「もしドラ」で一大ブーム ドラッカーに学ぶマネジメントのポイント5つ
(画像=BillionPhotos.com/stock.adobe.com)

「マネジメントの父」と呼ばれるドラッカーの名前を知らない経営者は少ない。しかし、ドラッカーの考え方を知らない人は、意外に多いのではないだろうか。この記事では、ドラッカーの著書「マネジメント」で語られるマネジメントのポイント5つと経営に活かせるドラッカーの名言を紹介する。

目次

  1. ドラッカーとは?
    1. 注目されたドラッカー
  2. ドラッカーによるマネジメントの定義とは?
    1. マネジメントの定義
  3. ドラッカーが考えるマネジメントの要素2つ
  4. ドラッカーに学ぶマネジメントのポイント5つ
    1. ポイント1.目標設定
    2. ポイント2.組織づくり
    3. ポイント3.コミュニケーション
    4. ポイント4.評価測定
    5. ポイント5.人材育成
  5. マネジメントに活かせるドラッカーの名言3選
    1. 名言1.「マネジメントは権力ではない、人を活かす責任だ」
    2. 名言2.「凡人が非凡な働きをできる組織が目指すべき組織である」
    3. 名言3.「聞け、話すな」
  6. ドラッカーのマネジメント理論を経営に活かす

ドラッカーとは?

ピーター・F・ドラッカーは、アメリカの経営学者・経営コンサルタントだ。「マネジメント」「イノベーションと起業家精神」「断絶の時代」など多数の著書を持ち、没後においても、世界中のビジネスパーソンに影響を与え続けている。

注目されたドラッカー

2009年には「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」という本が話題になり、ベストセラーになった。略して「もしドラ」と呼ばれる書籍は、年代を問わず多くの人が手に取ることになり、日本に一大ブームを巻き起こした。

現代では、ビジネスシーンでマネジメントという言葉は当たり前のように使われている。この言葉をビジネスシーンで最初に使ったのが、実はドラッカーなのだ。ドラッカーは著書「マネジメント」で経営におけるマネジメントの役割を考察した。このことから、ドラッカーは「マネジメントの父」と呼ばれている。

ドラッカーは、世界中のビジネスに大きな影響を与えた人物といえるだろう。

ドラッカーによるマネジメントの定義とは?

management(マネジメント)の意味は、経営・管理・経営力などだ。そのほか、統御・操縦といった意味もある。

マネジメントの定義

ドラッカーは、マネジメントを組織に成果をあげさせるための機能とし、マネージャーを組織の成果に責任を持つ者とした。

マネージャーは、単に指示をしたりチームをまとめたりするだけでなく、組織の成果に対して責任を持つ。

つまりマネジメントの目的は、組織を正しく機能させて成果をあげることだと言い換えられるだろう。

ドラッカーが考えるマネジメントの要素2つ

「企業の目的は顧客の創造である」というドラッカーの有名な言葉がある。ドラッカーは、企業が顧客を創造するには、マーケティングイノベーションが重要だと考えた。

マーケティングでは、顧客のニーズを探って満たさなければならない

本当に必要なものであれば、企業が顧客に商品・サービスを売り込まなくても、自然と販売サイクルが生まれる。販促活動を不要にすることが、マーケティングの最終到達点だ。

イノベーションは、今までとは違う新しい価値の提供によって顧客に満足感を与えることだ。技術の進歩によってイノベーションが起きることもあれば、同じ商品・サービスを別目的で利用することでイノベーションが起きることもある。

マーケティングとイノベーションは、どちらか一方だけで充分というわけではない。

ドラッカーに学ぶマネジメントのポイント5つ

ドラッカーは、マネージャーに共通する仕事を5つのポイントに分けて紹介している。それぞれのポイントを確認していこう。

ポイント1.目標設定

マネージャーには、目標を設定する能力が必要とされる。目標は、組織の向上を目指して設定しなければならない。

また、短期目標や長期目標、行動目標など、さまざまなレベルで設定する必要がある。

チームの目標はもちろん、チームメンバーの強みを踏まえて、各メンバーの目標を設定することも重要だ。目標があるとメンバーはモチベーションを維持しやすくなり、目標の達成に向けて努力できる。チームとしては、成果をあげやすい状況を作れるだろう。

マネージャーは目標の設定と同時に、メンバーに目標を共有し、落とし込まなければならない。目標の達成に必要なことを考え、メンバーを導いていくのがマネージャーの役割だ。

