設立40年を機に「第二の創業」にアクセル 小ロット・多品種対応の塗装技術で新規取引先を開拓 ウイルビック(群馬県)

目次

  1. 数々の事業変遷を経て板金、塗装に事業集約 本社敷地に塗装工場を新設
  2. 「一社依存」を脱却し、新規取引先の開拓に注力 紹介を中心に増やす塗装事業は粉体から溶剤にシフト 木材塗装に向け「第2工場」を新設
  3. 「生まれ変わった会社」を社員の意識変革で更なる一伸びへ
  4. 重点課題は新規取引先拡大と技術の伝承、社員の底上げ
  5. ホームページのリニューアルで取引の拡大と採用面の効果を実感 販売管理もクラウド型システムで一新
  6. 社名に込めた「しなやかに大きく」の思いに挑む
中小企業応援サイト 編集部
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株式会社ウイルビックは、群馬県伊勢崎市で金属製品への焼付塗装を主体に事業を展開している、2024年2月に設立40年を迎える企業だ。小ロット・多品種に対応し、顧客の求めに応じた小回りの利く技術・品質の提供を売りに、新規取引先の開拓につなげている。2022年9月には木材塗装向けの「第2工場」を設け、新たな領域の拡大に動き出したほか、設立40年を機に「会社の未来像」を全社員に発信し、ビジョンを共有することでさらなる飛躍に向けた一歩を踏み出そうとしている。(TOP写真:ウイルビックの本社に隣接する「第1工場」で塗料の吹き付け作業に当たる社員。小ロット・多品種に対応した技術が強みだ(群馬県伊勢崎市))

数々の事業変遷を経て板金、塗装に事業集約 本社敷地に塗装工場を新設

設立40年を機に「第二の創業」にアクセル 小ロット・多品種対応の塗装技術で新規取引先を開拓 ウイルビック(群馬県)
塗装の状態を点検する社員

株式会社ウイルビックは、1984年2月に設立した株式会社マサル工営を前身としている。ウイルビックの栁田陽平代表取締役の父親、栁田保夫氏が、電気機器メーカーで営業職を担当していた経験を生かし、独立して架台や鋼構造物、各種電気設備機器の製作・販売のほか、退職先から受けた板金加工を中心に事業を立ち上げた。

その後、富士重工業(現SUBARU)や澤藤電機向けの機械の修理、据え付け工事や配管設備工事などに事業を広げ、2007年11月には現在地に本社を移転し、社名をウイルビックに変更した。この間、事業にも紆余屈折があったほか、保夫氏が亡くなり、2010年に陽平氏が代表取締役に就任した。

さらに事業も大きな転機を迎える。電気機器メーカーから受けていた板金加工は板金から塗装までの手配はすべてウイルビックに任されており、塗装に関しては4社の協力会社に依頼し、ウイルビックが検品した上で納入してきた。ただ、協力会社が高齢化で廃業したり、納期や品質に問題が生じるようになった。このため、塗装までを含め自社で一貫対応することを決めた。同時に、事業全般を見直し、板金部門と塗装部門に集約することとし、2012年に本社所在地への塗装工場設置に踏み切った。

「一社依存」を脱却し、新規取引先の開拓に注力 紹介を中心に増やす塗装事業は粉体から溶剤にシフト 木材塗装に向け「第2工場」を新設

設立40年を機に「第二の創業」にアクセル 小ロット・多品種対応の塗装技術で新規取引先を開拓 ウイルビック(群馬県)
塗料を吹き付けられた後、乾燥炉で焼き付けられた金属部品。ウイルビックの第1工場

当時は電気機器メーカーからの受注がメインで、しばらくその状況が続いた。しかし、栁田社長は「一社依存が強いままでは発展性はない」と判断、2020年頃から新規取引先の開拓に取り組んできた。その手法は取引先からの紹介、そして更なる紹介で取引先を広げ、「今は順調に新規取引先を増やしている」という。また、展示会にも積極的に出展し、新規開拓につなげている。最近は、自社ホームページを通じての問い合わせも増えているという。

一方、塗装事業自体も新規取引先の拡大と併せて大きく変化した。塗装事業のスタート時は電気機器メーカーとの取引の関係で粉体塗装を主体としてきた。粉体塗装は粉状の塗料を静電気で付着させ、焼き付けて硬化させる塗装方法で、大量の同じ部材に塗装するのに適している。半面、小ロットでの調色には難点がある。

塗装業を行う同業他社の多くは溶剤塗装から、粉体塗装に切り替えるケースが一般的とされる。しかし、ウイルビックの場合はその逆だった。新規取引先が増え、小ロット・多品種の受注が増えたことから、小ロットでの調色が難しい粉体塗装ではこうしたニーズに応えられず、2020年頃から溶剤塗装に本格的に乗り出し、現在は溶剤塗装が粉体塗装を逆転し、主流となっている。

実際、塗装対象は半導体製造装置のカバーや生産ラインの架台といった各種の生産財から自動車部品、配管、建材など多岐にわたり、大きさもさまざまで、最近はスポーツジムで使われるストレッチマシンの塗装も扱っているという。

また、木材塗装についても新たな取り組みを加速している。貨物トラックの荷台向けで底板の塗装を請け負ったのを機に、2022年9月に木材塗装を主体とした「第2工場」を新たに伊勢崎市境上渕名に設け、稼働を始めた。発注元の木材加工会社が加工した板材を塗装し、納入しており、大手トラックメーカーに採用されているとみられる。

