地方の問題を解決することは、企業にとってもメリットがある。地方が抱える課題を知ることは、社会の問題に目を向けることでもある。一極集中の現状を省みて、地方に足りないものを考えることも必要だ。この記事では、地方の課題解決をする方法を解説する。
目次

地方が抱える3つの課題
地方自治体の多くは、人口減少や高齢化などの課題を抱えており、課題を解決するための新たな街作りが推進されている。財政難に苦しむ地方自治体も多いため、今あらためて地方創生が注目されている。
1.人口減少
人口増減のうち、転入や転出によるものは「社会増減率」、出生や死亡によるものは「自然増減率」で表される。
都道府県別の人口増減率を見ると、人口が増加したのは7都県に留まることがわかる。人口が減少した40道府県では、自然減が多い。特に、地方における人口減少が目立つ。
2008年以降、日本の人口は緩やかに減少しており、2053年には1億人を割ると言われている。65歳以上の高齢者が増えている一方で、新生児の数が減少しているのだ。高齢者が総人口に占める割合は2042年にピークを迎え、3,935万人になるとの予測もある。
新生児の減少に伴って、生産年齢人口もまた減っている。これによって税収が減り、国全体が財政難に陥っている。
特に地方では若者の人口が減っており、一極集中が問題になっている。将来、都市と地方の格差は広がると考えられている。ただし政令指定都市などでは人口が増えており、地方の中にも格差があることがわかる。
このまま地方の市街地が拡大し、人口減少が続けば、利用されない建物などの問題も浮上してくるだろう。空き地や空き家が増えると、病院や公共交通機関が成立しなくなる可能性もある。
2.少子高齢化による労働力不足
超高齢化社会の最大の問題は、労働力不足だ。生産年齢人口が減ることで、日本経済は鈍化していくだろう。近い将来、GDP(国内総生産)が下がることも懸念される。
生産年齢人口の減少は、消費の低迷も招く。それによって経済成長率が低下すれば、国際競争力も低下する。そうなれば、さらに税収が減り、社会保障費もさらに不足してしまうだろう。
3.完全失業率
完全失業率とは、労働力人口に対する完全失業者の割合だ。完全失業者とは、「働く意思と能力を持ち、仕事を探しているが、仕事を得られない人」のことだ。完全失業率は、以下の計算式で求められる。
完全失業率(%) = 完全失業者数 ÷ 労働力人口 × 100
完全失業率は2002年にピークを迎え5%台となり、2003年以降は緩やかに回復している。企業の業績が回復したことに加え、団塊世代の大量退職に備えて企業が採用数を増やしているからだ。
2019年の雇用統計では、完全失業率は2.5%とされている。自発的な離職の増加が、失業者が増えた主な理由だ。ただし労働需給自体はタイトであり、完全失業率はピークを過ぎて緩やかに回復していると言えるだろう。
地方自治の課題はなぜ発生する?押さえたい2つの要因
地方における課題の発生要因としては、「都市との格差」と「地域経済の縮小」の2つが挙げられる。
1950年代から1970年代にかけて、日本では高度経済成長が巻き起こった。この時期から、多くの地方労働者が都市へ集団就職をする流れが顕著になり、過疎化や高齢化に悩まされる農村が急増したのである。
有名企業が集まる都市への集団就職は当然の流れであり、その結果として地域経済が縮小してしまった。また、税収の多い都市が子育て支援などを充実させている点も、地方の過疎化につながっているだろう。
現在ではふるさと納税をはじめ、地方経済を潤わすための施策もいくつか見られるが、ほとんどの自治体では根本的な解決には至っていない。
企業が地方の問題を解決するメリット
地方の問題を解決する方法の1つに、企業誘致がある。地方への企業誘致は、地方だけでなく企業にもメリットがある。企業のメリットには、以下のようなものがある。
地方は物件のコストが安いので、少ない予算で会社を構えることができる。東京都千代田区では、オフィスを借りるのに平均1万4,000円/坪かかるが、徳島県徳島市なら平均4,000円/坪で済む。
人件費を削減できるのもメリットだ。地方では最低賃金が低いため、都心より安い給料で人を雇うことができる。人件費を抑えられることは、地方の最大のメリットと言えるだろう。
企業に対して優遇・支援制度を準備している自治体も多い。たとえば、長野県には「信州特化型ビジネス創業応援事業補助金」があり、上限200万円を助成している。
地方の課題を解決するためには?
