AKURAROBE
2020年広尾のオフィスにて
曽田 天倉
曽田天倉(そだ・あくら)
東京都出身。3歳よりピアノ、6歳よりクラシックバレエを始める。 初等科より聖心女子学院で学び、宝塚音楽学校入学。宝塚歌劇団へ入団。娘役として活躍。
退団後は浅利慶太、狂言方和泉流能楽師五世野村万之丞らに師事し本格的に女優として活動を開始。舞台の他、ナビゲーターや司会、ナレーション等も努める。現在は自ら立ち上げたファーブランド「AKURAROBE」(アクラローブ)のデザイナーとして活躍。

皆さんこんにちは。曽田天倉(あくら)と申します。
いま、私は自身が立ち上げたファッションブランド「AKURAROBE」(アクラローブ)の代表兼デザイナーとして、日夜、ブランドの運営に邁進する日々を送っています。規模はまだまだ小さいですが、日々充実した毎日を送っています。

今回の連載「曽田天倉の女性起業家への道」では、私の少しユニークな経歴とともに、ファッションブランドを立ち上げることになった、そのきっかけや経緯についてお話をさせていただきたいと思います。

この連載が、少しでも起業を志す女性へのエールになったら、嬉しく思います。  

私が宝塚音楽学校に入学するまで

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宝塚音楽学校本科生時代 学校の伝統の看板の前で

私の人生を決定づけた一番大きな出来事はやはり、宝塚音楽学校への入学でしょうか。
東京で生まれ育ち、小学校からずっとエスカレーター式の学校に通っていた私が、宝塚音楽学校という世界に飛び込んだきっかけは、母の一言でした。

小さい頃から、クラッシクバレエを習い、歌ったり踊ったりが大好きだった私に、宝塚歌劇のファンだった母が宝塚音楽学校の受験を勧めてくれたのです。

宝塚音楽学校に入学してからは、芸事に自分の100%を費やす日々。
歌に踊りに演技の勉強に、毎日が大忙しでした。クラシック声楽が終われば次はジャズを歌い、モダンバレエの次は、ジャズダンス、日本舞踊にタップダンスといった具合。
芸事づけの2年間でしたね。

宝塚音楽学校を卒業して

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宝塚歌劇団時代 ベルサイユのばらでマリーアントワネット役(少女時代)

宝塚歌劇団に入団して数年後、宝塚歌劇の名作「ベルサイユのばら」でマリーアントワネットの少女時代役という大役を頂きました。

宝塚音楽学校に入学する前から、ずっと憧れていた演目だったので、役が決まったときは本当に嬉しかったですね。毎日、無我夢中に演じて、燃え尽きてしまった私は、結果、この役が節目となり、宝塚からの卒業を決断。次のステップへ進むことになりました。

宝塚歌劇団を退団してから、劇団四季や他の舞台でお芝居を続けていましたが、
一方で「なにか自分の世界観を表現できるビジネスがしたいな」と、漠然と思い始めていました。

もともと、宝塚歌劇団の後援会には政財界の方も多く、皆さんからビジネスのお話を伺うことは、大きな学びと刺激になりました。

宝塚歌劇団という「秘密の花園」での生活から飛び出したばかりの私にとって、社会とリアルにつながっている経済やビジネスのお話は本当に興味深かったんです。

私のビジネスが形になるまでは、ここからまだ時間がかかるのですが、その過程で、今につながるネットワークづくりや貴重な経験を経て、自分自身も成長を重ねていきました。

退団後には、大学に行きたいと思って、大検も取りました。今から考えると、大人の女性として社会との接点を持とうと、必死にもがいていたのかもしれません。

そうそう、ちなみに高校認定試験を受験しに京都に行ったとき、試験会場に「舞妓」さんがいたんです。彼女たちも10代から芸の世界に邁進している。そう思った時、彼女たちに親近感を持ったことを覚えています。

タカラジェンヌからビジネスウーマンに

AKURAROBE
オフィス内はアンティーク調のインテリアで満ちている

芸事から引退した後、知人からファッションブランドの新作発表会やパーティーに呼ばれることが増え、そのことがきっかけで、PRイベントの企画などがお仕事になっていた時期がありました。

自分自身がパーティーでトークショーを行うということもありましたが、なんでもやってみよう!という気持ちで積極的に企画にも取り組んでいました。ありがたいことに、PRイベントは皆様から好評でした。

その後、元々興味があったインテリアの仕事を始めようと準備を進めます。京都でギャラリーをやろうと、場所まで確保していたんです。
私の父は美術品の収集家で、私が輸入したインテリア家具のほかに、父のコレクションを置いたりして、、、と妄想を膨らませながら準備していた時、3.11の震災が起きてしまい、計画は断念せざるを得ませんでした。

本当は今でもやりたいな、と思っているんですけどね。またチャンスがあったら、ぜひトライしたいです。

オリジナルファッションブランド「AKURAROBE」の立ち上げ

インテリアのお仕事を断念した時、丁度、知り合いの方から「テレビショッピングQVCで販売する天倉ちゃんらしいお洋服を作ってみない?」と服飾デザインのお話をいただいたんです。

AKURAROBE
AKURAROBE:ホワイトミンク ケープ デザインも自ら手掛けたもの

普段からファッションは大好きでしたし、自分なりのこだわりも持っていたので、「私らしいお洋服を」というリクエストをいただいて、とても嬉しかったことを覚えています。新たな挑戦でしたが、今思えば、自然の流れだったのかな。

