(株)はくばく(山梨県中央市、長澤重俊社長)はこのほど、2020年秋冬新商品を発売した。もち麦や雑穀を使用したおかゆで、レトルトおかゆ市場に参入。拡大の続くもち麦では白さにこだわった「国産もち麦」シリーズを展開する。また、機能性乾麺「一日分のたんぱく質がとれる細うどん」、「一食分のカルシウムがとれる細うどん」を発売。食シーンを重視した「ほっと一杯麦茶時間」も投入した。

主軸の事業である大麦・雑穀については、引き続きリーディングカンパニーとして市場拡大につながる商品を展開。乾麺・麦茶事業では「ボリュームは小さくとも10年先に残る商品」を目指して商品を投入する。新商品発売の背景と、商品開発の考え方の変遷を市場戦略本部の輿石修本部長に聞いた。

――秋冬新商品の発売の背景は。

はくばく「リーディングカンパニーとして大麦市場を牽引」/輿石修本部長インタビュー
(画像=はくばく 取締役 市場戦略本部 輿石修本部長)

当社は大麦・雑穀という穀物と、それに関連する形で乾麺・麦茶・粉という事業を持っています。当社の商品開発の考え方は、一昔前までは、「よい雑穀商品をつくろう」とか、「おいしいうどんをつくるぞ」とか、「香ばしい麦茶をつくるんだ」と、間違ってはいませんが、そういう考え方で進めていました。ただ、それは当社の役目とは少し違うと思い、5年ほど前からでしょうか、もう少し尖った商品に挑戦し始めます。極論を言えば、あまり売れなくても必要な人が買い続けてくれる、10年後もずっとある商品を目指すようになりました。この秋冬ではさらに、消費者に寄り添い、食シーンに合わせた商品を投入しました。

尖った商品として成功したのは「そば湯まで美味しい蕎麦」シリーズでしょうか。数ある乾そばメーカーのなかで、当社が「のどごし」で勝負しても、「そばの香り」でも、「高配合」でも、「信州産」といっても、勝てるイメージがないのです。なので、別の切り口を考えました。

――大麦・雑穀と、乾麺・麦茶ではポジションも考え方も違うようです。

そうなんです。大麦・雑穀に関しては、リーディングカンパニーとしての品質にこだわっています。おいしい商品を出して、市場拡大に取り組む必要があります。それに対して、乾麺や麦茶では当社より大きなメーカーもあります。そこではおいしいだけでは売れないので、尖った商品を投入していきます。

そういう意味では乾麺・麦茶の方が分かりやすいんですよ。チャレンジして、コストをかけ、売上が伸びてくれれば良いのです。売上が伸びているときは楽しいですし。それに比べて市場拡大は難しいですね。どの商品、どの情報提供、どの仕掛けによって、市場が拡大したなんて分からないですから。だから、どれだけコストをかけていいかも分からない。「売上拡大」という分かりやすい正解がないのです。でも、手探りながらも、もっと大麦・雑穀の市場を開拓していきます。

――その市場拡大に向け大麦・雑穀の新商品を投入されました。

レトルトおかゆの「もち麦おかゆ」、「五穀おかゆ」、「発芽玄米おかゆ」、レトルトタイプの「国産かけるだけもち麦」を新発売しました。フレークタイプの大麦も販売しています。ボリュームゾーンである、米と一緒に炊飯する大麦・雑穀が主軸で、引き続きそこを伸ばしていくのには変わりません。簡単に食べられる大麦・雑穀を増やすことで、間口を広げていきます。業務用では冷凍もち麦も販売しています。

はくばく「リーディングカンパニーとして大麦市場を牽引」/輿石修本部長インタビュー
(画像=「国産かけるだけもち麦」)
はくばく「リーディングカンパニーとして大麦市場を牽引」/輿石修本部長インタビュー
(画像=「もち麦おかゆ」「五穀おかゆ」「発芽玄米おかゆ」)

――もち麦のアピールポイントとして、「食物繊維を摂る上で、最もコストメリットが高い」という点があります。加工度が上がってもそれは変わりませんか。

はい。「食物繊維を摂る」という観点からすると、加工度があがってもコストメリットは高いという自信があります。

――レトルトおかゆの初動はいかがですか。

新商品としてはまずまずというところでしょうか。これに限らず、最初から広く配荷を進め、直ぐに売上を作る商品ではなく、小さく初めて大きく育てられるようにしていくのが、基本的な考え方です。

――もち麦の拡大に向けては、外食・中食での拡大も重要です。ほとんどのCVSでもち麦を使用したおにぎりが並ぶようになりました。次のメニューは?

リゾットに広がって欲しい。そもそも食材としての相性がいいですから。チャーハンにも適しています。ただ、おにぎりは広まってくれましたが、そもそも外食・中食全体の中で、健康志向に応える商品のボリュームはまだ小さい。なかなか次のハードルは高いと思っています。

――ハードルを越えるには。

もち麦が体に良いことには自信を持っていますが、私たちがどれだけ発信しても、世の中の皆様がもち麦のことを考える時間は、一生で10分もないと思うんです。そういう意味では、時間はかかりますが、ヨーグルトや納豆のように認知していただくのが目標ですね。ヨーグルトも納豆も、「こういう機能で体にいい」ということを強く意識して買っている人は少ないと思います。でも、多くの方が「体に良くておいしい」と認知しています。そういう認知を得ていきたいですね。まあ、20年はかかるでしょうか。でも、多くの外部の研究成果があり、当社も大学に人員を出して研究をしています。「体に良くておいしい」と認知されるだけのポテンシャルがある食材です。その認知が広まっていくことで、ハードルが越えられると考えています。

――大麦粉については。

ラボ段階では大麦粉パンもうまくいくのですが、大手製パンメーカーのラインにのせるのはなかなか難しい。もう少し研究が必要ですね。麺では商品も増えてきて、この先も期待しています。

――乾麺では機能性のある商品を投入しました。

「一日分のたんぱく質がとれる細うどん」、「一食分のカルシウムがとれる細うどん」です。以前に食物繊維が豊富な「もち麦うどん」が売れてくれたのですが、一時的に広がって、その後は取り扱いがなくなったところもあります。そこへ、もち麦うどん同様にプラスαの要素のある乾麺を投入しました。

はくばく「リーディングカンパニーとして大麦市場を牽引」/輿石修本部長インタビュー
(画像=「一日分のたんぱく質がとれる細うどん」「一食分のカルシウムがとれる細うどん」)

――麦茶は食シーンを意識した商品ということですが。

「ほっと一杯麦茶時間」、この名前にたどり着くまでに色々とありました。ティーバッグ麦茶への不満点として、量が多すぎるという点があります。ほとんどが1リットル以上で、温かくして飲みたい方はなおさら使いにくい。なので、一杯対応のティーバッグ麦茶にニーズがあることは分かっていました。でも、失敗を続けてきてしまいました。最初は「ほっと香る麦茶」で、次は「ホットでおいしい麦茶」として出したのですが、この商品名では「一杯」が伝わりません。パッケージも麦茶っぽくないデザインで、ちょっとかっこつけてしまいましたね。今回はベタな商品名と分かりやすいパッケージにして再挑戦です。時間がかかっても育てていきたい商品です。

はくばく「リーディングカンパニーとして大麦市場を牽引」/輿石修本部長インタビュー
(画像=「ほっと一杯麦茶時間」)

――ありがとうございました。

〈米麦日報2020年10月12日付〉