2023年度のバース予約/受付システムの導入拠点数ベースの市場規模は前年度比167%の2,500拠点
~ドライバーの負荷軽減・待機時間の解消を目的に、導入が急激に進む~
株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内の倉庫内物流テック市場を調査し、分野別の市場動向、参入企業の動向、将来展望を明らかにした。ここではバース予約/受付システムについて分析結果を公表する。
バース予約/受付システムの市場規模の推移
倉庫内物流におけるデジタル化のフェーズ
1.市場概況
社会インフラを支える物流業界は、労働集約的産業であるが故に人手不足がより深刻であり、ドライバーの時間外労働の上限規制、カーボンニュートラル(脱炭素化)への対応など、様々な取り組みが求められている。このような状況下において、倉庫内ではより円滑な倉庫管理、自動化機器の制御、倉庫内作業全体の効率化などを行うべく、IT技術を用いた物流テック(システム)の導入に注目が集まっている。物流テックの導入には作業効率を高め、省人化に寄与するといったメリットだけではなく、今まで紙などアナログ作業で管理していたものをデジタル化することにより、物流をデータ化できるといった側面がある。その一方で、開発・導入コストの高さや、システム導入時のIT人材不足といった課題から、物流テックを導入する事業者は、投資力があり自社やグループ企業に専門のIT部門やIT人材を抱えている大手事業者に限られていた。一方で近年は、標準的なソフトウェアパッケージを手頃な価格で導入できるSaaS型システムの普及から中堅事業者にも導入が進みつつある。
本調査における倉庫内物流テック市場のうち、ここでは、トラックの入出庫を管理するバース予約/受付システム市場について取り上げる。
2023年度のバース予約/受付システムの導入拠点数ベースの市場規模は、前年度比167%の2,500拠点と推計した。ドライバーの負荷軽減や、待機時間の解消を目的とした導入が増加したほか、既にシステムを導入している運送事業者が他拠点に同システムの導入を拡大するケースも散見された。さらに、システムを入れることで現状把握のために可視化を求める荷主企業の新規導入も好調に推移し、導入拠点数は拡大する結果となった。2024年4月以降も好調さを継続していることから、2025年度までの市場拡大を予測する。
2.将来展望
倉庫内物流テックの今後の進展について、矢野経済研究所の独自の基準でデジタル化のフェーズ(段階)を5段階に分類してまとめた。(図表:倉庫内物流におけるデジタル化のフェーズを参照)
アナログ管理の現場を「ステップ0」、紙からITシステムへの移行によるデジタル化を始めた現場を「ステップ1」、システムやロボットを導入し、現状の可視化及び作業の自動化・効率化が行われている現場を「ステップ2」、自動化に加え、部分的に意思決定の判断をAIなどシステムが行うようになった現場を「ステップ3」、倉庫内以外の外部ITシステムとも連携し、全体最適を自律的に行えるようになった現場を「ステップ4」とした。
倉庫内作業の現在のフェースは概してデジタル化が実装されたところである。大手物流事業者では、省人化システムやロボットの導入を行い、現状の可視化及び作業の自動化・効率化を行っている。得られたデータをもとに、「ステップ3:作業・判断の自律化」に向けて取り組みはじめている段階である。今後はさらに自動化を進めると共に、収集したデータをもとに、AIなどITシステムを活用し物流全体の最適化を行う、データドリブンな物流を進めていくことが想定される。
中堅事業者は、「ステップ2:現状の可視化/作業の自動化・効率化」に取り組み始めたフェーズにある。今後システム・ロボットの導入が進む工程が増えることで、可視化されるデータも増えていくと考える。
そして最も多くの数を占める中小事業者では、まだ「ステップ1:デジタル化」の段階であり、アナログ作業からデジタル管理への移行を進めている最中である。データを一元管理することで新たな付加価値を生み出し、効率的な運用や意思決定を行う物流DX(デジタルトランスフォーメーション)を進めていくためには、倉庫現場の標準化や、中小事業者におけるデジタル化の推進が必要である。
人手不足の問題は倉庫内作業者も同様であり、今後確実に減少していく。これを踏まえ、現状よりも少ない人数で滞りなく業務遂行するためには新しい設計を考えていく必要があると考える。省人化のためには、ITシステムやロボットの活用は必須である。早くから将来を見据え、倉庫に最新のIT技術を導入するだけでなく、それを使いこなせるIT人材を自社で育成することも重要である。
調査要綱
1.調査期間: 2024年5月~8月 2.調査対象: 物流システム及びサービス提供事業者 3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談取材(オンライン含む)、アンケート調査ならびに文献調査併用 |
<倉庫内物流テック市場とは> 物流テックとは、クラウドや音声認識、AI、RFID(radio frequency identifier)など最新のIT技術を用いた物流に関するシステム・サービス分野を指す。本調査における倉庫内物流テック市場とは、倉庫内に関わるソフトウェア市場、倉庫管理システム(WMS:Warehouse Management System)、倉庫実行システム(WES:Warehouse Execution System)、バース予約/受付システム、倉庫内作業の可視化/分析システム等を対象とする。ここではバース予約/受付システムについて分析結果を公表する。なお、バース予約/受付システムとは、物流センターに出入りするトラックが、利用するバースをあらかじめ予約することのできるシステムを指し、受付システムは、物流センターに到着したトラックの受付を行うシステムを指す。 |
<市場に含まれる商品・サービス> WMS、WES、バース予約/受付システム、倉庫内作業の可視化/分析システム、音声認識システム、AI、RFID |
出典資料について
資料名 | 2024年版 物流テック市場の動向と将来展望:倉庫内編 |
発刊日 | 2024年08月30日 |
体裁 | A4 234ページ |
価格(税込) | 198,000円 (本体価格 180,000円) |
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