矢野経済研究所
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今日、11月30日、国連の気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)がスタートする。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は21世紀末時点における世界の平均気温を産業革命前比+1.5℃に抑えるためには「2035年時点で対2019年比60%の削減が必要」と指摘しており、これを公式な目標数値として成果に書き込めるかが会議の焦点である。“60%” という数字は5月の広島サミットでも確認されており、G7議長国である日本の覚悟も問われる。

今回の会議ではパリ協定で定めた「5年ごとに削減目標の達成度を検証し、それを踏まえて目標を再設定する」ルールがはじめて適用される。会議前に公表された検証結果によると「現状では “1.5℃目標” の達成は不可能」とのことであり、上記 “60%” の意味もここにある。加えて、議長国が合意を目指す “2030年までに再生可能エネルギーの導入量を3倍に” とする提案やEUが重視する “化石燃料の削減・廃止” を巡る議論の行方も注目される。

COP28を控えた11月20日、国際的な非政府組織(NGO)オックスファムが「気候変動が世界の格差を助長している」とのレポートを発表、「2019年、世界の超富裕層1%が排出する温暖化ガスは世界の排出量の16%に相当、自動車、道路輸送の排出量を上回るとともに100万基の風力タービンの効果を相殺する。影響は洪水、海面上昇、砂漠化、食料危機など多岐にわたり、被害は途上国に集中する。一方、1%の超富裕層の所得に60%の税を課すことで英国の排出量を上回る削減が実現でき、加えて化石燃料から再生可能エネルギーへの移行費用として6.4兆ドルが調達できる」という。

COPでは常に先進国と途上国が対立する。オックスファムの言葉を借りれば、豊かな国は “disproportionately(不釣り合い)” なほどの責任を有している、ということだ。一方、この問題において常に “途上国” として振る舞ってきた中国が「再生可能エネルギー3倍案」については米国とともに支持を表明するなど個々の主題ごとに各国の利害は錯綜する。中東産油国の反発は当然予想される。ただ、今回の議長国はまさに中東の産油国、アラブ首長国連邦(UAE)で、議長はアブダビ国営石油会社のCEOを兼務するジャベル産業・先端技術相である。それゆえの懸念もある。しかし、それゆえにこそ大胆でリアルな調整力を示していただきたい。

今週の“ひらめき”視点 11.19 – 11.30
代表取締役社長 水越 孝