自分とつながる。チームとつながる。
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(本記事は、中村 真広氏の著書『自分とつながる。チームとつながる。』=アキラ出版、2020年12月3日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

「なんでも言い合えるチーム」に必要な「心理的安全性」と、もう一つの大事なこと

ここ数年、「組織の生産性を上げるには心理的安全性が重要だ」ということが盛んに言われている。

きっかけは、グーグルが社内の何百ものチームを調査し、「いいチームをつくるのに最も重要なのは心理的安全性だ」という分析結果を導き出したことだろう。「プロジェクト・アリストテレス」と呼ばれるこの研究がニューヨークタイムズに取り上げられ、世間に広く知られるようになったのは2016年のことだ。

自分とつながる。チームとつながる。
(画像=『自分とつながる。チームとつながる。』より)

心理的安全性はハーバード・ビジネススクールのエイミー・エドモンドソン教授が1990年代後半から提唱している概念で、彼女の定義によれば「チームメンバーがお互いに『このチームでは対人リスクをとっても大丈夫だ』と信じている状態」を指す。

グーグルは、心理的安全性の高いチームのメンバーについて、「自分の過ちを認めたり、質問をしたり、新しいアイデアを披露したりしても、誰も自分を馬鹿にしたり罰したりしないと信じられる余地があります」と説明している。

僕の言葉で言い換えれば、メンバーがチームに対して、「このチームは自分を受け止めてくれる。自分とチームはつながっている」という安心感を持てている状態だ。

率直に意見を言い合えるチームは、そうでないチームよりも成果が上がる――これは、直感的にも「そうだろうな」とうなずく人が多いんじゃないだろうか。

でも、「自分の職場では、遠慮せずに何でも言い合える」と自信を持って言える人はどれほどいるだろう?

新商品のマーケティング施策について、みんなが「この案で行こう!」と言っているキャンペーンの内容に、あなたはなんとなく違和感を感じている。本当にこれで売れるんだろうか? ちょっと違うんじゃないか? そう思ったときに、自分の意見を言えるだろうか。

あるいは、リーダーとして目の前にある課題に対して明確な打ち手が見つからず、そのことをメンバーに伝えて一緒に考えてもらいたいと思うけれど、弱いリーダーだと思われるのが怖くて言い出せない。どうしても、完璧なリーダーを演じようとしてしまって辛くなっている、という人もいるんじゃないだろうか。

チームの他のメンバーに対して思っていることを率直に言えないとき、その原因はチームとのつながっている感覚が持てていないことにある。そして、その奥にはあなたが自分自身とつながっていないというさらなる原因があることが多い。

みんなが合意しているように見える案について誰かが異議を唱えたとき、「余計なことを言うな」ととがめられたり「この案でイケるって、なんで分からないんだ?」とバカにされたりするのなら、そのチームの心理的安全性は低くなってしまう。そんな場では、誰だって率直な意見が言いづらいだろう。

一方、チームの心理的安全性は高いのに、その中の個人が過度に萎縮してしまっているという可能性もある。実際に意見を言えば「なるほど、一理あるね」とか「何を懸念しているのかもう少し教えてくれる?」などと受け止めてもらえるチームなのに、「こんなこと言ったら疎まれるかも」とか「どうせ理解してもらえないだろう」と思い込んで言えない。そのような場合は、その人の考え方があるパターンにはまってしまっている可能性が高い。

ここで、「自分の意見なんて意味がない」と決めつけて発言できなくなってしまっているのはどうしてなのか考えてみると、「否定されるのが怖い」という怖れの感情に、さらにはその奥にある「本当は誰もが自由に意見を交わし合える安心を大切にしたい」という本心に気づくかもしれない。気づいた上で、「自分の本心に従って行動するなら、どういう行動をしたいのだろう」と考えてみると、内発的動機に基づいた「ありのままの自分」としての行動に出やすくなるはずだ。例えば、相手が上司であれ誰であれ、「まずは相手の意見を受け止めよう」と心がけるようになるかもしれない。言いたいことを我慢するということではなく、自分が願う安心な場をつくるために。

つまり、いいチームになるためには、率直に何でも言い合える心理的安全性も大事だけれど、それぞれが自分の内側と向き合ってみることも、同じくらい大事だ。

自分とつながる。チームとつながる。
中村 真広
株式会社ツクルバ代表取締役ファウンダー/株式会社KOU代表取締役。1984年生まれ。東京工業大学大学院建築学専攻修了。不動産ディベロッパー、ミュージアムデザイン事務所、環境系NPOを経て、2011年8月に株式会社ツクルバを共同創業。2019年に東証マザーズに上場し、2020年8月より代表取締役ファウンダーに就任。また、株式会社KOUの創業に参画し、2019年からは同社代表取締役(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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