日本企業のニューノーマル_7
(画像=THE OWNER編集部)

国連サミットで2030年までの新たな世界の目標であるSDGsが提唱されて久しい。日本でもようやくSDGsやサステナブルといった概念が浸透しつつある。その中でも食糧問題はSDGsでも2番目に取り上げられている「飢餓をゼロに」に直結する課題だ。

そんな中、食糧問題解決の手段として昆虫食が注目されている。あの株式会社良品計画も昆虫食での商品開発を手掛けているというから驚きだ。

良品計画は、徳島大学の基礎研究をベースとし、コオロギの食料としての可能性を切り開く事業を展開する株式会社グリラスと協業し『コオロギせんべい』の開発に取り組んでいる。なぜ『コオロギせんべい』を開発したのか、どのような視点でサステナブルな商品開発に取り組んだのか、今後の展望を伺った。

無印良品で話題の『コオロギせんべい』 良品計画が昆虫食を開発した裏側に迫る
(画像=無印良品で販売中のコオロギせんべい)

昆虫食に対する壁 コオロギせんべいの開発の苦労とは?

良品計画の食品部商品開発担当者が昆虫食に関心を持ったのは、無印良品の海外店舗スタッフからコオロギのお菓子をもらったことがきっかけだった。そこから今後の食糧確保と環境問題などの課題を知り、それらの課題を考えるきっかけになればという思いで『コオロギせんべい』の開発が始まった。良品計画はコオロギの研究・養殖を行っているグリラスと協業してコオロギを食材とするための取り組みを始めたが、そこには多くの苦労があった。

――『コオロギせんべい』を開発した経緯について教えてください。

良品計画 フィンランドのコオロギクッキーなどのお菓子をきっかけに昆虫食の存在を知りました。調べていく内に、将来人口増加による食糧難や環境問題などの社会課題を知りました。それらの課題を考えるきっかけになればという思いから、昆虫食先進国のフィンランドを訪問するなど情報収集を行い、その結果昆虫食研究の第一人者の徳島大学と協業し、コオロギを食材とするための取り組みを始めました。

無印良品で話題の『コオロギせんべい』 良品計画が昆虫食を開発した裏側に迫る
(画像=無印良品で販売中のコオロギせんべい)

――食糧難と環境問題について、具体的にどのような問題が発生するのでしょうか?

良品計画 世界の急激な人口増により、タンパク源である家畜(牛・豚・鶏など)の需要と供給のバランスがおそらく今後10年くらいで、逆転して足りなくなるのではないかと言われています。国連食糧農業機関 (FAO) も、栄養価が高く環境への負荷も少ないという理由で、家畜の代替として昆虫食を推奨しているという背景を知りました。

欧米と比べて日本では環境問題への関心がまだ低いと感じていますので、そこで我々も昆虫を使った商品を試しに作り日本のお客様に食べてもらい、今後地球で起こりうる社会課題について考えてもらうきっかけになればと思いました。

まずどの昆虫を使い商品化するか決めるところから始めたのですが、最初に昆虫食を知るきっかけになったコオロギから商品化することに決めました。

そこで長年コオロギの研究をしている徳島大学にアプローチをし、コオロギの食用化に関する研究について勉強させてほしいと徳島大学にお話ししたところ、徳島大学発のベンチャー企業の株式会社グリラスさんをご紹介頂きました。

――そのような経緯があったのですね。『コオロギせんべい』の開発には多くの苦労があったと思いますが、開発の過程でどんな苦労がありましたか?

グリラス コオロギをパウダー化する過程が本当に大変でした。

――なぜパウダーにする必要があるのでしょう?コオロギをパウダーにせず、お菓子としてそのまま加工する方法もありますよね?

グリラス 虫はもともと生産ラインで混入してはいけないものとされています。例えばコオロギの足のような形が残ってしまうと納品したときに、外から混入した不純物なのか、原材料のコオロギから出たものなのか判断できませんよね。微細なパウダーにすることでトレーサビリティーを確保したかったのです。

トレーサビリティーを確保し異物が入らないように加工プロセスを確立した上で、異物や害虫ではないことを示すために細かくしていきました。