像はイメージ))

〈今期はトライヤルユーザー、使用頻度上昇の定着が鍵〉
家庭用マーガリン市場は、近年シュリンク傾向にあったが、2020年度は前年を超えて着地した。なお、家計調査(1〜12月)のマーガリン支出金額が前年を上回るのは、2012年以来のこととなる。しかし下期は、コロナ禍の内食増加で大きく伸長した上期から伸びが鈍化し、2021年の3月は異常値を叩き出した前年の反動減が色濃く示された。2021年の業界の課題は、内食需要拡大時に取り込んだマーガリンのノンユーザー、使用頻度の上昇をいかに定着させるかだ。

下期を中心に、マーガリン消費動向を家計調査(2人以上の世帯)からみると、上期ほど内食需要が生じず、9月は前年を大きく下回り、10〜11月は前年並みの推移となった。12月〜1月は増加も、2〜3月は前年好調の反動減、バレンタインが緊急事態宣言下だった関係で大きな需要の波を取り込めなかったほか、2021年に入り店頭でのバター不足が解消しつつあり代替需要が低減されたことで、前年を下回った。

タイプ別では、市場構成比の大きいグルメタイプ(バター風味・入り、甘味系)、プレーンタイプは共にプラスとなったもようだ。そのうち甘味系は、ジャムなど競合が多い関係か振るわない。ケーキ用マーガリンは、非需要期の上期に手作り需要で大幅伸長したことで、2ケタ増加で着地した。健康タイプは苦戦傾向にあった。

家庭用メーカーにおいては、2020年度市場環境について、コロナ禍という外部要因が大きいとし、「トランス脂肪酸を巡るネガティブな報道などによる近年のダウントレンドから回復を果たしたとは言い難い」との慎重な見方を示す。2021年度は、特需の裏年に当たり、4月は前年、前々年を下回る厳しいスタートとなっている。しかしその一方で、手作りを促すプロモーションなど地道な活動で活性化を図る考えだ。

原料油脂の高騰も直撃し、これに対しては、増量施策の見直しなどあらゆる手段を含め検討の必要性が生じているという。

〈業務用動向、原料油脂の歴史的な高騰、更なる価格改定の必要性も〉
業務用は、上期に続き下期も厳しい販売環境が続いた。加えて、主原料のパーム油、大豆、菜種が2020年の夏以降価格上昇を続け、歴史的な高騰となり、対応を迫られた。各社、2〜4月から、マーガリン、ショートニングの価格改定の要請を進め、おおむね(値上げに)理解を得ることができたもようだ。しかし、その後も相場は上昇基調にあったことから、さらなる改定に踏み込まざるを得ない状況にある。

日本マーガリン工業会まとめの業務用マーガリン類生産量は、2020年(1〜12月)は前年比5.7%減の17万1,586t、2021年1〜4月では、3.1%減となっている。

下期は多少人の動きが戻ったものの、外出自粛で外食や、インバウンド需要を含む観光・土産菓子が回復せず、さらにテレワークの定着化で都市部のコンビニエンスストアが苦戦し、厳しい販売環境が継続している。巣ごもりによる袋パンなどの特需も下期はほぼ無かったもようだ。

そのような中、最終製品の賞味期限延長ニーズは継続し、おいしさの持続させる日持ち向上効果を有する油脂の販売は各社堅調だった。店舗での廃棄ロス削減に加え、コロナ禍で生じた消費者の買い置きニーズにもマッチしたもようだ。

さらに、新たなニーズとしては、Eコマースの増加や、消費者がパンなどを冷凍して買い置きする動きなどがみられる中、レンジアップ耐性を付与した油脂など、新たなニーズ・課題に対応する製品の投入が見られる。

また、一段と健康志向が高まる中、トレンドの大豆ミートなど植物性食や、低糖質商品の品質向上に油脂の貢献度は高く、これら健康訴求商品に向けた製品も関心を集めている。

加えて、労働環境の整備の流れが進む中、省力化・扱いやすさを備えた油脂も引き続き支持されている。

〈大豆油糧日報2021年6月8日付〉