孫,相続
(画像=PIXTA)

自分にもしものことがあれば、かわいい孫にも遺産を相続させたい、そう考える人もいるだろう。しかし残念ながら、孫には自分の遺産を相続する権利はない。その理由と、もし相続させたいのであればどのような方法があるのかを紹介する。また、孫に遺産を相続させるうえでの注意点も詳しく説明しよう。

目次

  1. 基本的に孫に財産を残せない
    1. 孫は「法定相続人」として認定されない
    2. 例外的に孫が法定相続人になるケース
    3. 孫が法定相続人になった場合の財産の配分
  2. 例外的な手法で孫に財産を残す
    1. そもそも孫に財産を残したい事情とは
    2. 孫に財産を遺す遺言書を書いておく
    3. 孫に遺言書で相続させるメリットがあるかを検証すること
    4. 孫に生前贈与をしておく
    5. 孫への生前贈与で注意すること
    6. 孫に不動産を生前贈与するコツは2つ
    7. 孫と養子縁組をする
    8. 財産相続のための孫との養子縁組における注意点
  3. 孫への遺産相続で起き得るトラブル
  4. 孫に遺産を相続させるための最適な手法とは?
    1. 生前贈与
    2. 養子縁組
    3. 遺言書
  5. 孫への遺産相続は子供の数や財産の大きさにより方法は異なる

基本的に孫に財産を残せない

自分の子供の子供、つまり孫にも財産を残したいという気持ちを持つ人も多い。しかし残念ながら自分が死亡したあと、孫には財産を相続する権利はない。

孫は「法定相続人」として認定されない

例えば不慮の事故などにより、自分が突然死亡したとする。すると被相続人である自分の財産は遺産として、配偶者と血族に相続という形で受け継がれる。そして配偶者以外に遺産を相続できる血族は、法律によって定められている。これを「法定相続人」と呼ぶ。

法定相続人には優先順位があり、次の順位で優先的に相続人となる。(国税庁「No.4132相続人の範囲と法定相続分」より)

第1順位 死亡した人の子供
第2順位 死亡した人の直系尊属(父母や祖父母など)
第3順位 死亡した人の兄弟姉妹

順位が上の人がすでに死亡している場合は、最も死亡した人(被相続人)に近い順位の人のみが相続人となる。例えば自分に遺産を相続できる子供がいれば、自分の父母や兄弟姉妹に相続の権利はないということだ。ここで注目したいのが第1順位である。自分の子供が優先的に法定相続人となるが、子供と孫がいる場合には子供が優先されるので、孫は法定相続人とはならない。

例外的に孫が法定相続人になるケース

もし相続が発生する時点で被相続人の子供が死亡していた場合には、そのまま自動的に第2順位へ法定相続人の権利が移るのかというと、そうではない。死亡した子供に子供がいる場合、つまり孫がいればその孫が第1順位の法定相続人になる。これを「代襲相続」という。

例えば自分の子供に妻がいて、2人の間に子供はいない場合で、その子供が自分より先に死亡していたとき、子供の妻には相続の権利は生じない。しかし、自分の子供と妻の間に子供、つまり孫がいれば、妻には相続の権利はないが孫が法定相続人として財産を相続することになる。これは第3順位の兄弟姉妹が死亡していた場合に、その子供である甥や姪も法定相続人になるということだ。

では法定相続人である自分の子供が相続放棄をすると、その子供すなわち孫が代襲相続できるのだろうか。それは認められていない。相続放棄をした自分の子供には相続の権利はないため、その子供つまり孫に受け継がれるべき相続の権利はそもそもない。

孫が法定相続人になった場合の財産の配分

法定相続分(法律上定められた財産の取り分)は、次のように決まっている。

(1) 配偶者と子供が相続人である場合
配偶者が2分の1、残りの2分の1を子供で分配

(2) 配偶者と直系尊属(父母や祖父母など)が相続人である場合
配偶者が3分の2、残りの3分の1を直系尊属で分配

(3) 配偶者と兄弟姉妹が相続人である場合
配偶者が4分の3、残りの4分の1を兄弟姉妹で分配

もし子供が死亡して孫が法定相続人になった場合には、死亡した子供が受け取るはずだった法定相続分を孫が受け取る。

例えば被相続人である自分に子供が3人いて、そのうち1人が死亡、その子供つまり孫が2人いた場合には、孫が受け取る法定相続分は1人あたり次のようになる。ちなみに被相続人の配偶者がいる場合で計算する。