2014年からQVCのお仕事を2年勤めさせていただいた、その終わり頃、2016年に自身のファッションブランド「AKURAROBE」を立ち上げました。

AKURAROBEでは洋服、アクセサリーをはじめ様々なアイテムを扱っていますが、メインはリアルファー(毛皮)です。

ファーを中心に据えた理由は3つあります。

1つ目は、私自身が、大のファー好きであるということです。
AKURAROBEは基本的に、販売委託はせず、私が開催する展示会で、直接商品を1着1着お客様に販売しています。ほとんどがオーダーメードなので、商品の美しさや機能性など、お客様に丁寧に説明し販売するため、商品は、愛情と熱量と自信をもって語れるアイテムでなければならないと考えました。また、お客様は、私というキャラクターも含めて商品を見てくださるので、私が扱うからこそ意味がある、そういうアイテムを中心に据えたかったんです。

2つ目は、効率性です。いくらファッションが好きといっても、私が1人で立ち上げたブランドですから、マンパワーには限界があります。商品数を豊富に携えたファッションブランドにしていくためには、多くの方の協力も必要ですし、ある程度のロットで洋服を製作していくので、多額の資金も必要になります。

AKURAROBE
香港の毛皮業者のオフィスで制作風景

そんな中、1着からでも私のデザイン通りにファーの製作を依頼できる仲間に出会ったんです。

お洋服はたくさん作らないとなかなか利益が出ませんが、「1着1着丁寧に製作してお客様にお届けしたい!」という私の信念を可能にしてくれるアイテムがファーでした。こうして、私はスモールスタートでビジネスを開始し、今日まで継続することができています。

最後に、3つ目は、私が街中でマーケティングをしたときの実体験がもとになっています。ある時、街行く女性たちが皆どこかに“ふわふわしたもの”を身に着けていることに気が付いたんです。ストラップだったりアクセサリーだったり。

実際に数えてみると10人中9人はなにかしらファーアイテムを身につけていた。
それを見て、「女性はみんなふわふわのファーが好きなんだな」と確信を持ちました。

しかし、一方で今の30代、40代女性はリアルファーに触れる機会がほとんどありません。
それは、毛皮業界に厳しい昨今の時代背景もありますが、
自分には縁遠いもの、関係ないもの、と思い込んでいる方がとても多いんですね。そういった方々に「ちょっと着てみて」と、試してもらうと、途端に、目がキラキラ輝きだすのです。

ファーを羽織ったときに得られる高揚感は女性を美しく見せます。それがリアルファーの魅力だと思っていますし、その魅力を一人でも多くの女性に知ってもらいたい、という気持ちで商品を製作しています。

AKURAROBEのファーは、軽くて暖かく機能的であることはもちろん、現代の生活にマッチする軽やかなデザインで、幅広い年齢層のお客様に喜んでいただいています。

女性が起業するのは大変?

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ホテルオークラでの恒例催事。2020年は8月に開催予定

起業を志されている女性にお伝えしたいのは、まず、できることから始めてみること。

例えば、私がAKURAROBEを立ち上げた最初の展示会では、事業資金があまりない中でのスタートだったため、十分な商品アイテムを揃えることができませんでした。それでも、できる範囲でやってみよう!と思ってトライした当時の自分を褒めてあげたいです。(笑) 

ホテルで会場を借りて、用意できる限りのファーを2~3つ、それからフランスから個人輸入した素敵なジュエリーを大量に用意したんです。

展示会を訪れた知人も、1つ数十万円するファーにはなかなか手が出ません。ですが、私がセレクトした手頃なフランスのジュエリーが好評を博し、多くのお客様にお求めいただく結果となりました。
その売り上げを基に、次の展示会に向けて、ファーも種類を増やして製作することが出来るようになっていったのです。

「失敗したらどうするんですか」と聞かれることもありますが、私は失敗についてはあまり考えたことがないかもしれません。というより、何をもって失敗と呼ぶのかも分かりません。

とにかくやり続けることが全て、だと思っています。

もちろん、いつも順風満帆というわけではありません。 正直に申しあげると、展示会を開催する度「ダメだったらやめよう」と思っています。

去年の展示会も、ちょっと気持ちが弱っていた時期だったんですが、そこに三越伊勢丹のバイヤーの方が見に来てくださったんです。日本橋三越本店には全国の百貨店の中でも数少ない「毛皮サロン」があり、そのご担当者様から、新たなお仕事のお話しを頂いて、今では三越本店での催事や三越のオンラインショップでAKURAROBEを販売させていただいています。本当にありがたいことです。

AKURAROBE
三越日本橋本店で行われたAKURAROBEのポップアップストア

ですから、先がどうなるかなんて分からない。

思いがけない時に新たなチャンスに出会うこともありますし、一番大切なことはあきらめずに続けることかもしれませんね。

2020年AKURAROBE 展示会のお知らせ

2020年8月に開催予定の展示会は、南青山の「アルテ・オラファ・フルヤ」の古屋一雄氏をお迎えして、選りすぐりのダイヤモンドもご覧いただけます。
AKURAROBE定番のファーアイテムに加え、初登場のニットアイテム、ワンピースなど多数ご用意してお待ちしております。

未だ落ち着かない状況下ではございますが、どうぞリニューアルされたホテルオークラにて優雅な時間をお過ごしくださいませ。

日時:2020年8月7日、8日、9日 11:00~
場所:ホテルオークラ東京 プレステージタワー 3012号室
※展示会はコロナウィルス感染防止対策のため、予約優先。希望日時、人数を明記の上、メール、電話&FAXにて予約のこと

連絡先
MAIL:info@akurarobe.com
TEL&FAX:03-6683-4909