矢野経済研究所
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3月11日、東日本大震災から14年が経った。死者行方不明者22,332人、全半壊の住宅被害406,157棟、社会基盤施設、ライフライン、建築物等の推計被害額16兆9000億円、災害救助法が適用された自治体は10都県241市区町村に及んだ。そして、現在にあっても27,615人もの人々が避難生活を強いられ、あの日、19時03分に発出された原子力緊急事態宣言が解除される見通しはない。被災は今も進行中である。

昨年度までに投じられた復興予算は約41兆円(執行見込額)、ハード面での事業は完了した。県内総生産も発災前を上回る。福島ロボットテストフィールドをはじめとするイノベーション拠点も整備された。しかし、かつてあった日常、そこにいるはずの多くの人は未だ戻っていない。失われた住宅と同数の災害公営住宅を建設することでコミュニティが再生されるわけではい。地域の復興は道半ばだ。

福島県主催の追悼復興記念式典に出席した石破首相は「世界一の防災大国を目指す」と宣言した。異論はない。とは言え、震災の2年後には国土強靭化基本法が成立、2018年には“地震・津波・土砂災害の防止”、“救助・医療の災害対応力の強化”、“食料・電力・通信をはじめとするライフラインの確保”など160項目がリストアップされ、2020年度までの3年間に7兆円を投じて「特に緊急に実施すべき対策を完了または大幅に進捗させる」との計画を公表している。はたしてその成果は検証されたのか。

東日本大震災は社会の在り方や私たち自身の生活価値観を根本から問い直す契機となったはずだ。しかし、この14年間、私たちはどう生きてきたのか。社会の何が変わったのか。昨年、“原発依存度の低減”が国の政策目標から消えた。国土強靭化対策も“能登”には間に合わなかった。2011年3月31日、当社は緊急レポート「東日本大震災における経済復興プロセスと主要産業に与える影響」を発表、“温存されてきた古い体質、棚上げされてきた課題を清算し新たなビジョンをもって日本を再興すること、これをもって復興の道筋とすべき”と提言した。そう、復興は未だ途上にある、ということだ。

今週の“ひらめき”視点 3.9 – 3.13
代表取締役社長 水越 孝