能登半島地震から間もなく4週間、不通となっていたJR七尾線の羽咋ー七尾間が復旧、七尾と金沢が再びレールでつながった。能登空港の応急復旧も完了、ANAの羽田ー能登便も27日から運航を再開する。中学生の集団避難も始まった。3万人規模の2次避難の体制も整った。19日には孤立集落の「実質的な解消」を県が宣言、地域差は残るもののインフラ関連の復旧見通しも漸次発表されつつある。
とは言え、経済へのダメージは甚大だ。本来、この時期は北陸新幹線の金沢-敦賀間の開業を控え、北陸全体が誘客キャンペーンで盛り上がっていたはずだ。美しい景観、豊かな食材、独自の伝統文化が残る能登半島は北陸に欠かせない観光コンテンツであり、大きな経済効果が見込まれていた。地震は一瞬にしてその期待を奪った。被害が軽微であった金沢市内の賑わいも失われた。国内観測史上最大の “海底隆起” に見舞われた漁業の深刻さは言うまでない。
24日、政府は北陸地方の観光需要を喚起すべく “北陸応援割” を導入すると発表した。中小企業に対する政府支援も固まりつつある。応急仮設住宅の着工、賃貸型応急住宅の確保も始まっている。一方、2次避難の遅れも報告されている。被災地の高齢化率は全国平均を大きく上回る。高齢者にとって住み慣れた集落から離れ、新しい環境へ移ることに対する不安は大きい。そもそも高齢化と人口減少が進んでいる被災地をどう再興するのか。復旧ではなく復興への道筋を示す必要がある。
2011年、震災から20日後の3月31日、当社は東日本大震災による復興需要の総額を4年間で12兆2000億円(原発事故関連の影響を除く)と発表した※。同年7月に策定された政府の復興計画は5年間で19兆円、10年間で総額23兆円を見込んだ。今後、能登半島でも大規模な復興需要が生まれる。まずは安全の確保とインフラの回復が急がれる。問題はその先だ。当社は東北の復興について「温存されてきた古い体質、先送りされてきた課題を清算し、新たな国土、産業、社会の在り方を構想すべき」と提言した。マイナスからスタートする能登半島復興のゴールが “過疎の再生” であってはならないし、被災者が置き去りにされた復興では本末転倒だ。地域とともに、地域から発想し、地域に根付いた復興策を立ち上げていただきたい。
今週の“ひらめき”視点 1.21 – 1.25
代表取締役社長 水越 孝