自分とつながる。チームとつながる。
(画像=NDABCREATIVITY/stock.adobe.com)

(本記事は、中村 真広氏の著書『自分とつながる。チームとつながる。』=アキラ出版、2020年12月3日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

セルフサイクルとチームサイクルの相乗効果が起きる具体的なステップ

セルフサイクルを回してチームとのつながりを深めていく方法としては、以下のようなステップを提案したい。

《STEP1 仕事仲間と感情を共有することを習慣に》

まずはチームのメンバーそれぞれが自分の感情を自覚し、分かち合う習慣を持とう。ミーティングが始まる前の5分間に『emochan』(※1)のカードを使って話し合うとか、そんなライトなやり方から始めるといいだろう。このときのポイントは以下の二つだ。

emochan
※1『emochan』とは
8つの感情カードから今の自分の気持ちを選んで、仲間とシェアする「感情シェアリングカードゲーム」。 普段は言葉にしづらい気持ちも、カードを使うことで共有しやすくなります。 会議のアイスブレイク、社内研修やワークショップ、1on1などで気軽に活用できるツールです。

※画像をクリックするとemochanに飛びます

①どんなことでも素直に発言すること
②他の人の発言をジャッジメントせずに受け止めること

「今の僕はこんな気持ち。それは、こんな出来事があったから」という出来事と感情がセットになったエピソードの共有を積み重ねていくと、同じ出来事に出会っても人によって捉え方は様々であることに気づく。そして、「この人はこういうときに、こんな感情を持つんだな」ということが分かってきて、相互理解のきっかけになるはずだ。

自分とつながる。チームとつながる。
(画像=『自分とつながる。チームとつながる。』より)

《STEP2 仕事仲間の願いを「聴く」ことを習慣に》

チーム内で感情の共有が日常的に行われるようになったら、メンバーが語る感情の奥にはどんな思いがあるのかを考えながら聴いてみよう。それぞれの大切にしていることや願いを聴きあう習慣ができると、相互理解や信頼がさらに進み、心理的安全性が高まっていくだろう。

その際、自分の感情を自覚し、心の奥の願いに気づく力がついている人ほど、相手の願いもよく聴くことができる。逆に、チームサイクルを回す中で人の感情や願いを聴くうちに、自分自身を内省する力も高まる。

つまり、セルフサイクルとチームサイクルは片方を回すことで、もう片方も回り始める。自分とつながることとチームとつながることには相乗効果があるのだ。

自分とつながる。チームとつながる。
(画像=『自分とつながる。チームとつながる。』より)

内側の願いと仕事をつなげることで自身の熱量とチームの生産性が上がる

セルフサイクルを回すうちに、自分だけでなく他の人の感情の変化や、その奥に潜む願いにも気付けるようになってくるというのは、僕自身が実感していることだ。

例えば『emochan』の制作に携わったデザイナーは、『emochan』を作りながらこれまで説明したようなことを学び、徐々に共感力が上がっていることを実感したそうだ。友達と話していても、以前なら気づかなかった言葉の裏側にある願いに自然と気づくようになったという。「今の話を聞いていて、実はこういう願いがあるんじゃないかと感じたんだけど」と言ったら、相手が「分かってくれて嬉しい」と思わず泣き出したこともある、と話してくれた。

僕も、メンバーとの1on1の機会などに、以前よりも深く相手の話を「聴ける」ようになった。言葉の表層の意味だけにとらわれず、「どういう背景でそう思うのかな?」「内側にある願いって、こういうことじゃないかな?」ということをよく話すようになったのだ。

セルフサイクルは個人の感情リテラシーを上げるサイクルだけれど、必ずしも一人でやらなくてはいけないというものではない。まずチームの誰かが感情についてのリテラシーを高め、対話によって周りのメンバーのセルフサイクルを回す手伝いをするのもいいし、チームのみんなでインナーテクノロジーのワークショップに参加したりするのもいいだろう。

1章で、会社を「寺のような場所」にしたいと書いた。それは会社に集う人たちのそれぞれの人生を肯定的に受け入れ、それぞれの精神性が少しずつ高まっていく場だ。そのためには、セルフサイクルを回すスキルが身につき、自分とのつながりが深まっていくプロセスがとても大切だ。

自分とのつながりが深まると、内側に持つ本当の願いに正直に行動できるようになっていく。それによって、もしかするとチームを離れていくという決断をするメンバーも出てくる可能性もある。寂しいかもしれないが、その人の本当の願いを閉じ込めてチームにい続けるよりも幸せなことだと思う。

逆に、「どうしてこの仕事を選んだのか、分かっちゃいました!」とチームにいる意味を強く感じられるようになるメンバーも出てくるだろう。そういう人を増やすべく、リーダーは、組織の目指すこととそれぞれのメンバーの内側の願いとをどうやってつなげるか、ということに力を入れてみたらどうだろう。

内側の願いと仕事がつながると、個人の熱量が上がる。その上でチームサイクルを回して心理的安全性の高い状態、みんながチームとのつながりを感じられる状態に持っていければ、チームの生産性は大いに向上し、ビジネス上の成果も得られるはずだ。

自分とつながる。チームとつながる。
中村 真広
株式会社ツクルバ代表取締役ファウンダー/株式会社KOU代表取締役。1984年生まれ。東京工業大学大学院建築学専攻修了。不動産ディベロッパー、ミュージアムデザイン事務所、環境系NPOを経て、2011年8月に株式会社ツクルバを共同創業。2019年に東証マザーズに上場し、2020年8月より代表取締役ファウンダーに就任。また、株式会社KOUの創業に参画し、2019年からは同社代表取締役(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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『自分とつながる。チームとつながる。』シリーズ
  1. Googleから学ぶ最良のチームの作り方
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