マネジメント
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変化の激しい昨今において、企業も時代の流れにうまく対応していかなければ、簡単に後れを取ってしまうだろう。人材育成や業務の効率化、生産性の向上など、日々アップデートしながら経営を進めていく必要がある。

組織として成果を上げ続けられるための要素として、ビジネスにおけるマネジメントの重要性が高まっている。企業のパフォーマンスを大きく変えられる可能性を秘めたマネジメントについて、意味や目的、求められるスキルなどを解説する。

目次

  1. マネジメントとは
  2. マネジメントの目的
    1. マネジメントの役割
  3. マネジメントの種類3つ
    1. トップマネジメント(最高経営者層)
    2. ミドルマネジメント(中間管理者層)
    3. ローアーマネジメント(監督者層)
  4. マネジメントに必要な能力3つ
    1. 分析力・判断力
    2. コーチング能力
    3. 各分野の専門能力
  5. 代表的なマネジメント例3つ
    1. 目標管理
    2. チーム管理
    3. 部下の管理
  6. マネジメントに求められるスキル3つ
    1. 人材の育成・評価スキル
    2. 新しいしくみや事業を企画立案するスキル
    3. さまざまな働き方に対応するスキル
  7. トップマネジメントを成功させるポイント4つ
    1. 戦略の検討や規範・ルールの設定
    2. 将来の経営を任せられる人材の育成
    3. トラブル対応
    4. 外部との交渉
  8. 会社をより良い方向へ導こう

マネジメントとは

「マネジメント(management)」という言葉は、英語を直訳すると「経営・管理」という意味である。ビジネスにおいては、アメリカの経営学者ピーター・ファーディナンド・ドラッカーが、自身の著書内で以下のように提唱したものを、マネジメントの定義としている。

マネジメント:「組織や組織で働く人に成果を上げさせるための道具・機能・機関」

また、しくみやツールを使って組織を健全にマネジメントするためには、組織が掲げた目標達成の実現に対し責任を負う「マネージャー」の存在が不可欠である。マネージャーには、組織の成果に対して責任を負ってもらうだけでなく、目標達成のための正確なマネジメント力が求められる。

マネジメントの目的

組織が掲げる目標達成の実現を目指し、組織を正しい方向に運営することが、マネジメントの目的である。目標の設定から、成果の評価とフィードバックまでが、マネジメントの役割とされている。

マネジメントの役割

一方、組織の方向性を示すのは、「リーダー」の役割である。リーダーが組織の方向性を示し、その方向性に沿って、マネージャーが目標を設定することになる。たとえば、会社で「どのような商品を開発したいか」を示すのがリーダーであり、「商品の具体的な内容や開発・販売に向けた運営」を考え実行するのがマネージャーである。

また、ドラッカーは自身の著書内で、マネジメントの役割を以下のようにも示している。

1.組織が独自に掲げている特有の目的を果たす
2.組織で働く人の自己成長を促す
3.組織として社会に貢献する

成果に直結する1だけでなく、2や3のような大局的な視点に立った役割を持っていることも、マネジメントの特徴といえるだろう。

マネジメントの種類3つ

マネジメントは、役割により「トップマネジメント」「ミドルマネジメント」「ローアーマネジメント」の3つに分けられる。

トップマネジメント(最高経営者層)

組織の経営者層により行われるマネジメントがトップマネジメントである。経営者層には、会長・社長・常務・専務など企業の取締役や、部門ごとの執行役員などが該当する。自社の経営方針や各部門の運営方針を定めるなど、経営に関する総合的な方向性を決定すると共に、成果に対する最終的な責任を負う役割も持つ。

ミドルマネジメント(中間管理者層)

トップマネジメントとローアーマネジメントの中間に位置する存在がミドルマネジメントである。ミドルマネジメントを行う中間管理者層には、部長・課長・係長・工場長・支店長などの管理職が該当する。

組織や部門の方向性を定めるトップマネジメントをサポートしつつ、下層部へ組織の運営方針や指示・命令を正確に示すことが求められる。ローアーマネジメント層を直接指揮するのも、原則としてミドルマネジメントの役割である。

組織が大きくなると、ミドルマネジメントの重要性も高まる。経営者層が確固たる理念や経営方針を掲げていても、中間管理者層が自身の役割をきちんと理解していなければ、下層部の貢献度が低下し組織が弱体化する恐れもあるだろう。

ローアーマネジメント(監督者層)

マネジメントの種類でも最下層に位置付けられる存在がローアーマネジメントである。役割を担う監督者層には、係長・主任・現場監督・チーフ・プロジェクトリーダーなどが該当する。実際に現場で業務に携わる従業員を指揮・統制する役割を持つ。従業員から意見を収集し、ミドルやトップ層に伝達することも、ローアーマネジメントの大きな役割だ。

マネジメントに必要な能力3つ

マネジメントを行うにあたり、備わっているとより効果を発揮しやすくなる能力を紹介しよう。

分析力・判断力

組織をコントロールするマネジメントに何よりも必要なのは、物事を正しく判断・分析できる能力である。組織全体をさまざまな角度から客観的に考えることが重要であるため、1つのことにとらわれすぎず大局的な分析ができる能力と、それを用いた正確な判断力が求められるだろう。

