変化の激しい昨今において、企業も時代の流れにうまく対応していかなければ、簡単に後れを取ってしまうだろう。人材育成や業務の効率化、生産性の向上など、日々アップデートしながら経営を進めていく必要がある。

組織として成果を上げ続けられるための要素として、ビジネスにおけるマネジメントの重要性が高まっている。企業のパフォーマンスを大きく変えられる可能性を秘めたマネジメントについて、意味や目的、求められるスキルなどを解説する。

目次

  1. マネジメントとは
    1. マネジメントの定義と歴史
    2. マネジメントの重要性
  2. マネジメントの目的と役割
    1. マネジメントの役割
    2. リーダーシップとマネジメントの違い
  3. マネジメントの種類(組織の階層別・業務領域別)
    1. 組織の階層別の種類
    2. 業務領域別の種類
  4. マネジメントの成功例と失敗例から学ぶ「必要な能力」
    1. 失敗例1:目的・目標があいまい(各分野の専門能力の不足)
    2. 失敗例2:進捗管理が甘い(分析力・判断力の不足)
    3. 成功例1:部下のモチベーションを引き出す(コーチング能力)
    4. 成功例2:過去の失敗を活かしてプロジェクト成功(分析力・判断力)
  5. マネジメントに求められるスキル3つ
    1. 人材の育成・評価スキル
    2. 新しいしくみや事業を企画立案するスキル
    3. さまざまな働き方に対応するスキル
  6. トップマネジメントを成功させるポイント4つ
    1. 戦略の検討や規範・ルールの設定
    2. 将来の経営を任せられる人材の育成
    3. トラブル対応
    4. 外部との交渉
  7. 会社をより良い方向へ導こう
  8. マネジメントでよくある質問
    1. Q.マネジメントとはどういう意味?
    2. Q.マネジメントとは具体的に何をすること?
    3. Q.マネジメント層とはどういう意味?
    4. Q.マネジメントの仕事の具体例は?
マネジメント
(画像=fotogestoeber/stock.adobe.com)

マネジメントとは

「マネジメント(management)」という言葉は、英語を直訳すると「経営・管理」という意味である。ビジネスにおいては、アメリカの経営学者ピーター・ファーディナンド・ドラッカーが、自身の著書内で以下のように提唱したものを、マネジメントの定義としている。

マネジメント:「組織や組織で働く人に成果を上げさせるための道具・機能・機関」

また、しくみやツールを使って組織を健全にマネジメントするためには、組織が掲げた目標達成の実現に対し責任を負う「マネージャー」の存在が不可欠である。マネージャーには、組織の成果に対して責任を負ってもらうだけでなく、目標達成のための正確なマネジメント力が求められる。

マネジメントの定義と歴史

歴史的には、産業革命後の18世紀にマネジメントの原型が現れたといわれている。その後、20世紀初頭にフレデリック・ウィンスロー・テイラーによって科学的管理法が提唱され、現代的なマネジメントの礎が築かれた。さらに20世紀半ばには、ドラッカーが登場し、現代マネジメントの概念が確立された。現代において一般的に「マネジメント」といえばドラッカーの定義を指す。

マネジメントの重要性

マネジメントは、組織の成功において重要な役割を果たす。まず組織の目標設定や戦略立案を行い、組織が望む方向へ進むためのプロセスを整備する。またマネジメントには、資源の効果的な配分や業務プロセスの最適化が含まれる。これにより組織の効率性や生産性が向上し、競争力が強化されるのだ。

さらにマネジメントは、組織内の人々をリーダーシップやコミュニケーションによって適切に指導し、チームワークやモチベーションを向上させる役割も担う。これらの要素が統合され、マネジメントは組織の目標達成や持続的な成長を実現する上で、欠かすことができない要素となる。

マネジメントの目的と役割

組織が掲げる目標達成の実現を目指し、組織を正しい方向に運営することが、マネジメントの目的である。目標の設定から、成果の評価とフィードバックまでが、マネジメントの役割とされている。

