事業承継支援サービス
(画像=Gajus/stock.adobe.com)

事業承継の支援サービスは種類が豊富なため、相談先に迷う経営者も多いだろう。今回は、公的な事業承継支援サービスや民間の事業承継支援サービスの主な種類を紹介し、メリットやデメリットについても解説する。事業承継の支援について悩んでいる経営者は、ぜひ参考にしてほしい。

目次

  1. 事業承継の支援を多くの経営者が必要としている
  2. 事業承継の支援を受けようと思ったら?
  3. 公的な事業承継支援サービスのメリットとデメリット
    1. 公的な事業承継支援サービス
    2. 公的な事業承継支援サービスのメリット
    3. 公的な事業承継支援サービスのデメリット
  4. 民間の事業承継支援サービスのメリットとデメリット
    1. 民間の事業承継支援サービス
    2. 民間の事業承継支援サービスのメリット
    3. 民間の事業承継支援サービスのデメリット
  5. 事業承継の支援を受ける経営者の心構え
  6. 事業を次の世代へと引き継ぐために
木崎涼
木崎 涼(きざき・りょう)
FP・簿記・M&Aシニアエキスパート。大手税理士法人で多数の資産家の財務コンサルティングを経験。多数の資格を持ちながら、執筆業を中心に幅広く活動している。

事業承継の支援を多くの経営者が必要としている

帝国データバンクの企業動向調査よると、2019年の後継者不在率は65.2%であり、6割を超える経営者が後継者の不在に悩んでいることがわかる。

また、中小企業庁発行の『中小企業白書』によると、経営者の年齢のピークは、1995年は47歳だったが2015年は66歳となっており、高年齢化が急速に進んでいることが見て取れる。

中小企業経営者にとっては、後継者の確保に四苦八苦する状況がしばらく続くだろう。事業承継は、経営者の最後の大仕事でもある。早めに事業承継について考え始めるとともに、どのような事業承継の支援サービスがあるのかを把握しておきたい。

事業承継の支援を受けようと思ったら?

事業承継の支援先に迷った時、まず誰に相談するだろう?

中小企業庁委託の「企業経営の継続に関するアンケート調査(2016年)」によると、既に後継者が決定した経営者が、事業承継の支援先として相談した相手は以下の通りだ。

顧問の公認会計士・税理士 72.9%
親族、友人・知人 51.4%
取引金融機関 47.2%
親族以外の役員・従業員 37.8%
他社の経営者 34.5%
取引先の経営者 30.4%
経営コンサルタント 26.0%
顧問以外の公認会計士・税理士 19.2%
弁護士 12.9%
商工会・商工会議所 8.9%
民間のM&A仲介業者 6.9%
事業引継ぎ支援センター 2.5%
よろず支援拠点 1.7%

事業承継の相談先として、身近な専門家である顧問の公認会計士・税理士が圧倒的に高い割合となっており、親族や友人・知人など気心の知れた相手が続く。役員や従業員も会社の状況を少なからず把握している点から、事業承継の相談先に選ぶ経営者も多いようだ。

自社以外の法人とも付き合いのある取引金融機関は、事業承継に関する情報を持っていると考える経営者は多いだろう。金融機関は、会計事務所やM&A仲介業者と協力して事業承継セミナーを開催するなどしており、相談することで相談すべき支援先を紹介してもらえる可能性もある。

他社の経営者や取引先の経営者に相談をする経営者も一定数存在するが、事業承継の専門家ではないため、個人的なアドバイスしか受けられない可能性が高い点には留意しておく必要がある。

相談相手のうち、公的な事業承継支援サービスにあたるのは「事業引継ぎ支援センター」「よろず支援拠点」の2つだ。「商工会・商工会議所」も、特別認可法人という扱いではあるが、公的な事業承継支援に含めてもいいだろう。

