J-オイルミルズ・善当専務
(画像=J-オイルミルズ・善当専務)

――前期(2020年度3月期)を振り返って

新型コロナウイルス感染拡大の環境下で、影響を受けた1年だった。家庭用は数量、金額とも前年を上回り着地する見込みだが、業務用は業種によって状況が異なるが前年を下回る見通しだ。ファストフード業態ではコロナ環境下も伸長している企業もあるが、ファミリーレストラン、居酒屋、ホテルなどはいまだに厳しい。加工用はほぼ前年並み。

――業務用における特徴的な取り組みについて

コロナ禍でデリバリーやテイクアウトの需要が拡大する中、経時劣化に対応し時間が経過しても味や風味を維持する事が出来る商品の提案や、メニューの品質向上、オペレーション改善につながる提案で、業務用のお客様の課題解決に貢献したいと考えている。

ごはん同士がくっつきにくく、釜離れしやすくなり歩留まり、作業効率が向上する「ごはんのための米油(炊飯用)」や、麺の食感を維持し、喫食時の麺のほぐれが良くなる「麺のための油」といった商品の提案を強化し、新規のお客様にも採用いただいている。

また、「J-OILPRO」を新たにお使い頂くケースも増えた。当初、加工食品メーカーやコンビニエンスストア向け弁当・総菜専業メーカーからスタートし品ぞろえを増やしてきた製品だが、コロナの影響で外食のユーザーも付加価値の高いメニューを販売して単価を上げていきたいというニーズをお持ちで、店内飲食やテイクアウトなど、さまざまな場面での使用が広がっている。これまであまり取り扱いがなかった販売店様からの引き合いも増えてきた。

「長調得徳」は、長持ち機能がオペレーション負荷の低減やコスト改善につながると評価頂いており、下期は前年を上回る見通しだ。当社はコロナ禍における外食マーケットの変化や、お客様が抱える新たな課題に対応するための商品をそろえており、2021年度も提案に拍車をかけていきたい。

――4月と6月の値上げの商談状況と見通しは

価格改定に関しては環境をご理解いただいている。当初はそれどころではないというご指摘も頂いたが、大豆やパームなど原料相場の暴騰はお客様も認識されている。また、販売店のオーナークラスの方は斗缶で7,000円近い時代の経験もおありで今回の価格改定が避けられないものと受け入れていただいている。

家庭用についてもご理解いただいているが、実際に店頭のチラシ売価やEDLP(エブリデイ・ロープライス)のディスカウント価格が上がるオペレーションには時間が必要となる。

原料コストの良化が見通せず、厳しい環境が継続する事となる。お願いしている6月の価格改定についても着実に実行していかないといけない状況であり、引き続き丁寧にご説明していきたい。

〈スターチの販売ノウハウを支社・支店に横展開〉
――好調なスターチの販売について

スターチの販売は、主に加工食品や中食のお客様に対するご提案という事でソリューション事業部を中心に取り組んできた。

母数はまだ小さいが、ここ数年大きな成長を見せている。ソリューション事業部で蓄積されたノウハウについて、支社・支店の油脂営業部門への展開がスタートしており、一層加速させるために組織も変更した。「ネオトラスト」を中心とした高付加価値のスターチ販売を拡大していきたい。

「ネオトラスト」の特長である食感改良や経時劣化の抑制という機能は、コロナ禍でさまざまな取り組みをされている外食ユーザーのニーズにも合致する。今年度はさらに拍車をかける。

大手外食のメニューにも採用されるなど、最近、プラントベースフードが注目されているが、まだベストではない状況だ。この領域でも当社のテクスチャーデザインなどの技術力を活用し、ユーザーのお手伝いをすることが可能であり、2021年度はこれらの取り組みにも注力していく。

――今期の重点戦略を

J-オイルミルズは長年、業務用に強い油脂メーカーとして支持を頂き、業界でのポジションを得ているが、家庭用油脂もマーケットが1,000億円未満から1,600億円規模に急拡大している中で、しっかりとポジションを得るため、オリーブ油を筆頭にプレミアム類の拡販に力を入れたい。

2017年に広域流通部を設立し、大手ナショナルチェーンへの営業活動を進めてきた。3年が経過し、手応えも得ており、味の素グループ各社からもサポートを受けながら連携を深め、拡売を図っていきたい。広域流通部と支社・支店との連携によるディストリビューションの拡大が家庭用の大きな目標となる。

業務用は、ソリューション営業部と支社・支店が連携を強め、人材の交流も深めつつ、ソリューション営業部が培ってきたノウハウを横展開しながら、絞り込んだユーザーに対し、油脂とともに、高付加価値のスターチ拡販も進めていく。

〈大豆油糧日報2021年4月26日付〉