マネジメントの役割

ドラッカーは自身の著書内で、マネジメントの役割を以下のようにも示している。

1.組織が独自に掲げている特有の目的を果たす
2.組織で働く人の自己成長を促す
3.組織として社会に貢献する

成果に直結する1だけでなく、2や3のような大局的な視点に立った役割を持っていることも、マネジメントの特徴といえるだろう。

リーダーシップとマネジメントの違い

リーダーシップとマネジメントは、組織運営において重要な役割を果たす。リーダーは組織の方向性を示すことが求められ、マネージャーはリーダーが示した方向性に従って組織の目標を設定し目標達成に向けて組織を運営する。両者は異なる役割を担い、それぞれの能力が組織の成功に大きく貢献する。

リーダーシップには、組織の方向性を決定する能力が必要だ。組織の方向性を示すことで、メンバーに目標を明確に伝え、チームの共通の目標を定めることができる。またリーダーは、メンバーを鼓舞し、モチベーションを高めることが求められる。

一方、マネジメントは、リーダーの示す方向性に基づいて組織目標を設定し、組織を運営する能力である。具体的には、目標達成のために必要な計画を立て予算を編成し、メンバーの役割分担を考えなくてはならない。マネージャーはリーダーが示した方向性に基づき、組織を適切に運営することでチームの目標達成に貢献する。

組織運営において、リーダーシップとマネジメントは不可欠な要素だ。リーダーが組織の方向性を示し、マネージャーが目標達成のための計画を立て、組織を適切に運営することで、チームの成功につながる。

マネジメントの種類(組織の階層別・業務領域別)

マネジメントの種類は、組織の階層別と業務領域別で分類できる。組織の階層別では役割により、以下の3つに分類可能だ。

・トップマネジメント
・ミドルマネジメント
・ローアーマネジメント

また業務領域別の種類では、以下の3つに分類できる。

・組織運営
・人材管理
・メンタルヘルス

それぞれのケースにおけるマネジメントの種類について、順番に見ていこう。

組織の階層別の種類

・トップマネジメント(最高経営者層)
組織の経営者層により行われるマネジメントがトップマネジメントである。経営者層には、会長・社長・常務・専務など企業の取締役や、部門ごとの執行役員などが該当する。自社の経営方針や各部門の運営方針を定めるなど、経営に関する総合的な方向性を決定すると共に、成果に対する最終的な責任を負う役割も持つ。

・ミドルマネジメント(中間管理者層)
トップマネジメントとローアーマネジメントの中間に位置する存在がミドルマネジメントである。ミドルマネジメントを行う中間管理者層には、部長・課長・係長・工場長・支店長などの管理職が該当する。

組織や部門の方向性を定めるトップマネジメントをサポートしつつ、下層部へ組織の運営方針や指示・命令を正確に示すことが求められる。ローアーマネジメント層を直接指揮するのも、原則としてミドルマネジメントの役割である。

組織が大きくなると、ミドルマネジメントの重要性も高まる。経営者層が確固たる理念や経営方針を掲げていても、中間管理者層が自身の役割をきちんと理解していなければ、下層部の貢献度が低下し組織が弱体化する恐れもあるだろう。

・ローアーマネジメント(監督者層)
マネジメントの種類でも最下層に位置付けられる存在がローアーマネジメントである。役割を担う監督者層には、係長・主任・現場監督・チーフ・プロジェクトリーダーなどが該当する。実際に現場で業務に携わる従業員を指揮・統制する役割を持つ。従業員から意見を収集し、ミドルやトップ層に伝達することも、ローアーマネジメントの大きな役割だ。

業務領域別の種類

業務領域別の種類には、組織運営や人材管理、メンタルヘルスなどがある。

・組織運営
組織運営においては、マネージャーが組織の目標や戦略を設定し、それを実現するために部署ごとの役割や職務を割り振る。また決算報告や財務管理、顧客対応などの業務も含まれる。

・人材管理
人材管理においては、採用、教育研修、評価、昇進、人事異動などの人材戦略を立案し、社員の能力向上やモチベーションアップを図る役割を担う。近年は、多様な働き方やライフスタイルに合わせた働き方改革も必要とされている。

・メンタルヘルス
メンタルヘルスにおいては、ストレスやうつ病、パワーハラスメントなどの問題に対して、労働環境の改善やメンタルヘルス教育、カウンセリングなどの対策を実施することが求められる。それぞれの領域でマネージャーが主体的に取り組み、組織全体が良い成果を上げることができるように、努めることが必要だ。

