三菱グループ、没落の足音 重工・自動車・商事、軒並み厳しい状況
(画像=BjörnWylezich/stock.adobe.com)

三菱グループが苦境に陥りつつある。三菱重工の巨額損失、三菱自動車の莫大な赤字、三菱商事の業界首位転落など、同グループにとってネガティブなニュースが続いている。コロナ禍もあり経済が不安定な状況が続く中、三菱グループはこの状況を打破できるのだろうか。

三菱グループの全体像

まず、三菱グループの全体像について説明しておこう。三菱グループは、商社や自動車、重工業、保険、銀行、石油など、さまざまな事業を展開している。商社部門では三菱商事、重工業部門では三菱重工業、自動車部門では三菱自動車が事業に取り組む。

そして、この3社の風向きが最近悪い。三菱重工業は国産初のジェット旅客機「スペースジェット(旧MRJ)」の事業化が失敗したことによって巨額損失を計上し、三菱自動車もコロナ禍で自動車の販売台数が伸びず、赤字額が拡大した。

そして、総合商社の三菱商事にも暗雲が垂れこめている。三菱商事はこれまで、大手総合商社の中でも純利益でトップランナーだった。しかし2021年3月期決算は、伊藤忠商事、三井物産、丸紅に抜かれ、第4位となっている。

グループ3社の業績と現状

三菱グループ3社の状況をもう少し詳しく解説していこう。

三菱重工業:小型ジェット旅客機開発の大失敗による巨額損失

国産では初となるジェット旅客機を製造する、という目標を掲げ、三菱重工業は2008年から累計で1兆円規模の開発費を小型ジェット旅客機の開発に注いできた。しかし最終的に、このジェット旅客機事業を凍結するに至った。

ジェット旅客機事業が凍結に至った理由はいくつもあるが、全てを自社で開発しようとしたことが大きく災いした。航空機開発に関するノウハウや経験が足りず、何度も納期の計画を延期する事態に陥ってしまった。

三菱重工業が、航空機事業とは無縁だったわけではない。米航空機大手ボーイングに納入する航空部品を開発していた。しかし結果として、生半可な知識があったことが計画の甘さにつながったのかもしれない。部品の開発と航空機の開発は全く別次元の話だった。

事実、当初は1,500億円で小型ジェット旅客機を開発する予定だったが、想定外の場面に何度も直面し、どんどん開発費が膨らんでいった。そして、テスト飛行の時間は累計3,900時間に達したが、商業運行に必要な国からの型式証明を取得することができなかった。

三菱自動車:2021年3月期の売上高は35.9%減、業界でワースト1位

自動車メーカー大手7社が発表した2021年3月期の通期決算(2020年4月〜2021年3月)で、三菱自動車は売上高の減少幅が一番大きかった。トヨタ自動車が前期比8.9%減だったのに比べ、三菱自動車は35.9%減だった。ワースト2位の日産自動車でさえ20.4%減で、三菱自動車の苦境が鮮明となった。

最終損益も厳しい状況だ。2期連続の赤字となってしまい、しかもその金額は257億7,900万円から3,123億1,700万円まで拡大している。急速に業績の悪化が進んだ理由としてはコロナ禍が挙げられるが、なぜ他社よりも大きな影響を受ける結果となっているのか。

その理由としては、主力市場での販売回復が遅れたことが挙げられる。三菱自動車はASEAN(東南アジア諸国連合)地域で強い。ただ、そのASEAN地域では思った以上に景気の回復が遅く、販売が低調な状況が続いてしまった。

ただし、2021年3月期の後半にかけては徐々に販売台数が回復しており、今期の2022年3月期に対する投資家の期待感は小さくない。

三菱商事:最終損益で首位転落、純利益は前期比67.8%減に

日本の総合商社における7大商社と言えば、三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、住友商事、丸紅、双日、豊田通商だ。三菱グループの三菱商事はこの7社の中でも王者的存在で、例えば2020年3月期も純利益で首位となっている。

しかし、2021年3月期は今までのようにはいかなかった。最終損益は、前期比67.8%減の1,725億5,000万円まで落ち込み、7大総合商社において純利益ベースで4位に甘んじる結果となった。三菱商事が純利益を大きく落としたのは、原料炭部門の業績悪化やローソン関連、固定資産の減損などが原因だ。

株価は投資家の期待の表れ、今後はどう推移していく?

このような状況の中、三菱重工業と三菱自動車、三菱商事の株価はいずれも過去5年間の最高値より低い水準で推移している。

三菱重工業は、2020年2~3月に起きたコロナショックによって株価が大きく暴落し、その後は株価が回復傾向にあるものの、コロナショック前の水準には戻せていない。三菱自動車に至っては、回復スピードが三菱重工業よりかなり鈍い。

一方の三菱商事は、3社の中では最も株価の上昇が顕著だ。最近は、市場全体が下落トレンドにあることもあって株価を落としているが、少し前まではコロナショック以前の水準に回復していた。

株式投資家は、将来の各企業の成長を織り込んで投資していく。つまり、株価の推移は投資家の期待度の表れと言える。この記事で取り上げた3社とも業績自体は厳しめだが、投資家は3社に対してどのような見方をしていくのか、今後、注目していきたい点だ。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)

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