自分とつながる。チームとつながる。
(画像=Sushiman/stock.adobe.com)

(本記事は、中村 真広氏の著書『自分とつながる。チームとつながる。』=アキラ出版、2020年12月3日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

チームとつながるには、まず自分とつながることからはじめよう

心理的安全性のある職場では、みんなと違う意見を言ったり、自分の弱みをさらけ出したりしても大丈夫だという安心感がある。それは、お互いに他のメンバーの声や気持ちに耳を傾け、真摯に受け止めようという姿勢があるということだ。

その状態に至るには、自分の感情と上手く付き合える必要がある。チームとつながるには、まず自分とつながる必要があるのだ。

自分とつながる。チームとつながる。
チームサイクルとセルフサイクル(画像=『自分とつながる。チームとつながる。』より)

僕は、チームとのつながりを深めていく取り組みを「チームサイクル」、自分とのつながりを深めていく取り組みを「セルフサイクル」と呼んでいる。

どちらのつながりも一朝一夕に得られるものではない。2つのサイクルを回し続けていくことで、互いに相乗効果を生みながら深まっていく。徐々に自分の感情のクセを理解し、その感情を引き起こす認知のフィルターに気づき、自分のありたい姿も見えてくるようになる。そして、チームのメンバーと向き合っていても、その人の振る舞いや感情を受け止める余白が生まれ、遠慮せずに率直にコミュニケーションができる状況ができ、ビジネス的にも成果が出るようなチームになる。

まずはセルフサイクルで、自分が今どんな感情を持っているのかを自覚し、自分自身の声を聞く。それができるようになると、自分の感情を相手に伝えたり、相手の声や気持ちに耳を傾けて、感情を共有できるようになる。それを繰り返して相互理解が進み、共感ができるようになったときに、チームの心理的安全性が確保できるようになるはずだ。

チームのメンバーそれぞれが自分とのつながりを深めた上で、チームの心理的安全性が醸成されると、チーム内の「関係の質」が良くなり、チームとのつながりが深まる。その結果、「行動の質」や「結果の質」が上がり、チームの生産性が向上するとともに、メンバーは幸福や人生の充実を実感できるようになることが期待できる。

自分とつながる。チームとつながる。
感情を自覚し、自身の声を聞くことで、他人の声を聞く力を磨くことができる。感情を共有することで、相互理解・共感の土壌をチームにつくる。そのことで、心理的安全性を確保し、関係の質が向上する。それゆえに、働きがい・幸福度がUPし、結果の質も向上する。 つまり、個人も、チームも、会社も嬉しい。(画像=『自分とつながる。チームとつながる。』より)

自分の感情を把握し、その意味を知る

『emochan』(※1)は、チームで感情をシェアするということの他に、その時々の自分の感情を把握し、その意味を知るということにも役立ててほしいと考えて作った。

emochan
※1『emochan』とは
8つの感情カードから今の自分の気持ちを選んで、仲間とシェアする「感情シェアリングカードゲーム」。 普段は言葉にしづらい気持ちも、カードを使うことで共有しやすくなります。 会議のアイスブレイク、社内研修やワークショップ、1on1などで気軽に活用できるツールです。

※画像をクリックするとemochanに飛びます

『emochan』は、次の8種類の感情を表すカードで構成されている。

1.喜び
2.安心
3.恐れ
4.動揺
5.悲しみ
6.不快
7.怒り
8.期待

「今はどんな気持ち?」と突然聞かれても、上手く感情を言葉で言い表せなくて「え?普通です……」と答えてしまうような人も、「この中から選んでください」と言われれば、「あえて言うと、これかな」という感じで選ぶことで、自分の感情について自覚しやすくなるだろう。

この8つの感情は、心理学者のロバート・プルチックが考案した「感情の輪」と呼ばれるモデルから、基本感情とされているものを抽出したものだ。自分の状態に近いカードを選びながら、その感情を引き起こした出来事や意味を考えてみる。それを繰り返すうちに、自分がいつも大切に思っていることや、心から願っていることが少しずつ浮かび上がってくるはずだ。

自分とつながる。チームとつながる。
(画像=『自分とつながる。チームとつながる。』より)

僕らはどうしても、ネガティブな感情を持つことを避けようとする。だから、怒りがわいたり、不快な気持ちになったとき、その感情を見て見ぬ振りをしたり、「大したことない」と流してしまうことが多い。でも本当は、きちんと向き合うことで重要なことが見えてくるのだ。ネガティブな感情にも大切な意味がある。

例えばスポーツが好きな人は、スポーツを楽しんでいるときに喜びの感情に満たされるだろう。一方で、怪我をしてしまったり時間がなかったりしてスポーツができないときは、悲しみを感じるんじゃないだろうか。

実は「喜び」と「悲しみ」は、どちらも自分が大切にしていることとの関係から生まれてくる感情だ。好きなものがそこにあるときには、喜びを通して「やっぱり僕は、これが好きなんだな」と確認できる。好きなものを失ってしまったときは悲しみが大きければ大きいほど、自分にとってどんなに大切なものかが分かる、というわけだ。

自分とつながる。チームとつながる。
(画像=『自分とつながる。チームとつながる。』より)

プルチックの「感情の輪」を見ると、「喜び」と「悲しみ」がちょうど対角線上に配置され、この2つが裏と表の関係にあることが表現されている。他の感情についてもペアの関係があり、「安心」と「不快」は人や環境などとのつながりに対して、「恐怖」と「怒り」は自分を脅かす存在に対して、「動揺」と「期待」は新しい状況に対しての、異なる反応であることが分かる。

例えば、今日から新しいプロジェクトが始まるというとき、期待にワクワクするときもあれば、「上手くやっていけるかな……」と動揺して落ち着かないときもあるだろう。期待の感情があるときは「これから何ができるだろう」と今より未来に視線を向けていて、動揺の感情があるときは「今起きていることに集中して対処していこう」というモードにあると言える。今の自分の感情に注目する習慣がついてくると、自分の気持ちがどこに向かっているかが分かるし、他のメンバーはどうかな? と気にかけることもできるようになるはずだ。

自分とつながる。チームとつながる。
中村 真広
株式会社ツクルバ代表取締役ファウンダー/株式会社KOU代表取締役。1984年生まれ。東京工業大学大学院建築学専攻修了。不動産ディベロッパー、ミュージアムデザイン事務所、環境系NPOを経て、2011年8月に株式会社ツクルバを共同創業。2019年に東証マザーズに上場し、2020年8月より代表取締役ファウンダーに就任。また、株式会社KOUの創業に参画し、2019年からは同社代表取締役(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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『自分とつながる。チームとつながる。』シリーズ
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