その他の事業承継の相談先は、民間の事業承継支援サービスである。具体的には、「公認会計士・税理士・弁護士」「経営コンサルタント」「M&A仲介業者」などだ。

公的な事業承継支援サービスのメリットとデメリット

事業承継を迅速かつ確実に行うには、事業承継に詳しい支援サービスを活用することが望ましい。

ここでは、事業承継の支援先として利用できる、公的な事業承継支援サービスのメリットやデメリットを解説する。

公的な事業承継支援サービス

公的な事業承継支援サービスのうち、主だったものを紹介していく。

・事業引継ぎ相談窓口・事業引継ぎ支援センター

「企業経営の継続に関するアンケート調査」の結果でも回答として挙がっていたが、事業引継ぎ相談窓口と事業引継ぎ支援センターは、公的な事業承継支援サービスとしては最も規模が大きく、熱心に支援を行っている機関といえるだろう。どちらも管轄は中小企業庁だ。

事業引継ぎ相談窓口は全国47都道府県に、事業引継ぎ支援センターは、北海道・宮城・東京・静岡・愛知・大阪・福岡の計7ヵ所に設置されている。

・後継者人材バンク

後継者人材バンクは、事業引継ぎ支援センターが行う事業の一つでもある。起業家志望の人材と後継者のいない経営者を引き合わせて、事業承継についてのさまざまな支援を行う公的なサービスとして、2014年にスタートした。

・よろず支援拠点

よろず支援拠点は、国が設置した経営相談所のことで、事業承継のみならず、創業から売上拡大、事業再生などの、さまざまな相談ができる。よろず支援拠点は、47都道府県に設置されており、ホームページ上で相談を受けるコーディネーターの経歴も見られることから、安心感がある公的な支援サービスだ。

・事業承継ガイドライン

事業承継ガイドラインとは、中小企業庁が公表している事業承継に関する手引書のことだ。事業承継に関する情報が、全96ページの冊子に詳しく盛り込まれている。事業承継について大枠の知識を身につけるのに役立つが、専門的な記載が多く、具体的な事業承継の進め方を理解し難いと感じる経営者も多いかもしれない。

・農林水産省の手引書

農林水産省は、農業経営者向けに「農林農業経営の円滑な承継に向けて」という手引書を公表している。農業経営で事業承継を考えているなら、目を通しておくようにしたい。

公的な事業承継支援サービスのメリット

公的な事業承継支援サービスのメリットは、費用負担を抑えられる点だ。事業承継相談窓口や事業引継ぎ支援センター、よろず支援拠点では、無料で相談ができる。後継者人材バンクへの登録も無料だ。

公的な事業承継支援サービスに相談した後、実際にM&Aを実施する際には、専門家に支払う費用が発生することもあるだろう。M&A候補者とのマッチングなどは無料で受けられるため、民間の事業承継支援サービスを活用する場合と比べて確実に費用は安くなる。

また、公的な機関だからこそ、公平な立場からアドバイスを受けられることに魅力を感じる経営者も多いだろう。民間のサービスであれば、「事業承継を過度にすすめて、利益を得ようとしているのでは?」といった疑念を抱くかもしれないが、公的な相談窓口ならこういった不安もなく相談する事ができる。

公的な事業承継支援サービスのデメリット

公的な事業承継支援サービスだと、対応にスピード感が感じられなかったり、これまでの支援実績などで不安が残るケースもある。例えば、中小企業庁委託の「小規模事業者の事業活動の実態把握調査(2016年)」によると、公的なサービスである事業引継ぎ支援センターの存在について、「知らない」という回答が77.1%となっている。

さらに、「承継したいが、現時点で後継者候補が見つからない」という経営者に、後継者人材バンクを利用したいかどうか尋ねたところ、「利用したいと思わない」が63.3%にのぼった。

事業引継ぎ支援センターは支援件数を増やしつつあるが、民間の税理士やM&A仲介業者と比べると、圧倒的に支援実績が少ない。事業承継という事業の未来を決める重要なステージで、実績が少ないサービスに安心して事業承継支援を任せられるかというと疑問符が残る。

