こんにちは。(株)日本М&Aセンター食品業界支援室の高橋です 当コラムは日本М&Aセンターの食品専門チームのメンバーが業界の最新情報を執筆しております。 今回は、食品卸売業界における変化とこれから求められることついて執筆させて頂きます。

食品卸業界で起こっている変化

日本の流通ビジネスは、卸売業という存在なしには語ることはできないものかと思います。

卸売ビジネスの仕組みは江戸時代から存在し、呉服や米などの生活物資は、大阪など中央都市の問屋→消費地の問屋→小売商人という、商品流通の仕組みが既に出来上がっており、アメリカや主要先進国に比べて早い段階で、生産者,卸,小売業という、垂直型のサプライチェーンが構築されていました。

卸売業が存在する理由としては

  • 生産者と小売業者が多数で分散的であればあるほど、卸売業者の媒介による取引効率化の影響が大きい。
  • 在庫を小売業者が分散的に保有するよりも、卸が集中的に保有したほうが少ない在庫で済む。

上記2点が大きな理由であり、中小企業が多い日本にとっては必要不可欠な存在として見られていました。

現代食品卸業界の課題

※上場企業各社の決算発表をもとに、株式会社日本M&Aセンターにて作成 ※CAGR: 年平均成長率のことで複数年の成長率から、1年あたりの幾何平均を求めたもの。

  1. 小売業を中心に業界再編が加速しプレイヤー数が減少
  2. 小売業のPB品強化などによる介在余地の減少
  3. 人口減少などに伴う売上の伸び率の鈍化
  4. 人手不足に伴う物流費・人件費の高騰
  5. 卸売業と小売業のパワーバランスが逆転による収益性の悪化

上記など様々な逆風の中で、上場企業であってもコロナ前で売上年平均成長率3%未満、営業利益率1.5%未満が相場と非常に苦しい戦いを強いられています。

###インバウンド等の後押し

その一方で、近年の食品卸市場の推移は経済産業省の商業動態統計によると、食品卸業の市場はバブル崩壊の翌年以降から減少傾向にあったが、直近はインバウンド等が後押しとなり、2020年にはコロナショックによる内食需要の増加に伴いリーマンショック前の市場規模の水準となりました。

※経済産業省:商業動態統計より株式会社日本M&Aセンターが作成 市場が回復傾向にあるにも関わらず、前述させて頂いた外部環境の変化により収益性が向上しないため、多くの食品卸売企業はこれまでのビジネスの在り方から根本的に見直しをしていく必要性が生じてきています。