量販店の家庭用製油売り場(写真はイメージ)
(画像=量販店の家庭用製油売り場(写真はイメージ))

2024年度(2024年4月~2025年3月)の家庭用食用油市場は、金額ベースで過去最高を更新する見通しだ。キャノーラ油などの汎用油は減少しているものの、オリーブ油やごま油といった付加価値型の油は価格改定の影響も受けて拡大し、こめ油も引き続き伸長している。テレビで放映された効果もあり、アマニ油の需要も増加している。

一方、物量ベースでは前年を3%弱下回る見通しだ。2022年度との比較では、物量が2ケタ近く減少している。製油メーカーの幹部は、「単価が大きく下がっているにも関わらず、物量が回復しないことは衝撃的だ」と語り、危機感を募らせる。

製油メーカー各社は2024年10月に価格改定を行ったが、必要な改定額には達していない。2025年4~5月に再度の価格改定を実施しており、2025年度は価格改定の浸透が重要課題となる。

そして、スペインの生産量回復により、やや価格が落ち着くとみられるオリーブ油を含めた汎用油の物量回復も課題となる。

◆こめ油は金額でキャノーラ油の半分を超える存在に

日清オイリオグループ調べによると、家庭用食用油市場は、2024年の4月から2025年2月まで前年同期比1.1%増の1,624億円と微増で推移しており、3月の結果次第だが過去最高を更新したとみられる。

「物価上昇による節約志向や生活防衛意識の高まり、未曾有(みぞう)のオリーブオイルショックがある中で、過去最大を継続して更新していることはポジティブに受け止めたい」(同社)。ただ、物量に関しては2.7%の減少になったもようだ。

金額面では、キャノーラ油などの汎用油は11.9%減となる一方で、付加価値型の油種では、ごま油は6.3%増、オリーブ油は8%増、サプリ的オイルは12.7%増とそれぞれ拡大している。

オリーブ油は2024年5月の価格改定の影響により、7~9月は物量面で影響を受けたが、10~12月以降は回復の兆しが見られる。ごま油は昨年の価格改定を受けた後も市場は堅調で、物量で2%減だが、上期の金額は350億円と、オリーブ油に次ぐ2番目のカテゴリに成長している。

サプリ的オイルの中では、メディア報道の影響を大きく受けたアマニ油が42.7%増と1.5倍近く拡大した。

その一方、急拡大してきたMCTオイルは15.6%減とやや一服感が見られる。こめ油は8.7%増加し、金額面では172億円と、キャノーラ油の316億円の半分を超える市場に成長しており、存在感を高めている。

汎用油の金額縮小は単価下落が主要因とみられ、物量では0.6%減の微減にとどまっている。ただ製油メーカー幹部は、「原料コスト上昇がピークを超えたのは事実だが、市場の単価下落はそれを上回る水準で進行している。昨年夏以降、原料コストは反転上昇しており、適正価格に戻すことが急務」と強調する。

特に2022年度以降は、物量市場が急激に縮小している。2024年度の汎用油は2022年度比で8.8%減で推移している。「これは大きな問題と捉えている。確かにオリーブ油の影響もあるが、価格と量のトレードオフの関係が比較的濃いとされている汎用油カテゴリにおいて、単価が大きく下がったにもかかわらず、物量が回復しないということは衝撃的である」(製油メーカー幹部)。

製油メーカー各社は2024年10月から価格改定を実施した。これまで油脂の価格改定は原料相場や為替を理由としたものが中心だった。ところが10月実施分は、物流費の高騰、エネルギーコストや資材、人件費などの上昇に起因するものだ。「3月時点で当社が要望する水準までは届いていない」や「10月の価格改定は実勢化に時間を要している」と、各社とも必要な改定額には達してしないもようで、4~5月から更なる価格改定を実施した。

「2024年10月からの改定と合わせてアナウンスを実施しているが、未だ先行き不透明な状況」など、引き続き粘り強い交渉が必要なようだ。昨年10月からの価格改定を発表する直前に相場が下がったことで相殺されると捉えられた例もあったようで、「今回は取り巻く環境について、より丁寧に説明し理解を求めていく」といった声も聞かれた。

〈大豆油糧日報 5月9日付〉