民間の事業承継支援サービスのメリットとデメリット

公的な事業承継支援サービスは、費用を安く抑えられるものの支援実績が少ないため、事業承継の相談先として不安を感じる経営者もいるだろう。

それでは、民間のサービスはどうであろうか?ここでは、民間の事業承継支援サービスのメリットやデメリットについて解説していく。

民間の事業承継支援サービス

民間の事業承継支援サービスのうち、主だったものを紹介していく。

・士業の専門家

事業承継に関する士業の専門家としては、公認会計士・税理士・弁護士・司法書士などがある。事業承継では、売却や贈与、相続などが関わるため、税金の問題は避けては通れない。また、M&Aなど第三者承継の場合、過去の法務リスクをさかのぼって調査しなければならない。

親族内承継であれば、税理士に税金の計算を依頼し、司法書士に依頼して役員変更登記をすれば問題なく完了することもある。

・M&A仲介業者

M&Aなど第三者承継の場合は、M&A仲介業者を活用することで、求める条件を満たす買い手候補先を見つけられる可能性が高くなる。M&A仲介業者はM&Aのプロであり、実績も豊富だ。企業価値を最大限に引き出し、売却価格を引き上げるノウハウなども心得ている。

事業承継にM&Aを選択する予定なら、M&A仲介業者の活用は積極的に検討するようにしたい。

・M&Aマッチングサイト

自分で買い手候補先を探したい人や、小規模なM&Aを希望する人は、スモールM&A専用のマッチングサイトを利用するという方法がある。M&A仲介業者のように、M&Aの最初から最後までフルサポートを行うシステムではない事から、手数料も割安に設定されていることが多い。

民間の事業承継支援サービスのメリット

民間の事業承継支援サービスでは、豊富な実績に基づいたアドバイスや、質の高いサービスを受けられる可能性が高い。

顧問の公認会計士や税理士の場合、事業承継が成功しなければ、自分たちの事業にも少なからず悪影響が出ることから、しっかり事業承継をサポートしてくれるだろう。M&A仲介業者は、成果報酬型の料金体系になっているところが多く、全力で買い手候補先の企業を探して売却価格の交渉を行ってくれる。

有償だからこそ高品質な事業承継の支援を受けられることが、民間の事業承継支援サービスを利用するメリットだ。

民間の事業承継支援サービスのデメリット

デメリットとしては、まずは費用の高さがあげられるだろう。士業の専門家に依頼する場合、数万円から数十万円の報酬を請求されることが多い。M&A仲介業者の場合は、会社の評価額に応じて手数料が決まるため、かなり高額になるケースもある。

また、民間の事業支援サービスは、自社の利益を最大化するために、公的なサービスとは違って、公平ではない意見をしてくる可能性があることにも留意しておくべきだろう。

その意見を精査・吟味し、最終的に経営判断を下すのは、経営者の仕事だ。

事業承継の支援を受ける経営者の心構え

事業承継の支援を受けるなら、経営者自身もそれ相応の心構えを持っておくようにしたい。事業承継に関しては、下記のように経営者にしかわからない情報がたくさんある。

事業承継の目的は何なのか
自社の強みはどこにあるのか
親族間のトラブルが予想されないか

情報を整理しつつ、必要に応じて専門家に相談することで、円滑な事業承継ができるだろう。

事業を次の世代へと引き継ぐために

事業承継は、承継候補先を探すことから始まり、具体的な承継の手続きが始まれば法務や税制などの専門的な知識が必要なこともあって、一朝一夕で最良の解が得られるものでもない。

しかし、事業承継について早くから検討を始め、事業承継支援などを活用しながら慎重に進めていくことで、悔いなく事業を次の世代へと引き継ぐこともできるであろう。経営者として、できることから準備を始めるようにしたい。

文・木崎涼(ファイナンシャルプランナー、M&Aシニアエキスパート)

無料会員登録はこちら