管首相主導のデジタル庁は「名ばかり庁」になってしまうのか?具体的な施策とは?
(画像=キャプテンフック/stock.adobe.com)

「デジタル庁」という言葉をテレビで耳にする機会が増えてきた。まだ発足していないが、今年2021年9月に新設される予定だ。行政のIT化が遅れている中で期待感は大きいが、発足したら具体的には何に取り組むのか。読者の皆さんの疑問にお答えしよう。

デジタル庁発足の経緯は?

いま、デジタル庁新設の旗を振っているのは菅義偉首相だ。日本政府は2000年ごろから行政のデジタル化を課題に据えてきたが、なかなか取り組みが進んでこなかった経緯がある。このような状況を打破しようとデジタル庁創設の話が持ち上がった。

デジタル庁発足に向け、菅首相は新たなポストとして「デジタル改革担当大臣」を新設し、初代大臣に平井卓也氏を起用した。平井氏は過去にIT政策担当大臣を務めたことがある自民党の衆議院議員で、その後、デジタル庁の発足に向けて本格的に動き始めた。

そして、デジタル庁の創設は「デジタル改革関連法案」に盛り込まれ、2021年5月12日に国会で成立した。その結果、デジタル庁が2021年9月1日に発足することが決まった。

組織の規模は、非正規職員も含めて500人程度となる予定で、特別職の「デジタル監」(※事務次官に相当)を含め、民間から人材を2割程度採用する方針だ。果たしてどのような民間人材が採用されるのか、気になるところである。

デジタル庁が具体的に取り組むことは?

すでに、デジタル庁発足まで約3ヵ月となっているが、では具体的にデジタル庁は何に取り組むのか。デジタル庁の公式サイトは「準備中」とは表示されているものの、すでに開設されている。サイトに掲載されている情報を紐解いていこう。

デジタル庁の意義・目標:国全体のデジタル化を促進

デジタル庁の公式サイトでは、同庁の意義や目標について以下のように説明されている。そのまま引用するので、まず読んでみてほしい。

「デジタル庁は、デジタル社会形成の司令塔として、未来志向のDX(デジタル・トランスフォーメーション)を大胆に推進し、デジタル時代の官民のインフラを今後5年で一気呵成に作り上げることを目指します。徹底的な国民目線でのサービス創出やデータ資源の利活用、社会全体のDXの推進を通じ、全ての国民にデジタル化の恩恵が行き渡る社会を実現すべく、取組を進めてまいります」

この文章によれば、デジタル庁が取り組むのは行政のデジタル化だけではなく、「デジタル時代の官民のインフラ」を作り上げることも目指すという。つまり、国全体のデジタル化を促進するための組織ということだ。

デジタル庁が掲げる3つのビジョンとは?

これらの方針・目的を掲げた上で何に取り組むかだが、公式サイトでは以下の3点がビジョンとして挙げられている。

  • ライフイベントに係る手続の自動化・ワンストップ化
  • データ資源を活用して、一人ひとりに合ったサービスを
  • いつでもどこでも自らの選択で社会に参画

「ライフイベントに係る手続の自動化・ワンストップ化」では、出生や就学、子育て、介護などの各ライフステージで必要となる手続きを、スマートフォンを使ってワンストップでできるようにし、手続きを忘れないよう通知を受けられるようにもしたい考えだという。

「データ資源を活用して、一人ひとりに合ったサービスを」では、「医療」などに関する改革を目指す。具体的には、検診情報やバイタル情報、薬歴などの連携・活用により、誰がどこの施設でも最適な医療サービスや福祉サービスなどを受けられるようにするという。

「いつでもどこでも自らの選択で社会に参画」は、テレワーク(在宅ワーク)の推進などを意識したビジョンだ。「子育てや介護に適した豊かな自然環境に恵まれた場所に暮らしながら、通勤することなくデジタル空間で仕事ができる」ことを目指すとしている。

デジタル化が進まない未来も想定しておく必要性

デジタル庁は、「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化を。」というキャッチコピーを掲げている。いまの日本に確実に必要とされているだけに期待感が高まるが、一方で懸念もある。発足したにもかかわらず、デジタル改革や推進が中途半端になってしまわないかだ。

例えば、2015年に発足したスポーツ庁は、コロナ禍における五輪開催問題においてもほとんど存在感を示しておらず、「名ばかり庁」と揶揄する声も聞こえてくる。デジタル庁も発足すれば同じ国の一組織だ。スポーツ庁と同じように揶揄される状況になる可能性は十分にあるだろう。

現時点でデジタル庁が目指している未来はまさに、国民に資するものだと言えるが、その未来が実現しなければ「机上の空論」であり「絵に描いた餅」だ。

現時点でデジタル庁に期待するかどうかは個人の自由だが、日本政府のこれまでの数々の失策や中途半端さなどを勘案すると、結局さほどデジタル化が進まない未来も残念ながら想定しておかなければならない。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)

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