マネジメントの成功例と失敗例から学ぶ「必要な能力」

マネジメントを成功するには、どのような能力が必要だろうか。ここでは、マネジメントに重要な能力を成功例と失敗例を交えて紹介する。

失敗例1:目的・目標があいまい(各分野の専門能力の不足)

マネジメントは目的・目標があいまいな状態ではうまくいかない。あいまいな目的・目標の場合、メンバーのモチベーション低下や成果物の品質低下が起こる。これは、マネージャーの分析力が不足していることが原因の一つだ。

解決策としては、明確な目的・目標を設定し、その達成方法を考えることが必要である。目標を達成するために必要なスキルや知識、ツールを調べ、必要な準備を行うことが大切だ。

失敗例2:進捗管理が甘い(分析力・判断力の不足)

進捗管理が甘い状態では、プロジェクトの目標達成ができなくなる。進捗管理には、細かなスケジュール管理や問題の早期発見・解決能力が必要だ。しかし分析力や判断力が不足していると問題の本質を見抜くことができず、進捗管理が困難になる。

例えば、適切な進捗管理ツールの活用や報告書の作成・共有を徹底することが解決策の一つだ。また各分野の専門家と協力して進捗管理を行うことが重要である。

成功例1:部下のモチベーションを引き出す(コーチング能力)

マネジメントにおいて、部下のモチベーションを高めることは非常に重要だ。仕事にやりがいを感じていなかったり、モチベーションが下がっていたりする場合には、仕事に対する取り組みが消極的になり、業績に悪影響を与えかねない。

そのためマネージャーには、部下のモチベーションを高めるための「コーチング能力」が求められる。コーチングとは、部下の目標設定や自己成長に向けて、自分自身で考え、行動する力を引き出す能力だ。

例えば、部下に対して「何がやりたいか」とヒアリングして答えを引き出し、具体的な目標設定を行うことでモチベーションを高めることが期待できる。また部下の強みを見つけ出し、それを活かせるような業務やプロジェクトを担当させることも有効だ。

ただしコーチングには、練習や経験が必要であり、うまくいかないこともあるかもしれない。その場合は、部下とのコミュニケーションを密にし、フィードバックをもとに改善していくことが大切だ。

成功例2:過去の失敗を活かしてプロジェクト成功(分析力・判断力)

過去に失敗したことがある経験豊富なマネージャーは、その失敗から学び、次のプロジェクトで成功を収めることができる。過去の失敗から学び、それを活かして次のプロジェクトに取り組むことができれば、プロジェクト成功につなげられるのだ。

具体的には、以前のプロジェクトで失敗したことを教訓にして、同じ失敗を繰り返さないように対策を講じたり、成功したプロジェクトでの手法を適用したりする、などが挙げられる。

このように過去の失敗から学ぶことでプロジェクトを成功に導くためには、失敗を受け止め問題点を分析し対策を講じる分析力と判断力が必要だ。さらに失敗によって傷ついたメンバーを受け止め、彼らを励まし、再び前向きに取り組むことができるようにするコミュニケーション能力も必要となるだろう。

マネジメントに求められるスキル3つ

目まぐるしく変化する時代へ対応するために、どのようなスキルがマネジメントに求められるのか、以下に挙げる3つのポイントを押さえておこう。

人材の育成・評価スキル

マネジメントにおいては、従来のようなトップダウン指導による人材育成は推奨されていない。適切な育成・評価システムを構築し、部下が自主性やモチベーションを保ちながら成長できる環境づくりが求められている。育成においては、部下自身が望むキャリアや将来像を尊重することも重要だ。

新しいしくみや事業を企画立案するスキル

今後、時代の変化に合わせて、経営環境も目まぐるしく変化していくことが予想される。組織として掲げる目標も、変化に合わせてアップデートしていかなければ、経営が行き詰まってしまうだろう。新しい情報を素早くキャッチし、それらを踏まえた新しいしくみや事業を、企業の中で自ら企画立案するスキルが求められる。

