ニチレイ2021年3月期連結決算
(画像=ニチレイ2021年3月期連結決算)

ニチレイが5月11日に発表した2021年3月期連結決算は、売上高前年を下回ったものの、営業利益、経常利益、当期純利益とも過去最高を記録した。外食向けの販売減少などによって減収となったが、利益面では経費抑制や業務効率化のほか、低温物流事業の伸長が寄与した。次期は売上高6,000億円、営業利益は350億円など増収増益を見込む。

加工食品事業は売上高が2,254億5,000万円で前期比4.0%減、営業利益は171億6,700万円で2.6%増だった。家庭用のチキン加工品や米飯類など主力分野中心に販売が拡大したが、業務用の減少をカバーしきれなかった。

そのうち家庭用調理品の売上は703億1,800万円で前期比8.5%増と伸長、業務用調理品は868億2,100万円で12.8%減と落ち込んだ。

家庭用調理品は需要増に対し、生産能力の増強や積極的な販促活動によって、カテゴリーNo.1の「本格炒め炒飯」や「特から」を中心に販売数量を伸ばした。2020年春発売の「極上ヒレかつ」も増収に寄与した。当期設備投資として2020年6月に、米飯のニチレイフーズ船橋工場に生産設備を増設、生産能力を1万トン増強した。総投資額は約23億円となる。

業務用調理品はテークアウト・デリバリーに向けたきめ細やかな提案や、量販店惣菜向けの販売強化に努めたが、外食向けを中心に販売が減少した。また農産加工品は家庭内での調理機会の増加に伴い、ブロッコリーやナスなど「そのまま使える」シリーズの家庭用商品が好調に推移し、業務用の落ち込みをカバーした。

海外は米国子会社イノバジアン・クイジーン社が需要増加に対して家庭用主力商品の調達先を拡大したことなどにより取扱いが伸長。ただ、為替換算影響で売上高は前年並みとなった。

〈冷食は合計2,202億4,200万円〉
ニチレイグループ(ニチレイフーズとニチレイフレッシュ)の冷食売上高は合計で2,202億4,200万円、前期比4.1%減だった。内訳は業務用調理品が868億2,100万円で12.8%減、家庭用調理品が703億1,800万円で8.5%増、その他が631億300万円で3.2%減。

〈2021年度は加工食品2,400億円新機軸商品の生産設備を新設〉
ニチレイの2021年度業績予想は新型コロナウイルス感染が今後ワクチン投与の進展などにより収束・回復局面に向かうことを前提に、増収・増益を見込んだ。

加工食品事業の売上高は6.5%増の2,400億円、営業利益は6.0%増の182億円を見込む。そのうち家庭用調理品では7%増の750億円と引き続き伸長を、業務用調理品では9%増の950億円と前期からの大幅な回復を見込む。

国内では既存領域の拡大により85億円増加を、新たな事業機会の創出で20億円増加を、またコロナ収束による反動消費の取り込みで33億円増加を、それぞれ見込む。

具体的に既存領域としては、家庭用では戦略カテゴリー(チキン、米飯、食肉加工、春巻、冷凍野菜)の成長とスナック商品の拡充を、業務用では前期伸び悩んだ惣菜ルートとオフィス地域中心に苦戦が見られたCVS(コンビニエンスストア)ルートの拡大を、図る。

新事業機会の創出としては、家庭用・業務用ともにキット商品(野菜+肉・魚類+ソース等)のほか、簡便即食メニューの充実を図る方針だ。家庭用ではキット商品のほか、新領域となるトップシール商品を例示している。

なお設備投資として2021年度は加工食品に189億円を見込む。チキン加工品のライン増強のほか、詳細は控えたが、新機軸商品の生産設備を新設するとしている。

ECビジネスの拡大も図る。自社直販ECサイト(ニチレイフーズダイレクト)の商品開発を広げるほか、プラットフォーマーとの取り組みも検討する。

業務用では病院・福祉施設向けにニーズにこたえた商品開発を強化する。

〈冷食日報2021年5月13日付〉