輸入大豆使用商品のコスト環境悪化を懸念、国産シフトの可能性も「十分な量ではない」(画像はイメージ)
(画像=輸入大豆使用商品のコスト環境悪化を懸念、国産シフトの可能性も「十分な量ではない」(画像はイメージ))

大豆加工品をめぐるコスト環境は、輸入大豆、国産大豆ともに相場が上昇し、注視が必要な状況が続いている。埼玉糧穀の相原茂吉社長関東大豆卸商組合連合会会長、相原宏一朗常務に話を聞いた。

相原社長はまず、輸入大豆の動向に関して、シカゴ大豆相場の動向を睨み2021年産の契約を決めきれていない多くの製造事業者にとって、直近15ドル台の相場は大きな打撃であり、さらに金融市場が金余りの中、2021年産が豊作見通しにならない限り相場が下がる見込みはなく、厳しさが今後増す可能性もあると指摘する。

「シカゴ大豆相場は2008年に17ドルくらいまで高騰したが、その後のリーマンショックで急落した。2012年には北米地域の大規模干ばつにより18ドル台を記録している。2021年については、(米農務省の4月の需給報告によれば)期末在庫率が2.6%とひっ迫しており、仮に作付遅れや干ばつが発生すれば20ドルまでいくとの見解もある。為替も関係してくるが、豆腐・油揚げなど末端の製造事業者は大変な状況になるだろう」と懸念を示す。

また、「豆腐市場はプレイヤーが多く、小売側が値上げをしても棚に置きたいと思うような高品質な商品でない限り、価格の部分が大きい」とし、値上げ申請が難しい現状を指摘するが、それでも相場高が継続する場合には、大豆加工品の値上げが不可欠との考えを示す。

加えて、シカゴ相場の高騰により農家が遺伝子組換え作物でも十分採算がとれる環境にあり、2021年産は米国産、カナダ産ともにプレミアム作付奨励金が上昇傾向にあるといい、シカゴ相場、そしてプレミアムの上昇と、調達コストの二重苦になっていると話す。

さらに、播種前契約をしていない事業者は、欲しい品種を調達できないリスクも出てくるため、品種の切り替えなどで対応しなくてはならない可能性があると指摘する。

また、コンテナ不足による輸送遅れも依然続いていると指摘し、「この状況は秋口まで続くと見られている。2019年産はコロナ禍で需要が振るわず在庫が潤沢にあったため、どの事業者も2020年産のスタートを遅らせ、船積みが遅れていても何とかつなげることが出来た。もし2019年産が余っていなければ大変なことになっていたのではないか。また、事業者によってはコンテナ直送しているところもあるが、今後はそれが難しくなってしまうかもしれない」(相原常務)とする。

輸入大豆使用商品のコストアップを背景に、国産大豆へのシフトの可能性も指摘する。相原社長は、「輸入大豆使用商品のコストアップ分を末端価格に転嫁できなければ、(付加価値をつけられる)国産大豆に移行するのではないか。現に令和2年産国産大豆の相場は上がっており、その要因の一つだと考えられる」との見方を示す。

なお国産大豆は、3月末基準の令和3年産生産計画(JA全農分)は、作付予定面積は前年比4%増の11万9,737ヘクタール、集荷予定数量は17%増の18万7,000tとなっている。これに対しては、増加見込みは安心感には多少つながるものの、相原社長は「輸入大豆からのシフトがあることを踏まえると、決して十分な数量ではない」との見解を示す。

〈大豆油糧日報2021年5月10日付〉