さまざまな働き方に対応するスキル

働き方改革の推進により、リモートワークを導入する企業は今後ますます増えていくだろう。また、少子高齢化の影響で労働人口が減り続ければ、これまで一定の年齢に達すると引退していた高齢者にも、引き続き働いてもらえるような環境を整えておく必要がある。マネジメントにおいても、さまざまな働き方を想定し、対応できるスキルが求められる。

トップマネジメントを成功させるポイント4つ

トップマネジメントでは、経営に関する総合的な判断を下した上で、最終的な責任も負わなければならない。企業が長期的成功を収め続けるためには、経営者層に多様な能力と資質が要求される。以下に挙げるトップマネジメント特有の役割を押さえておこう。

戦略の検討や規範・ルールの設定

企業理念や事業目的を決めておけば、従業員の愛着心が強まり、モチベーションも高まるだろう。また、規範やルールを設定し、価値観やその方向性を示すことで、従業員が業務の優先順位を決めやすくなり、職務に集中しやすくなる。

将来の経営を任せられる人材の育成

トップマネジメントでは、次世代を任せられる人材の発掘・育成も大きなテーマである。育成においては、マネジメントに必要なスキルを身に付けられる教育が必須となるだろう。

トラブル対応

組織が重大なダメージを負うようなトラブルが発生した際には、経営層が先頭に立って対応しなければならない。被害を最小限に抑えながら問題を早期に解決し、原因の究明と再発防止策を練ることも必要である。

外部との交渉

外部関係者との交渉を経営者層が行うことで、より具体的な話し合いができる上、組織の信頼もアップさせられる。顧客や取引先と友好な関係を維持するために、各種行事や食事会などにも、組織の顔として参加することが求められる。

会社をより良い方向へ導こう

組織のパフォーマンスを向上させるマネジメントは、経営をうまく進めていく上で欠かせないものである。相応のスキルを備えた人材を育成しながら、マネジメントを正しく機能させ、会社をより良い方向へ成長させよう。

マネジメントでよくある質問

Q.マネジメントとはどういう意味?

A.マネジメントとは、組織や企業を運営・管理するための能力・方法論のことだ。マネジメントには、リーダーシップや戦略的思考、組織運営、人材管理、コミュニケーション能力などのスキルが必要とされる。経営者やマネージャーにとっては、マネジメントの能力を持つことが極めて重要だ。

Q.マネジメントとは具体的に何をすること?

A.マネジメントの具体的な仕事内容には、以下のようなものが含まれる。

・組織の目標設定
・計画策定
・予算管理
・人員配置
・課題解決
・業務プロセス改善 など

マネジメントは、リソースを最適に活用し、組織の目的達成に向けて計画的な運営を行うことが求められる。

Q.マネジメント層とはどういう意味?

A.マネジメント層とは、企業や組織の経営陣や中堅管理職など、マネジメントの責任を担う人たちを指す。彼らは、以下のような責任を持っている。

・組織の方向性を決める
・目標を設定する
・社員の指導や育成をする
・組織を運営する など

Q.マネジメントの仕事の具体例は?

A.マネジメントの仕事の具体例には、以下のようなものがある。

・戦略的計画の策定
・業務プロセスの改善
・予算の管理
・人員配置
・目標設定や評価制度の策定
・社員の指導・育成
・クライアントとの折衝

これらの仕事を通じて、マネジメントは組織の方向性を確立し、目標達成に向けて組織を運営する役割を担っている。

事業承継・M&Aをご検討中の経営者さまへ

THE OWNERでは、経営や事業承継・M&Aの相談も承っております。まずは経営の悩み相談からでも構いません。20万部突破の書籍『鬼速PDCA』のメソッドを持つZUUのコンサルタントが事業承継・M&Aも含めて、経営戦略設計のお手伝いをいたします。
M&Aも視野に入れることで経営戦略の幅も大きく広がります。まずはお気軽にお問い合わせください。

【経営相談にTHE OWNERが選ばれる理由】
・M&A相談だけでなく、資金調達や組織改善など、広く経営の相談だけでも可能!
・年間成約実績783件のギネス記録を持つ日本M&Aセンターの厳選担当者に会える!
・『鬼速PDCA』を用いて創業5年で上場を達成した経営戦略を知れる!

✉️経営、事業承継・M&Aの無料相談はこちらから

無料会員登録はこちら