・相続財産×1/2×1/3×1/2

最初の1/2は法定相続人である子供と代襲相続する孫のすべてが受け取る財産の配分だ。それを3人の子供で分けるので本来孫の親(被相続人の子供)が受け取るはずの1/3を掛けて、さらに孫は2人いるので1/2を掛けることになる。つまりこの場合、自分の財産の1/12を孫1人あたりの孫に残せるということだ。あくまでもその孫の親、つまり自分の子供が先に死亡していた場合の話である。

例外的な手法で孫に財産を残す

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どうしても孫に財産を相続させたい場合、どのような手段があるかを考えてみよう。

そもそも孫に財産を残したい事情とは

孫に財産を相続させる方法を考える前に、そもそもなぜ孫に直接財産を残す必要性があるのかを考えてみよう。もちろん親子の人間関係など個人的な事情もあるだろう。しかし、金銭的な理由として考えられるのは、例えば自分の子供が病気で余命があまりないと分かっているような特殊なケースである。

この場合、自分が死亡した後に配偶者とともに子供が財産を相続した時点で、相続した額によっては相続税が発生することがある。そして間もなくその子供が亡くなると、その相続した財産は子供の配偶者とさらにその子供、つまり孫に相続される。するとこの時点でさらに相続税が発生する可能性がある。

つまり2段階で孫に相続された財産は、税金の支払いによってかなり減額すると考えられる。それを避けるため、直接相続させる方法を探したいというケースだ。

さらに別の事情も考えられる。法定相続人と法定相続分というのは、あくまでも法律で定めた基準である。必ずしもそのとおりに相続しなければならないというものではない。そこで自分が死亡したあとに、相続する権利を持つ血族同士で財産の分配に関して話し合われることがある。

この時点で、場合によっては余命があまりない子供への相続分は減らされることも考えられる。ほかの血族から、孫に多額の財産が渡ることに反対する意見が出るかもしれないということだ。そのような事態を回避するために、あらかじめ孫に財産を相続させたいと考えるのも自然な話である。

孫に財産を遺す遺言書を書いておく

間違いなく孫に財産を相続させる方法として、生前に遺言書を書いておくことが挙げられる。

法定相続人とは被相続人が死亡したあとに、法律によって財産を相続する権利が認められている相続人のことだ。しかし被相続人は死亡する前に、財産を誰にどの程度相続させるのかを決めておくことができる。それが遺言書である。孫には基本的に相続する権利がないとわかれば、事前に遺言書を書いて対処すればよい。

孫に遺言書で相続させるメリットがあるかを検証すること

相続財産には相続税が課税される。対象となるのは、相続する額が基礎控除額である「3,000万円+法定相続人の数×600万円」を超える分に対してである。

被相続人の配偶者と被相続人の1親等の血族、そして子の代襲相続以外は相続税が2割増しになるので、被相続人の子供が存命であれば孫もその対象となる。もし2段階での孫への相続による税金を考慮して遺言書を残すのであれば、税金が2割増しでの相続でもメリットがあるのかを考えなければならない。自分の子供から孫への相続による相続税よりも、2割増しの相続税のほうが大きいならば、税金面から考えるとわざわざ遺言書で孫に相続させるメリットはないということだ。

相続税の対象となる課税価格は、相続した金額から基礎控除として、まず3,000万円を差し引く。相続した財産が現金ベースで少なくとも3,000万円に満たなければ、相続税はそもそも発生しない。相続税が発生しないなら、子供に相続させ孫が代襲相続しても相続税は発生しないため、問題はない。

孫に生前贈与をしておく

遺言書を書くほかにも、孫に財産を残す方法はある。それは「生前贈与」だ。これはその名のとおり、自分が死亡する前に孫に財産を渡しておく方法である。早めに孫へ残す財産を確保できるという点では安心感はあるが、注意点もある。

それは贈与税の税率の高さだ。相続税はまず、相続した金額から基礎控除として3,000万円×(600万円×法定相続人の人数)を引いて課税価格を算出する。この課税価格に対して、相続税が計算される。(相続税率は最高で55%(課税価格6億円超))