地方の課題を解決するためには、まずどのような課題があるかを知る必要がある。地方の問題は、人口減少だけではない。
課題をピックアップする
地方の課題は、以下の3つに集約される。
1.地方経済の縮小に伴う倒産の増加
生産者人口すなわち労働力が減ることで、倒産する会社が増えている。さらに、多くの企業は後継者問題も抱えている。2019年1~4月に倒産した会社は119件で、過去最高だった2018年を上回るペースだ。好景気と言われているが、実際は倒産が相次いでいるのだ。
2.人材不足による社会保障の危機
大阪府の救命救急センターがクラウドファンディングで資金を集めようとしたことで話題になった。人材不足は企業だけでなく、医師や看護師などにも波及しており、地方医療の存続は近年常に危惧されている。地方で就労する若者が減ると地方の社会全体にも影響を及ぼすのだ。
3.無居住化問題
地方から都会へ人口が流出することで、無居住化が進むとの指摘もある。2050年の人口が2010年時点の半分以下になる地点が6割以上、また2割の地点が無居住化するという予測もあります。無居住化することで、安全の確保が難しくなることが懸念されている。
課題の取り組み方を考える
地方であっても強みがある自治体は、地方創生で成功できることが多い。課題に取り組むには、官民が一体となるだけでなく、地元住民の協力も欠かせない。
旧態依然の取り組みでは、変化する地方の課題に対応できない。地方の問題と片付けずに、全ての国民が地方の課題に取り組む必要がある。今こそやるべきことを見極め、地方の住人を巻き込んでの大幅な課題への取り組みが必要だ。
実行に移す
地方の課題を解決するには、成長戦略を策定することも大切だが、それ以上に実行に移すことが重要だ。計画だけでなく、実行することに責任を持つことで、自らがプレイヤーになり数々の課題に直面する必要もある。まずは経験をしてみれば、地方で今どのような課題があるのかにも気づくことができるだろう。
現在の地方の課題の多くは、計画や総合戦略などが目的化しているとの指摘もある。コンサルティングをする上でも、計画を立てるだけではなく実行することに意味がある。地方のニーズを満たす為には、実行までしっかりと責任を負う必要がある。
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地方の課題を解決している3つの成功事例
ここでは企業ではないが地方自治体に焦点を当て、3つの成功事例から課題の解決法を学びたい。
1.徳島県神山町
「神山の奇跡」とも呼ばれるIT企業の誘致により、人口を増やすことに成功した。東京などの都市圏のベンチャー企業がサテライトオフィスを設けることで好循環が生まれ、高速ブロードバンド網も実現。またテレビで紹介されたこともあり、自治体の予想を上回る人口増加が起きた。
2.北海道厚真町
消滅可能性があると言われていた北海道厚真町だが、「東京圏との日帰りも可能」というキャッチコピーで、分譲地を500区画販売することに成功した。また子育て支援住宅の整備し、移住者を増やしている。さらにお試しサテライトオフィスを設置し、企業誘致も促している。
3.岩手県遠野市
遠野市は閉校した中学校を改築し、「遠野みらい創りカレッジ」を創設した。このカレッジの利用者が増えたことで、起業者や移住者が増えた。平成29年にはテレワークセンターも開設。テレビ会議システムやWi-Fiを完備することで、地方にいながら仕事ができる仕組みを提供している。
地方の問題を解決することで地域を活性化
地方で事業を展開するなら、まずはそこにある課題に向き合う必要がある。課題に取り組む中で、事業で収益を上げるヒントが見つかるだろう。地域を活性化することで、地方の企業もまた活性化する。
地方の問題を解決することは、社会の問題を解決することでもある。地方の問題は国民の問題、ひいては自分自身の問題でもあると認識することが大切だ。
地方自治の課題に関するQ&A
ここからは、地方自治に関する基礎知識をQ&A形式でまとめた。本記事の内容をおさらいするためにも、最後までしっかりとチェックしてほしい。
Q1.地方自治はなぜ必要?
