遅咲き経営者
(画像=Blue Planet Studio/stock.adobe.com)

ケンタッキー・フライド・チキン(KFC)の創設者は、フランチャイズビジネスとしての創業が比較的遅かったことで有名だ。このように、創業が遅くても成功している経営者は、実は多い。このような経営者に共通していることは何か。一人ひとりの成功秘話に迫っていこう。

遅くに創業して成功した人たち

遅くに創業して成功した人と言えば、前述のケンタッキー・フライド・チキンの創業者やマクドナルドの創業者、日本企業では日清食品の創業者などの名前が挙げられる。

KFC創業者のハーランド・デーヴィッド・サンダース氏(1890年9月9日〜1980年12月16日)

ケンタッキー・フライド・チキンの創業者と言えば、多くの人に「カーネル・サンダース」という愛称で知られているハーランド・デーヴィッド・サンダース氏だ。

サンダース氏は1890年生まれ。16歳で陸軍に入隊し、除隊後はさまざまな業種で仕事を得てその日暮らしを続けた。経営者の道を歩み始めたのは30代後半に入ってからで、ガソリンスタンドの経営を始める。しかし、大恐慌のあおりを受け、経営は決して楽ではなかった。

サンダース氏がガソリンスタンドの一角で運営していたレストランは、「サンダース・カフェ」という。フライドチキンの味が評判となり、サンダース・カフェは席数が100席を超えるほど大きくなった。

そして、このフライドチキンでフランチャイズビジネスを始めたのが1952年のことだ。現在、フランチャイズモデルで展開されているKFCの創業は、この時期にあたる。当時、サンダース氏はすでに60代となっていた。その後、KFCは大きく躍進し、サンダース氏は遅咲きの成功者の1人として知られるようになった。

マクドナルド創業者のレイ・クロック氏(1902年10月5日〜1984年1月14日)

世界のハンバーガーチェーンの代表格と言えば「マクドナルド」だ。日本でも知らない人はいないほどであるが、マクドナルドが創業したのはいつで、誰が創業者なのかを知っているだろうか。

マクドナルドの創業ストーリーを語るとき、覚えておきたいことが1つある。実質的なマクドナルドの創業者はマクドナルド兄弟という2人の人物なのだが、そのマクドナルドのフランチャイズ権を獲得して事業として成功させたのはレイ・クロック氏だ。

そのため、マクドナルドの創業者が誰かという問いに対しては「レイ・クロック氏」と言うのが、現代においては一般的だ。そして創業年は、クロック氏がフランチャイズビジネスに乗り出した1955年とされる。

クロック氏がマクドナルドのフランチャイズビジネスを始めたとき、彼はすでに50代になっていた。その後はウォルト・ディズニーに店舗の開店交渉をするなど精力的に動き、マクドナルドは世界各国に店舗を有するまでに至った。

マクドナルドの店舗数は2017年12月時点で、世界100の国と地域で3万7,000店舗以上となっている。ちなみにクロック氏を描いた映画として『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』があるので、興味がある人はぜひ観てみてほしい。

日清食品創業者の安藤百福氏(1910年3月5日〜2007年1月5日)

日本にも有名な遅咲き経営者がいる。日清食品の安藤百福氏だ。現在も多くの人から愛されているカップ麺「カップヌードル」やインスタントラーメン「チキンラーメン」を開発し、今や日本人のみならず世界中の多くの人が知る国際的ブランドとなっている。

安藤百福氏がチキンラーメンを開発したのは48歳のときだ。短い睡眠時間の日々で開発したチキンラーメンを武器に事業を拡大し、その後、新たに開発したカップヌードルでさらなる躍進を遂げた。亡くなる直前まで安藤百福氏の開発意欲は衰えることが無かったという。

安藤百福氏は2018〜2019年に放映されたNHKの連続テレビ小説「まんぷく」のモデルになり、改めて脚光を浴びている人物だ。

遅咲き成功者に共通している点とは?

これらの遅咲き成功者に共通している点は何だろうか。仮に1つ挙げるとすれば「最高の武器」を人生の中盤もしくは後半で手に入れたことではないだろうか。

ハーランド・デーヴィッド・サンダース氏は「フライドチキン」を、レイ・クロック氏は「マクドナルド」を、そして安藤百福氏は「チキンラーメン」と「カップヌードル」という武器をそれぞれ手にし、事業を拡大させて成功に至ったのだ。

3人の逸話に触れると、強力な武器があれば年齢を問わずに経営者として成功できるという可能性を感じさせる。もちろん、誰でもその本人を時代の覇者に導く武器を簡単に手にできるわけではない。クロック氏のような「出会い」や安藤百福氏のような「努力」が必要になることは当然のことだ。

”おじさん”になっても経営者として成功できる!

40代、50代、60代となってから経営者として成功するには、出会いを広げるために外に出たり、人並み以上の努力が必要であったりすることは覚えておきたい。裏を返せば、これらを実践すれば遅くに創業しても成功できるチャンスはあるのだ。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)

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