ポイント2.組織づくり

個人の能力には限界がある。企業が組織として成果をあげるには、マネージャーによる組織づくりが欠かせない。チームになれば、目指せる成果は大きくなる。

組織づくりでは、達成したい成果を踏まえて仕事の種類を分類し、適任となるメンバーを選ぶことが重要だ。

チームのメンバーを決めるときは、それぞれの強み・弱みを理解しておく。強みを最大限に活かし、弱みを最小限に抑えるのもマネージャーの務めだ。

ポイント3.コミュニケーション

マネージャーがチームのメンバーをマネジメントするときは、双方向のコミュニケーションが重要だ。

一方的にメンバーを叱ったり、指示したりすることは、コミュニケーションではない。コミュニケーションの前提は、相手に聴く姿勢があることだ。メンバーが聴く姿勢を持てるようにするのもマネージャーの役割だ。

言葉を伝えるだけでは不充分であり、メンバーが納得するまで向き合う必要がある。そのために、メンバーの考えを理解したうえでコミュニケーションをとらなければならない。

ポイント4.評価測定

チームのメンバーに仕事を割り振るだけがマネージャーの仕事ではない。仕事の状況や成果を評価することが大切だ。評価が適切でないと、メンバーのモチベーションが低下する。

マネージャーは、給与や昇進、インセンティブなどのさまざまな手法を駆使して、メンバーがモチベーションを維持し、成果をあげられるよう努めなければならない。

評価とフィードバックが適切であれば、メンバーは良好なパフォーマンスを発揮できるようになり、組織が成長していく。

ポイント5.人材育成

人を育てることもマネージャーの重要な役割だ。人材は、企業に不可欠な経営資源だ。マネージャーの力量次第で、チームのメンバーが生み出す成果は違ってくる。

正しいマネジメントで人材を育成し、成果を最大化しなければならない。

マネジメントに活かせるドラッカーの名言3選

マネジメントに活かせるドラッカーの名言を3つ紹介する。マネージャーの立場にあるなら、ドラッカーの言葉を胸に、自分のマネジメントを振り返ってみるとよいだろう。

名言1.「マネジメントは権力ではない、人を活かす責任だ」

マネージャーの立場になると、自分が偉くなったように錯覚し、部下に対して横柄になる人がいる。

また、自分を優位にするために、マネージャーの立場を利用する人もいる。マネジメントを権力と誤解した恥ずべき行為だ。

ドラッカーは、マネジメントは権力ではなく責任であると述べている。マネージャーに権力が与えられるのは、相応の責任を担うからだ。

マネージャーは責任をまっとうするために、必要な範囲で権力を行使しなければならない。私情をはさむのは言語道断である。

マネージャーであるならば、権力に溺れないよう、あらためて注意してほしい。

名言2.「凡人が非凡な働きをできる組織が目指すべき組織である」

組織を運営する立場にあるなら、優秀な人材を確保したいと思ってしまいがちだ。本当に大切なのは、優秀な人材に依存した経営から脱することだ。

ドラッカーは、凡人が非凡な働きをできる組織を目指すべきだと説いている。

凡人が、組織によって非凡な働きをできるとしたら、組織としても成果を増やせる。そのためには、組織体制を整えたうえで人材教育を行うことが重要だ。

凡人が成果を出せる環境にするためには、仕組みが欠かせない。理想的な仕組みの実現が、マネージャーの力量であり、役割ともいえるだろう。

名言3.「聞け、話すな」

ドラッカーは、マネジメントする立場にある者こそ、部下の話を聴くことが重要だと説いている。

実は、部下の話をじっくり聴くことのほうが、命令や指示をするより難しい。なぜなら、立場が上の人物であれば、部下は異論を唱えづらいからだ。

コミュニケーションによって、部下のモチベーションが上がる。部下の意見を吸い上げてこそ、現場と向き合うことができ、経営のかじ取りもうまくいく。

ドラッカーのマネジメント理論を経営に活かす

ドラッカーのマネジメントに関する考え方をいくつか紹介した。

企業が成長していくうえで欠かせない考えが述べられていた。現代にも通じる普遍性が、世界中でドラッカーの著書が愛され、ドラッカーがマネジメントの父と呼ばれるゆえんなのだろう。

経営の課題を解決するために、ドラッカーのマネジメント理論を活かしていきたい。

文・木崎涼(ファイナンシャルプランナー、M&Aシニアエキスパート)

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