世界187カ国で事業を展開する世界最大の食品飲料企業・ネスレは、2018年4月、製品の包装材料を2025年までに100%リサイクル可能、あるいはリユース可能にするというコミットメント(約束)を発表した。それを受けてネスレ日本は、製品の包材の見直しを進めるとともに、環境啓発に関するコミュニケーションを展開している。
「キットカット」は、2019年9月から主力製品である大袋タイプ5品の外袋を従来のプラスチックから紙パッケージに変更し、2020年秋には、ほぼ全ての大袋タイプ製品の外袋を紙パッケージにしている。また、「ごみを生みださない暮らし」を目指す団体の活動を寄付金付き製品で支援するほか、環境問題を啓発する動画をブランド公式のYouTubeチャンネルで公開した。
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「ネスカフェ」では、JAXAと地球環境を学ぶエコプロジェクトを2020年春より始動。特設サイト「バーチャル科学館」のほか、「エコ宇宙工作」を展開している。消費者が参加しやすい提案を行い、社会課題の解決に貢献する考えだ。
ネスレ日本は、2020年9月以降に新発売する製品を含めた、ほぼ全ての「キットカット」大袋タイプ製品の外袋を紙パッケージへ変更する。2019年9月に開始した活動を拡大したもの。
それにより、従来のプラスチック使用時と比較して年間約450tのプラスチック削減量を見込む。また、2022年までに「キットカット」全製品の包材を、全てリサイクル・リユース可能な素材にすることを目指している。
そして、製品の包材のプラスチック削減に取り組むだけでなく、様々なステークホルダーと連携しながら、環境問題の啓発活動を行い、ユーザーの参加を促していることが特徴だ。
紙パッケージの魅力を伝え、親しんでもらう活動の一環として、紙のパッケージを使って受験生を応援する「お守り」をつくれる製品、“ぬり絵”が楽しめるイースター向け製品や、「ウミガメ」「マンタエイ」など4種類の海洋生物のイキイキとした姿が描かれ、「ウミガメ」などの海洋生物をつくることができる製品を、期間限定で発売した。
2020年4月に期間限定で発売した「キットカット ミニ オーシャンソルト 12枚」は、1商品あたり10円の寄付金が商品価格に含まれている。その寄付金は「ごみを生みださない暮らし」を目指し、生産や流通の新モデルの創出や製品開発などを行う「一般社団法人ゼロ・ウェイスト・ジャパン」の活動を支援するために活用されている。
また、海外で生活した経験から、「ごみ問題」の重要性に気付いたモデルの長谷川ミラさんが出演するドキュメンタリームービーを、「キットカット」公式YouTubeチャンネルで2020年4月から公開している。ムービーの放映を通じ、若い世代に対して有益な情報を伝えるとともに、少しずつ社会を変革していくためのアクションをサポートするねらいだ。
さらに、小中学生向け教科書副読本「SDGs スタートブック」に、「キットカット」外袋の紙パッケージ化の取り組みが掲載され、その教科書副読本は全国の小中学校などに配布された。SDGsの学習用ウェブサイト「EduTown SDGs-わたしたちが創る未来-」でも公開されている。
〈「ネスカフェ」JAXAとエコ活動〉 「ネスカフェ」の容器は、昔はガラス瓶のジャーが中心だったが、分別回収の手間も含めて課題もあった。そこで2008年に導入したのが詰め替え用の「ネスカフェ チャージ」(現「ネスカフェ エコ&システムパック」)だ。プラスチック部分を徐々に減らし、2012年に漏斗部も紙製にした。現在は、「ネスカフェ レギュラーソリュブルコーヒー」の販売量の約3割を同容器が占める。
オフィスで展開する「ネスカフェ アンバサダー」も、ユーザーの多くがマグカップを使用しており、脱プラスチックが進んでいる。国内製造の「ネスカフェ」製品のコミットメントは、2023年までに100%リサイクル可能、あるいはリユース可能にすると、2019年8月に発表している。
コミュニケーションでは、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)と、親子で楽しく地球環境を学ぶための共同エコプロジェクト 『#NescafeOurPlanet(ネスカフェ アワープラネット)』を2020年4月から始動した。より良い地球の未来のためにアクションを起こす人が増えてほしいという共通の願いをもとに、共同で環境啓発を行うもの。第一弾として、難しくなりがちな「地球」や「環境」といったテーマを親子で楽しく学べる「バーチャル科学館」を開設している。
JAXAの人工衛星が観測した環境変動を、「宇宙兄弟」のキャラクターの解説で学ぶことができる。宇宙からのデータを紐解き、「猛暑」「台風の脅威」といった環境変動の事象を分かりやすく紹介している。
また、同エコプロジェクトでは、「ネスカフェ×わくわくさんの宇宙工作教室」を、同社公式YouTubeチャンネルで公開している。「ネスカフェ エコ&システムパック」の製品パッケージをはじめ、普段捨ててしまうものをおもちゃに生まれ変わらせる“エコ宇宙工作”を提案する内容だ。
さらに、環境に配慮した商品を選ぶ消費者の行動を促進するため、自治体や流通企業との協力も進んでいる。神戸市と「ネスカフェ エコ&システムパック」の空きパッケージ回収に協力した人に、KOBEエコアクション応援アプリ「イイことぐるぐる」でポイントを付与する試みを、市内のイオンとダイエーの計2店舗で3月に2週間限定で実施した。同時に、エシカル消費の啓発で、対象のネスレ商品を市内の小売店で購入した場合もポイントを付与した。これらは全国でも初の試み。神戸市と共同で、プラスチックごみ削減の啓発を強化する取り組みだ。
複雑な課題を解決するためには、共同の取り組みが重要とし、消費者、ステークホルダー、ネスレの社員の一人ひとりが、それぞれの役割を果たすように働きかけている。
〈食品産業新聞 2020年11月5日付より〉