一方で生前贈与の場合、贈与金額が3,000万円を超えると税率は最高の55%(ただし400万円の控除額を差し引いて課税価格を算出)となる。相続で同じ税率55%となるのは、相続した財産の課税価格が6億円を超える場合であるのに対して、贈与の場合は3,000万円を超えたら55%の税金が課せられる。財産をまとめて孫に生前贈与すると、相続税よりも多くの贈与税が発生する可能性がある点に注意が必要だ。

孫への生前贈与で注意すること

贈与税は「暦年課税方式」という方法を選択すると、1月1日から12月31日までの1年間に贈与でもらった財産価額に対して税金が課せられる。そしてその課税価格は、受け取った財産から「基礎控除額110万円」を引いて算出する。つまり、毎年110万円までの範囲で孫に財産を贈与すれば、贈与税はかからないのだ。まとめて贈与するよりも複数回に分けて毎年贈与すれば節税になる。

もし相続させたい財産が相当額あれば、早い段階から生前贈与をしておく必要があるだろう。また保有する財産が不動産のように現金ではない場合、毎年少しずつ分ける形の生前贈与は難しいかもしれない。あるいは予期せぬ事故などにより、思わぬ早さで自分が死亡してしまった場合にも、この暦年課税方式贈与は継続できない。そのようなリスクを回避する方法として、「相続時精算課税制度」を利用する方法がある。

これは毎年110万円の基礎控除を受ける代わりに、まとめて2,500万円の控除ができる制度です。ただしこの制度を利用して贈与した財産は、被相続人が死亡したあとの相続財産に加算されるという注意点がある。

孫に不動産を生前贈与するコツは2つ

贈与税を計算するうえで、家屋は固定資産税評価額をベースに評価額が決まる。孫に生前贈与で不動産を渡す(名義を書き換える)ときの贈与税を回避する方法が2つある。

まず1つは一度にすべて名義の書き換えをせずに、共有持分を分割する方法だ。相続する不動産の評価額を算出し、毎年の相続分が110万円を超えないように持分を分割して贈与すればよい。これなら、基礎控除の110万円を差し引くと贈与税は発生しない。

ただし難点としては、毎年贈与契約書を作成して持分変動を登記するので、司法書士報酬や登記費用などが発生することだ。

そこでもう1つの、「相続時精算課税制度」を利用する方法を紹介する。これは、毎年110万円の基礎控除を適用する代わりに、2,500万円までが非課税になる制度だ。つまり孫に贈与する不動産の評価額が2,500万円以下であれば、贈与税はかからない。2,500万円を超える場合には、超えた分に対して一律20%の贈与額が発生する。

注意が必要なのは、この相続時精算課税制度を利用すると、贈与した財産は被相続人が死亡した後に贈与された孫が受け取る相続財産と合算されるということだ。つまり2,500万円以下の贈与額に対して贈与税はかからないが、後で相続税の対象となる可能性があるということである。

仮に孫が相続した財産が基礎控除に満たない額であったとしても、贈与した金額を加算したときに基礎控除額を超えると、相続税が発生するのだ。ただし、孫は法定相続人にはならないため、基本的には相続税は発生しないと考えてよい。孫の親、つまり被相続人の子供が死亡して代襲相続しない限りは、有効な方法と言える。

孫と養子縁組をする

通常、孫は法定相続人にはならないが、例外として法定相続人にできる方法がある。孫と養子縁組をすれば、孫には法定相続人として相続の権利が生まれる。しかも孫を自分の養子縁組にすることで、自分自身の財産を相続できるとともに、その孫の親、つまり自分の子供の法定相続人としての権利も残る。ただしこれは普通養子縁組の場合で、実の親との親子関係を断つ特別養子縁組の場合には、実父母からの相続権は失う。

財産相続のための孫との養子縁組における注意点

まず1つ注意が必要なのは、相続税対策として養子縁組は何人とでもできるものではないということだ。養子縁組した者は法定相続人となり、相続税の基礎控除は、法定相続人の数に応じて増加する。つまり養子縁組をする人を増やせば、それだけ相続税を軽減できることになる。そのため、民法上では養子縁組できる数に制限はないが、税制法上では法定相続人の数に含めることができる養子の数は制限されている。

