2024年2月に日本M&Aセンターグループ内に「株式会社日本DX人材センター」を設立した藤田 舞さんが、全社員がDX推進を実現するようになるまでのプロセスを解説した書籍「全社員DX化計画」を執筆しました。藤田さんに執筆の裏話や会社設立への想いを聞きました。

Salesforce活用推進をして気づいたこと

2023年の9 月ぐらいから約半年かけて執筆し、ようやく完成しました。こんなに長い文章を書く経験はほとんどなくて、正直とても大変でした(笑)。2024年2月に日本DX人材センターを設立したのですが、書籍を執筆していた頃は、新会社設立の準備も同時進行で行っており、主に日中の空いた時間や休日を使って執筆していました。

「DX」と聞くと、最先端の技術やデジタルツールを使うと勘違いをしている人が多いように感じます。重要なのは最先端の技術ではなく、導入後の「推進」です。 私はこれまで10 年間Salesforceの活用推進をしてきましたが、Salesforceの機能を学ぶ場はあっても、「推進」について学ぶ場がないと感じていました。 プロジェクトチームを作るといったフレームワークはたくさんあります。でも、実行してもことごとく上手くいきませんでした。プロジェクトチームを作ること自体は手段で、その本質を私が理解していなかったからです。 ツールを導入することがDXなのではなく、その後どのように活用していくかが重要で、その部分に焦点を当てたのが本書です。

多くの企業でDXがなかなか進まないワケ

一般的にはIT部門がシステムを導入して、IT部門だけで頑張る会社が多いと思いますが、それだとひとり相撲になりがちで、システムの活用はなかなか進みません。いかに全社員を巻き込めるかが肝で、システムを作った後に全員に活用させるためのステップが重要です。しかしシステムを作る側は「作る」ところに主眼を置いているので、どのように推進していくかという視点は抜け落ちてしまいがちです。

本書では導入から活用までの 5 つのステップについて説明しています。1つ目は理念を全員に伝えていくこと。このシステムを導入する目的はなにか、このデジタルツールを使った後にどういう未来を期待するのかなどの理念を伝え続け、全員を同じ方向に向かわせることが 1 番大事です。

2 つ目は習慣化。「システムに毎日情報を入力する」と認識していても、今日から自分の行動を変え、毎日継続できるかというとなかなかできない。継続できるようにするための施策や状況、ルール作りが必要となります。

3 つ目はデジタルアダプション。これは小さな改善を続けて使いやすさを求めていくことです。作って終わりではなく、現場の意見をしっかりと拾い上げて、それを実装していくことの大切さを伝えています。そうすることにより、使いやすいシステムになるほか、システムを使用する人の当事者意識を醸成していくことも可能となります。

4 つ目が活用風土の醸成。活用した方がいいという空気感作りです。当社では、社内での成功事例を全社員に共有しました。ポイントは成功事例が出るまで待つわけではなく、こちらから成功事例を作りに行くことで、ここにもコツがあります。

最後はツールの民主化。全員が使えるようになってこそ、システムは真価を発揮します。システムを使う人と作る人が近づけば近づくほど、いいシステムが出来上がりますが、その方法を当社の実例を用いて説明しています。全社員がシステムを使いこなせるようになることで、レバレッジのかかり方が大きく変わります。どの会社においても、「民主化」することは価値の大きなことだと思います。