日本における地方自治は、民主主義の基礎となっている。地域住民が創意と工夫を凝らし、各地方の課題を自主的に解決できるようになれば、結果的に国家全体の民主化へとつながっていく。
一方で、ヒト・モノ・カネが都市に一極集中すると、地方の過疎化や高齢化はさらに進んでいき、地域経済が自立できなくなる。つまり、国や都市からの支援が必要になるため、国全体としての発展も難しくなるだろう。
Q2.地方自治は何をしている?主な役割は?
国内の地方自治体は、国とのパイプ役や地域活性化に取り組む役割を担っている。具体的な施策としては、社会福祉の提供を通したまちづくりや、税金の徴収・催促などが挙げられる。
地方自治については、都道府県と市区町村で役割が異なる点も押さえておきたいポイントだ。都道府県は広域な事務・連絡調整を担当している一方で、市区町村は地域における事務をはじめ、基礎的な自治体としての役割を担っている。
Q3.地方自治にはどのような課題がある?
地方自治の根本的な課題としては、過疎化や少子高齢化、完全失業率の増加が挙げられる。
日本では東京に人口が集中する一方で、多くの地方都市は人口減少の一途をたどっている。地方で働き場所を見つけられない若者が、就職を求めて大都市圏に移動するケースが増えているためだ。
この状況が続けば、都市と地方の格差はさらに開いていき、経済的に自立できなくなる自治体も増加すると考えられる。
Q4.地方分権(地方自治)はなぜ必要?
地方都市の課題を解決するには、各地域の実情に合わせた施策が必要になる。しかし、具体的な実態を把握できていない国(政府)からは、きめ細かい対応を図ることは難しい。
そのため、日本では都道府県や市区町村が主体となり、各課題を解決に導く「地方分権」が採用されている。
Q5.過疎地域はなぜ発生する?なにが問題点?
地方の過疎化は、「都市との格差」や「地方経済の衰退」が要因となり発生している。特に農村は働き場所が少ないため、就職先を求めて多くの若者が都市部へと移住している。
このまま過疎化が進めば、食料自給率の低下や居住環境の悪化、災害リスクの増加などの弊害が増えるだろう。都市部においても、人口過密による大気汚染や住宅不足などが発生するため、過疎化は国全体で取り組むべき課題と言える。
Q6.過疎地域や限界集落はどこにある?
過疎地域や限界集落は、日本全国に点在している。
特に多く存在しているのは、若者の働き口が少ないエリアや、インフラが整っていない地域だ。鉄道やバスなどの交通網や店舗が少ない地域ほど、過疎化・少子高齢化が進みやすい傾向にある。
企業の誘致や観光化を目指している自治体もあるが、全国規模で見ると多くの地方都市がさまざまな課題を抱えている。
Q7.少子高齢化はなにが悪い?
少子高齢化によって労働年齢人口(15~64歳)が減ると、さまざまな企業・店舗が人手不足に陥る。最近ではシニア人材を採用するケースも多いが、高齢者は短時間勤務を希望する傾向にあるため、根本的な解決策とまでは言えない。
このまま労働力供給が減少すると、さまざまな地方産業が衰退する可能性もある。最終的には食料自給率の低下などを引き起こすため、地方都市の少子高齢化は迅速に解決すべき社会課題と言える。
地方の課題に目を向けて、地域住民から支えられる企業を目指そう
高度経済成長の時代から、日本では地方都市の過疎化や少子高齢化、完全失業率の増加などが続いている。企業の誘致や観光化に成功したケースもあるが、多くの自治体では根本的な解決には至っていない。
地方都市の衰退は国全体の不利益につながるので、都市部に本社を構える企業も無視できない問題だ。地域住民から支えられる企業になるためにも、引き続き地方自治が抱える課題に目を向けていこう。
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