例えば自分に子供がいれば、法定相続人に含めることができる養子は1人のみである。子供がいなければ2人までとなっている。

もう1つの注意点は、養子縁組をした孫に対する相続税額は2割となることだ。ただし孫が代襲相続人となった場合には、この2割加算の対象ではない。孫と普通養子縁組をすれば、孫の親つまり自分の子供が死亡した場合、この養子である孫は代襲相続による権利と養子としての権利の両方が発生する。これを二重資格者と呼びます。二重資格者は2つの相続権利を持つので、それぞれの法定相続分を受け取ることができる。

ただし法定相続人としてはあくまでも1人としてカウントされるため、基礎控除においても相続人の1人としてカウントされることに注意が必要だ。

孫への遺産相続で起き得るトラブル

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本来、法定相続人ではない孫に財産を相続させることにより、どのようなトラブルが生じる可能性があるだろうか。遺産相続にまつわるトラブルで多いのが、自分の持分が少なくなることにより不満を訴える血族が現れるケースだ。

例えば自分に3人の子供がいる場合、配偶者も健在であれば、3人の子供は財産の2分の1を3等分することになる。しかし孫が1人相続人に加わることで、相続できる財産は4分1となってしまう。しかも孫の親は自分が4分の1、そしてその子供(孫)も4分の1の財産を相続するため、世帯としては合計で2分1を相続することになる。これにほかの子供2人が不満を持つといったケースである。

あるいは養子縁組をする場合、孫が複数いれば誰か1人のみという形になり、当然養子縁組をしなかったほかの孫あるいはその親から不満が出るだろう。このような不満が、トラブルの原因となる。当事者同士の話し合いで解決しなければ、調停あるいは裁判で解決することもありうるのだ。

生前贈与する場合にも、ほかの血族から不満は出てくるだろう。もっともこの場合、生前に財産を孫に贈与するため、不満が生じたとしても孫は確実に財産を受け取れる。

孫に遺産を相続させるための最適な手法とは?

孫に財産を相続させるためには、どのような方法で行うのがよいかを考えてみる。

生前贈与

贈与する金額が2,500万円以下であれば、孫に財産を残すのは生前贈与が最適である。これは税金面でのメリットが大きいことが理由だ。基本的に孫には財産を相続する権利がないため、自分が死亡したあとには相続税が発生しない。そこで、相続時精算課税制度を利用することにより、大きな節税効果が生まれる。ただし、ほかの血族から不満の声が出る可能性はある点に注意が必要である。

養子縁組

孫が1人しかいない場合にはよいだろう。また自分の子供同士の関係も良好であれば、理解も得られるかもしれない。さらに生前贈与よりもほかの子供たちからの理解が得られやすいというメリットもある。生前贈与で孫に残す財産を確定すると、その後の被相続人の財産額の変動によってはほかの相続人から不満が生じるかもしれない。

しかし養子縁組で孫が法定相続人になれば、自分が死亡したあとの財産がどの程度であろうとも、分配が被相続人の納得のいく形で決まる。ひとつ懸念されるのは、養子縁組した孫の親が死亡した場合、孫が受け取る財産がかなり増えることだ。これに対し血族からは、反対の声があがることもある。

遺言書

実は最もトラブルを回避できるのが、遺言書で孫に財産を相続させる方法だ。自分に子供が複数いて、さらに孫も複数人いるとなれば、養子縁組での相続は難しい。しかし生前贈与も、トラブルが避けられないだろう。それは生前贈与した後に、自分の財産が目減りするからだ。

そこでトラブルを回避するためには、相続する財産が確定してから分配する必要がある。遺言書を作成しておけば、事前に不満が生じないような配分で決めておくことができる。ただし民法第975条により、「遺言は、二人以上の者が同一の証書で遺言をすることができない」となっている。子供たちの意見を聞きながら配分を考えて作成、といったことはできないので注意が必要である。

孫への遺産相続は子供の数や財産の大きさにより方法は異なる

孫に遺産を相続させる方法はいくつかある。しかし、税金面や相続人同士のトラブルといった面で、注意すべき点も多い。子供や孫の人数、相続する財産の額に応じて、適切に孫に相続させる方法を選ぶことが重要である。

文・THE OWNER編集部

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