コーチング能力

ビジネスにおけるコーチングとは、組織運営や社員教育を円滑にし、コミュニケーションの改善も図れる、人材のマネジメント手法である。組織内で部下を効果的に管理できる方法として知られ、自発的行動を促進することが最大の特徴だ。コーチングは書籍やセミナーなどで学べるため、マネジメントに携わるなら勉強しておくとよいだろう。

各分野の専門能力

中間管理者層や監督者層など、より現場に近い立場でマネジメントを行う場合は、マネージャー自身が部下にお手本を示せるとよいケースもあるだろう。他部署からの異動でマネジメントを任された場合でも、できるだけ専門能力の向上に努めることが必要である。また、そのような姿勢を部下に見せるだけでも、チームに好影響を与えることが多い。

代表的なマネジメント例3つ

マネジメントでは、具体的にどのようなことを行えばよいのだろうか。代表的なマネジメント例を紹介する。

目標管理

自分が担当する部署の目標を設定することは、マネジメントにおいて初期に必ず行っておきたいことだといえる。チームで目標を共有し、個人別にも細かくゴールを設定しておかなければ、適切な評価もできないだろう。目標を設定したら、評価基準も同時に設定し、部下と面談を行っておくことも重要である。

チーム管理

組織である以上は、チームとして最大限の力を発揮できるように全体を管理することが、マネジメント層に求められていることである。メンバーごとの能力や性格を考慮した役割分担を割り振り、グループの担当者を決め、全員が協力して目標達成のために働く雰囲気をつくらなければならない。

業務の進捗状況を管理することも、マネジメントで行うべき作業だ。管理体制を整え、進度管理を行いながら、予定通りに進んでいる場合はさらに上を目指すよう指導・激励する必要がある。進捗が思わしくない場合は、担当者と一緒に原因を突き詰め、必要に応じて現場サポートも行う。成功・失敗それぞれの事例はデータ化しておくことも重要である。

部下の管理

末端で働いてもらう部下の管理では、メンタルケアを最重要視する必要があるだろう。どんなに能力のある人材でも、不安・悩み・ストレスを抱えている状態では、本来の力を十分に発揮できないからだ。相談されやすい雰囲気づくりを進めつつ、部下をよく観察し、気になった部下がいれば積極的に話しかけることが大切である。

モチベーションを向上させるためのマネジメントも重要である。密にコミュニケーションを図りながら、やる気の向上につながる原動力を見つけ、意欲を引き出せるような環境づくりと動機付けを行わなければならない。

マネジメントに求められるスキル3つ

目まぐるしく変化する時代へ対応するために、どのようなスキルがマネジメントに求められるのか、以下に挙げる3つのポイントを押さえておこう。

人材の育成・評価スキル

マネジメントにおいては、従来のようなトップダウン指導による人材育成は推奨されていない。適切な育成・評価システムを構築し、部下が自主性やモチベーションを保ちながら成長できる環境づくりが求められている。育成においては、部下自身が望むキャリアや将来像を尊重することも重要だ。

新しいしくみや事業を企画立案するスキル

今後、時代の変化に合わせて、経営環境も目まぐるしく変化していくことが予想される。組織として掲げる目標も、変化に合わせてアップデートしていかなければ、経営が行き詰まってしまうだろう。新しい情報を素早くキャッチし、それらを踏まえた新しいしくみや事業を、企業の中で自ら企画立案するスキルが求められる。

さまざまな働き方に対応するスキル

働き方改革の推進により、リモートワークを導入する企業は今後ますます増えていくだろう。また、少子高齢化の影響で労働人口が減り続ければ、これまで一定の年齢に達すると引退していた高齢者にも、引き続き働いてもらえるような環境を整えておく必要がある。マネジメントにおいても、さまざまな働き方を想定し、対応できるスキルが求められる。

トップマネジメントを成功させるポイント4つ

トップマネジメントでは、経営に関する総合的な判断を下した上で、最終的な責任も負わなければならない。企業が長期的成功を収め続けるためには、経営者層に多様な能力と資質が要求される。以下に挙げるトップマネジメント特有の役割を押さえておこう。

戦略の検討や規範・ルールの設定

企業理念や事業目的を決めておけば、従業員の愛着心が強まり、モチベーションも高まるだろう。また、規範やルールを設定し、価値観やその方向性を示すことで、従業員が業務の優先順位を決めやすくなり、職務に集中しやすくなる。

将来の経営を任せられる人材の育成

トップマネジメントでは、次世代を任せられる人材の発掘・育成も大きなテーマである。育成においては、マネジメントに必要なスキルを身に付けられる教育が必須となるだろう。

トラブル対応

組織が重大なダメージを負うようなトラブルが発生した際には、経営層が先頭に立って対応しなければならない。被害を最小限に抑えながら問題を早期に解決し、原因の究明と再発防止策を練ることも必要である。

外部との交渉

外部関係者との交渉を経営者層が行うことで、より具体的な話し合いができる上、組織の信頼もアップさせられる。顧客や取引先と友好な関係を維持するために、各種行事や食事会などにも、組織の顔として参加することが求められる。

会社をより良い方向へ導こう

組織のパフォーマンスを向上させるマネジメントは、経営をうまく進めていく上で欠かせないものである。相応のスキルを備えた人材を育成しながら、マネジメントを正しく機能させ、会社をより良い方向へ成長させよう。

文・八木真琴(ダリコーポレーション ライター)

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