合弁会社
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「昨年までの当たり前が今年は通用しない」ほどの市場の激しい変化は、一企業の努力だけではどうにもならない。今後AIや5Gなどの新技術が飛躍的に発展すれば、インプットからアウトプットまでの速度をどれだけ改善したとしても、それ以上のスピードでマーケットにイノベーションが起こるだろう。

そうなれば、今までのやり方で競争優位性を維持することは難しくなる。「今までのやり方は、アップデートされることを前提とした最善策である」という認識がなければ、いつ、どこで、何が起こるかわからない市場の不確実性に対応することはできない。

この問題を解決する手段の1つに、「合弁会社の設立」がある。複数の会社が経営資源を融合させることで生まれるシナジー効果は事業領域を拡大するだけでなく、市場の構造転換に対する適応力の向上につながる。この記事では、合弁会社のメリット・デメリットから設立方法までを詳しく解説していく。

目次

  1. 合弁会社(ジョイント・ベンチャー)とは?
  2. 合弁会社のメリット
  3. 合弁会社のデメリット
  4. 合弁会社の設立する4ステップ
    1. 【ステップ1】パートナーの選定
    2. 【ステップ2】基本合意の締結
    3. 【ステップ3】各種条件の協議
    4. 【ステップ4】合弁契約の締結
  5. 会社間のシナジー効果を考える
  6. 監修者紹介

合弁会社(ジョイント・ベンチャー)とは?

合弁会社は、「ジョイント・ベンチャー」とも呼ばれる。日本の会社法には、「合弁会社(ジョイント・ベンチャー)」という概念は存在しない。その形態は、以下の2つに大別される。

①複数の企業がパートナーシップを結び、共同出資によって新しい会社を設立する。
②既存企業の株式を買収して、共同経営を行う。

合弁会社の設立は、資金だけでなく、技術やノウハウ、人材などの経営資源を共有することで新規市場の開拓を目指す合理的な経営戦略の1つである。事業規模の拡大や経営の多角化を図る上でも、事業性質上相性の良いパートナーがいれば、大きな利益を生み出す可能性がある。

合弁会社のメリット

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ここでは、合弁会社のメリットを3点に絞って紹介する。

1つ目は、新規事業に伴うさまざまなリスクを分散できることだ。会社の事業規模を拡大するためには、新規マーケットを創出する必要がある。しかしながら、新規事業には失敗がつきものだ。近年、市場の流動性は以下の「VUCA」で表現され、イノベーション・コストの費用対効果を算定することが極めて難しくなっている。

〈市場の流動性を表すVUCA〉
Volatility(変動性:つねに変化する)
Uncertainty(不確実性:いつ、どこで、何が起こるかわからない)
Complexity(複雑性:あらゆるものが関わり合っている)
Ambiguity(曖昧性:全体像がはっきりしない)

そこで、複数の企業が資金を負担して合同会社を設立すれば、投資コストやリスクを分散できるので、新規事業に挑戦するハードルが下がる。

2つ目は、自社が持っていない経営資源を速やかに補完できることだ。企業が新規事業を立ち上げるために、資金や人材、技術、ノウハウなどのリソースをゼロから調達すると、それ相応のコストがかかる。しかし他社と連携すれば、不足している経営資源を短期間で補い合うことができるため、事業を迅速に開始することができる。

3つ目は、共同出資という性質上、パートナーシップの解消が起こりにくいことだ。双方で資金を持ち寄ってリスクを共有する以上、協力関係を破綻させるような意思決定はしにくい。合弁会社を経営する過程で生じるコミュニケーションの失敗は、事業を成功に導くために克服すべき「共通の課題」となる。

この前提がなければ、合弁会社が長期的に成功することは難しいだろう。一般的な業務連携と比較して、このような楔が打たれることが大きなメリットと言えるだろう。

合弁会社のデメリット

次に、合弁会社のデメリットとして以下の3点について言及しておきたい。

1つ目は、経営資源の流出が起こる可能性があることだ。合弁会社の設立に伴って、複数の会社と人材や技術、ノウハウを共有すれば、当然ながら知的財産などの流出・盗用のリスクが生まれる。これを防止するには、秘密保持契約などの法的なリスク・マネジメントや、連携体制における知的財産の安全管理体制の整備が不可欠だ。

2つ目は、パートナーが社会的信用を失うと、自社にも悪影響が及ぶことだ。最悪の場合は、株価が暴落することもあるだろう。協力関係にある以上、相手の行動によってネガティブな影響を受けることは避けられないことと考えるべきだ。合弁会社のパートナーを選定する際は、相手企業の実態調査を念入りに行い、信用が失墜する危険性はないか、しっかり確認しておかなければならない。