「生まれ変わった会社」を社員の意識変革で更なる一伸びへ

設立40年を機に「第二の創業」にアクセル 小ロット・多品種対応の塗装技術で新規取引先を開拓 ウイルビック(群馬県)
本社の事務所に掲げられた「未来の会社象」の額

新規取引先の開拓に始まって、溶剤塗装の本格化、さらに「第2工場」の設置と、ウイルビックのここ数年の変貌ぶりはさながら「第二の創業」への取り組みとも思わせる。この点について、栁田社長は「会社が生まれ変わっているという感じで、ここからまたさらに一伸びしていこうといったところだ」と気を引き締める。

その意欲は、社員の意識変革への取り組みにも表れている。ウイルビックは10月期決算で、新しい期を迎えた2023年11月、社員向けに経営方針説明会を開いた。2024年2月に創設40年を迎えるのを機に、「社長になってから初めて全社員にしっかりビジョンを共有してもらう」(栁田社長)狙いで、「未来の会社象」として掲げた「イイ人が集まるイイ会社」の意味について説明した。同時に、新しい期を迎えるごとに切り替えるスローガンを「Take Action! 一歩先へ‼」とした。

新スローガンは「自ら行動を起こせ!行動こそが真実! 一歩先へ踏み出せ!」とも記し、社員に「指示待ち人間にならず、自ら行動を考えて仕事をする」(栁田社長)ことを促している。まさに、「第二の創業」という転機に向けた意欲をうかがわせる。

重点課題は新規取引先拡大と技術の伝承、社員の底上げ

設立40年を機に「第二の創業」にアクセル 小ロット・多品種対応の塗装技術で新規取引先を開拓 ウイルビック(群馬県)
ウイルビックの栁田社長は現在取り組んでいる経営課題に3点を挙げる

ウイルビックは現在、新規取引先の開拓に加えて、熟練者が培ってきた技術の若手社員への継承と、社員個々の能力の底上げの3点を重点的に取り組んでいる。とりわけ技術の継承は喫緊の課題で、毎月1回、20代から60代までいる社員を集めて勉強会を実施している。

また、社員の底上げについては、毎月コンサルタントによる組織改革と社員の意識変革に取り組んでいる。特に次世代リーダー育成は必至で、新規取引先が増えた結果、栁田社長が抱える役回りも限界があり、生産管理や品質管理などを補完できる幹部社員の意識変革を図っている。このほか、2023年夏から毎週1回、全社員による改善会議を実施しており、業務の改善提案や不具合の報告などを通じて社員間のコミュニケーションを密にし、社内に一体感を醸成しようとしている。

ホームページのリニューアルで取引の拡大と採用面の効果を実感 販売管理もクラウド型システムで一新

設立40年を機に「第二の創業」にアクセル 小ロット・多品種対応の塗装技術で新規取引先を開拓 ウイルビック(群馬県)
群馬県伊勢崎市にあるウイルビックの本社屋

一方、重点的に取り組んできた新規取引先の開拓には自社ホームページが一定の効果を出してきている。ウイルビックがホームページを開設したのは2017年3月で、政府のIT(情報技術)導入補助金を活用して導入を決めた。「当時はホームページについてはそれほど重きを置いていなかった。ただ、補助金もあり、これを機に新規取引先の発掘や自社のPRに向けて導入してみようと決めた」と栁田社長は正直に振り返る。

実際、開設すると、「新規の問い合わせが来るようになり、採用もホームページを見て電話をしてきたというケースが最近は多くなっている」とその効果を実感している。その意味でも、「新規取引先や既存の取引先はホームページをしっかり見ている。問い合わせの内容からはそれははっきりしている。そのためにもホームページはきっちり作り込んでいかないといけないと思う」と語る。このため、2022年10月にはホームページをリニューアルし、ワイド画面やスマートフォン対応などにより情報を拡充して発信することで新規取引先開拓の重要ツールとして活用している。

また、業務管理のデジタル化を加速するため、クラウド型の販売管理システムの導入を検討し、現在、トライアル中だ。導入の目的の一つは、インボイス制度と改正電子帳簿保存法への対応にある。ただ、それよりも重視したのはクラウド型への切り替えにあった。

既存のシステムも既にインボイス制度と改正電子帳簿保存法への対応は済んでいる。ただ、クラウド型でなく、見積書をはじめとした販売管理全般の情報は、栁田社長が使う特定の1台のパソコンでしか把握できなかった。そこで、どのパソコンでも情報を共有できるクラウド型システムへの切り替えを検討することとした。

それは現在、強化している次世代リーダーの育成の取り組みと関連性がある。新規取引先が増え、栁田社長が取引先との対応に追われ不在にすることも多くなり、その間仕事が回らないとなれば事業は成り立たない。その点、クラウド型で情報を共有すれば幹部社員が適切に指示できるようになり、幹部社員自身も経営感覚を身につけるようになるというわけだ。

社名に込めた「しなやかに大きく」の思いに挑む

現社名のウイルビック(Willbic)は、先代の保夫氏と栁田社長が名付けた。「未来を表す決意」のWILLと姓の栁田にかけた「栁」の英語表記WILLOWは「しなやかや強さのイメージ」を、さらに「中身を含む大きさ」を表わすBICを組み合わせた造語で、そこには「未来に向かって、しなやかに大きくなっていきたい」との思いを込めている。

現在のウイルビックは「第二の創業」を機に、まさに栁田親子が社名に願いを込めて描いた未来像に向けて強くアクセルを踏む姿が重なってくる。

企業概要

会社名株式会社ウイルビック
住所群馬県伊勢崎市境伊与久1935-2
HPhttps://www.willbic.co.jp/
電話0270-76-7492
設立1984年2月
従業員数8人
事業内容塗装事業、板金事業