家庭用食用油市場規模
(画像=家庭用食用油市場規模)

家庭用の食用油市場が好調で、2020年度は史上初の1,600億円規模に到達した。

前年度までは主に、オリーブ油をはじめ、アマニ油やえごま油といったオメガ3系の付加価値油の伸長が好調をけん引してきた。ところが2020年度は、コロナ禍を契機とした内食率の高まりで、それまで減少傾向にあった汎用油のキャノーラ油の価値が見直されはじめた。また、家族で外食に行けなくなる中、こってりした味を簡単に作れる「味変」需要もあって、ごま油の需要が急激に高まり、それまでも拡大はしていたが、使用量や購入世帯がより一層増加する結果となった。

一方、2020年秋頃からの大豆、菜種、パームなど原料コストの上昇は製油業界の大きな課題となっており、すでに3〜4月、6月の2回の価格改定が発表されている。とはいえ、シカゴ大豆相場は7月限り16に迫る勢いと、さらに高騰を続けており、3回目の値上げも必要な状況となっている。

〈その他の油種も台頭、ごま油は24.2%増、こめ油は初の100億円、MCTは倍増〉
日清オイリオグループ調べによる家庭用の食用油市場は、2020年度(2020年4〜2021年3月)の重量は前期比10.4%増、金額は8.0%増の1,667億8,500万円となり、史上最高規模を更新した。製油メーカーは「新型コロナの影響により、2020年3月頃から大幅に内食率が高まり、そのトレンドが継続する形で年間を通して2ケタ増が維持され市場が拡大した」としている。

油種別では、最大ボリュームだったオリーブ油が0.7%増の431億円となった。堅調ではあるが、前年度までの伸び率に比べるとやや鈍化している。重量は6.3%増となったが、「単価の下落で金額の伸びが鈍化しているのは課題」(製油メーカー)と指摘される。一方で、減少傾向にあったキャノーラ油は11.0%増の438億円と2ケタ伸長した。「すべての調理に使え、内食化のトレンドに応じて伸びが著しい」(製油メーカー)。2018年度に首位の座を明け渡すことになったが、2020年度はカテゴリーナンバーワンを奪還する結果となった。

内食化の流れで、その他の油種も台頭してきた。ごま油は24.2%増の368億円と大きく伸び、こめ油も33.9%増の103億円と大幅伸長し、初めて100億円の大台に乗った。ごま油は、新型コロナの影響による内食率が高まった中、2020年の4〜6月は38.8%増と急拡大した。

製油メーカーは「学校の休校などで昼食の内食率が高まり、簡単に作れる炒め物や中華系の炒め物の頻度が上がった。それに呼応する形で、ごま油の出現頻度が高まった。7月以降も20%前後で推移しており、ごま油の食卓の定着はかなり進んだ」と語る。こめ油は大容量品が伸びており、こめ油メーカーは「健康に気を遣う中で、普段使いの油を切り替える、沢山使うというのが拡大の背景にある」としている。

市場をけん引してきたサプリ的油は9.3%減の190億円と減少した。内訳をみると、アマニ油が6.7%減の102億円、しそ油・えごま油が25.4%減の55億円と落ち込みが目立った一方、MCT(中鎖脂肪酸)は115.3%増と倍増し、18億円と20億円近くまで拡大している。

家庭用が好調の反面、新型コロナの影響による外出自粛や時短要請、テレワークの浸透などに起因し、業務用は外食市場を中心に苦戦を強いられている。

とはいえ、各製油メーカーは、コロナ禍での外食店への提案を強化してきた。デリバリーやテイクアウトの需要が拡大する中、経時劣化に対応し、時間が経過しても味や風味を維持することができる商品やメニューの品質向上の提案、オペレーション改善につながる長持ち機能を有した油、炊飯油や麺油などの利用を進めてきた。また、食味を長持ちさせる、味を良くする、作業性を向上させることに加え、来店客を戻す、あるいは変わったメニューを出して目を引くため、風味油や調味油のニーズがあるいった声も聞かれる。

〈原料コストの上昇が課題で2回の値上げ、さらに高騰が続き3回目の必要性も〉
そのような中、表面化してきたのが、大豆、菜種、パームなどの原料価格の歴史的な一斉高騰、世界的な油脂需要の高まりなどを受けた原料コストの上昇だ。昭和産業は3月1日から、日清オイリオグループとJ-オイルミルズは4月1日から、家庭用、業務用、加工用で価格改定を発表し、中堅メーカーも続いた。

さらに6月1日からの2回目の値上げも発表されている。3〜4月からの価格改定について製油メーカーからは、「概ね了解をいただき、実際にその価格で動き出している。ここ数年なかったくらいの手応え」「環境を理解いただいている」「順調に進んでいる」としており、流通や外食企業からも、厳しいコスト環境については理解されているようだ。

現在は、6月1日からの改定についての商談が行われているが、シカゴ大豆相場は7月限りで16ドルに迫るなど、2度目の値上げ時点からさらに高騰を続けている。

現状の値上げ幅でも十分なコスト吸収とはならず、「6月からの値上げは7月以降のコストを見越したものではない。現在は2回目の値上げの商談の最中だが、7〜9月のコスト反映分の価格改定の案内はどこかで行わなければいけないと考えている」や、「原料相場が高止まりする状況が続けば、3回目の改定の可能性もある」と、さらなる価格改定の必要性も示唆されている。

〈大豆油糧日報2021年5月13日付〉