3つ目は、意思決定のスピードが遅くなるリスクがあることだ。複数の会社で事業を運営するということは、利害関係が複雑化することを意味する。

それぞれの会社には、経営上異なる優先順位がある。合弁会社の意思決定が自社の経営や業績にどのような影響を及ぼすのか、経営陣は吟味せざるを得ない。調整やコミュニケーションが増え、意思決定に手間と時間がかかることになる。

合弁会社の設立する4ステップ

子会社化
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合弁会社(ジョイント・ベンチャー)を設立するには、具体的にどのようなステップを踏めばいいのだろうか。ここでは、合同会社(ジョイント・ベンチャー)の設立方法を4つのステップに分けて説明する。

【ステップ1】パートナーの選定

ステップ1は、パートナーの選定である。言うまでもなく、「どの会社と組んでビジネスを行うのか」は、合弁会社の成否を分かつ極めて重要なポイントになる。パートナーとなる企業が利益の独占や無責任な途中離脱などをした場合は、自社の経営に悪影響を及ぼすことになるので注意しなければならない。

【ステップ2】基本合意の締結

ステップ2は、基本合意の締結である。基本合意とは、合弁会社の設立および運営に関する基本方針を定めることをいう。簡単に言えば、「あなたの企業と合弁事業を行いますよ」という意思決定の確認だ。基本合意が締結されるまでは、外部情報の分析や担当者同士の打ち合わせが行われる。

【ステップ3】各種条件の協議

ステップ3は、各種条件の協議である。この段階では、合同事業の実施に向けて、権限や利益などに関する条件を設定するための打ち合わせを行う。ここでは、その項目について言及しておく。

①主体とその法人形態はどうするか?
まず、合弁事業を行う主体を決めなければならない。

〈主な選択肢〉
・新しく会社を設立する
・双方どちらかの株式の一部を譲渡して共同経営を行う

②出資比率はどうするか?
次に、合弁事業に対する出資比率を決める。これによって配当などの利益が変動するため、新規事業に対して許容できる負担額を考慮した、適切かつ公平な割合を設定する必要がある。

〈主な選択肢〉
・50:50
・50:50以外(自社の割合が多い場合)
・50:50以外(自社の割合が少ない場合)

出資比率は、「50:50」がベストとは限らない。「どちらがリーダーシップを取るべきか(=どちらが執行責任を持つべきか)」といった運営体制の在り方は事業計画に基づくものであり、それに応じたフェアな出資比率を設定することが重要だ。

③撤退条件はどうするか?
次に、合弁事業の徹底条件を決める。当然ながら新規事業には失敗の可能性があり、撤退のタイミングを逃して損失を膨らませれば、双方の業績を悪化させることになる。また、両社の対立が解消できない場合は、事業継続は困難として解散することもある。これを「デッドロック」と呼ぶ。その他、以下のような撤退条件が設定されるケースが多い。

・一定期間内に業績が上がらない場合
・一定金額以上の損失が発生した場合
・企業買収などによって経営権が移転した場合
・合弁契約に違反が生じた場合など

①から③以外にも、事業目的や役員体制、紛争処理方法など事前に協議すべき事柄があるため、これらに係る業務コストが大きくなることが多い。

【ステップ4】合弁契約の締結

ステップ4は、合弁契約の締結である。ステップ3の協議内容は「合弁契約(ジョイント・ベンチャー契約)」に反映されて、法的な拘束力を持つことになる。この段階で、合弁会社の設立が確定する。

会社間のシナジー効果を考える

合弁会社を成功させるためには、連携する企業間のシナジー効果を適切に評価しておく必要がある。弱みを補完して、強みを活かし合うことで、新規事業を創出しやすくなるからだ。

ただし、企業という複雑な組織が連携する以上、コミュニケーションの軋轢が生まれることを考慮しておかなければならない。一定のコストを負担して利害関係を共有したとしても、情報が適切に共有されなければ、些細な問題から関係が悪化するおそれがある。マネジメント・コストが高い分、担当者の手腕が問われるだろう。

株主に対する説明責任も含めて、合弁会社の設立においては慎重な判断と大胆なアイデアが必要になる。事業規模の拡大と経営の多角化を図る上で、複数の企業が連携する合弁会社の仕組みは、うまく活用すれば大規模な事業を運営できるような魅力あるものになり得る。

双方で合弁事業の目的を明確にした上で、形式的な意見交換だけではなく社外交流も含めたフィードバックの機会を作ることが、日本社会の実態に即したコミュニケーションとして重要と言えるだろう。

文・THE OWNER編集部

監修者紹介

斎藤弘樹
株式会社日本M&Aセンター 地域金融1部 部長
斎藤弘樹 (さいとう・ひろき)
一橋大学卒業後、外資系金融機関入社。 2012年日本M&Aセンター入社以降、地域金融機関と数多くのM&Aに携わり、後継者に悩んでいる、または更なる成長を志向する経営者に、M&Aという手段で会社の継続と発展を支援している。
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