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内山 瑛
内山 瑛(うちやま・あきら)
税理士・公認会計士。名古屋大学法学部在学中に、公認会計士試験に合格。新日本有限責任監査法人に入所し、会計監査・コンサルティング業務を中心に研鑽を積む。2014年に同法人を退所し、独立。「お客様の成長のよきパートナーとなる」ことをモットーに、記帳代行・税務申告にとどまらず、お客様に総合的なサービスを提供している。近年は、銀行評価を向上させる財務コンサルティングや内部統制構築支援、内部監査の導入支援にも力を入れている。

自営業者の支払う税金は会社員の場合とは大きく異なる。会社員の場合は税務署への手続きや納税など煩雑な作業は会社が間接的に行ってくれる場合が多い。しかし自営業者の場合は税金の計算から納税まですべて自分で行うことが必要だ。そこで本記事では自営業者が支払う税金や確定申告の方法、節税方法などについて解説していく。

目次

  1. 自営業で支払う税金の種類
  2. 確定申告の仕方の概要
  3. 自営業で経費になるもの、ならないものは?
    1. 家賃は経費になる?ならない?
    2. 経費として認められないものは?
  4. 自営業者ができる8つの節税方法
    1. 節税方法1. 小規模企業共済
    2. 節税方法2.経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)
    3. 節税方法3.少額減価償却資産の特例
    4. 節税方法4.青色申告特別控除
    5. 節税方法5.生命保険料控除
    6. 節税方法6.医療費控除
    7. 節税方法7.社会保険料控除
    8. 節税方法8. iDeCo(イデコ)

自営業で支払う税金の種類

自営業で支払うことになる税金は多岐にわたる。そのなかでも金額も大きくなりがちな税金は「所得税」「消費税」「個人事業税」「住民税」の4つだ。このうち所得税や消費税については確定申告によって自営業者が納付する。地方税である個人事業税と住民税については、確定申告は必要なく税務署へ提出した確定申告のデータをもとに各自治体が税額の計算を行い賦課するのが特徴だ。

確定申告の仕方の概要

自営業の確定申告は、事業所得で行う。事業所得がある場合はさらに「青色申告か」「白色申告か」のどちらかを選択することになる。青色申告を選択すれば青色申告特別控除という税金を安くすることのできる制度を活用することが可能だ。事業所得以外にも収入がある場合は、合算して確定申告をすることになる。

税金は所得の種類ごとに計算するのではなく1人の人間が得たすべての所得に対して合算して計算を行う。例えば給料や役員報酬などがあれば給与所得として、賃貸に出している不動産があれば不動産所得として申告する。所得税の計算は、以下の手順で行うが法令上の計算方法であり複式簿記かつ会計ソフトで経理している場合はあまり意識することはないかもしれない。

まず申告対象の年の1月1日~12月31日の売上総額を求める。自営業の場合は法人とは異なり計算期間を自由に選択することはできない。必ず1月1日~12月31日の期間で計算することが必要だ。その後に1月1日~12月31日までの必要経費(収入から差し引かれるべき金額)を求める。そして売上総額から必要経費を引いて事業所得の金額を算出。

その他の所得と合算したうえで各種控除を差し引き、課税所得金額に所得税率を掛けて所得税の金額を求める。

自営業で経費になるもの、ならないものは?

自営業で経費になるかどうかの基準は、「業務に関連する支出であるかどうか」だ。平たくいえば「売上に貢献する経費であるかどうか」という点になる。しかし自営業の場合は生活と仕事が一体化している部分もあり、「どの程度を経費にすべきか」については難しいところもあるだろう。なにげなく確定申告をしている場合は、本来必要経費にできるものを見落としてしまっていることがある。

家賃は経費になる?ならない?

まず借家の場合の家賃だ。自宅を事務所として使用しているのであれば一部を経費として計上できる。使っている部分の面積、もしくは時間で按分計算をするのが一般的だ。また水道光熱費や通信費も同様に事業に使った割合を示す何らかの指標をもとに計上することになる。さらに交通費や交際費について「少額だから」「領収書がでないから」といった理由で経費計上していないことも少なくない。

仕事とプライベートを兼ねての支出であったとしても例えば滞在時間の比率で按分するなど合理的な配分方法で必要経費に計上することも可能である。そして自家用車を業務に使用している場合は資産計上し、減価償却をすることで必要経費に計上することを検討することが望ましい。ただし自宅をオフィスにした場合の上記の取り扱いは、青色申告と白色申告では取り扱いが異なる。

白色申告の場合は、こうした家事管理費の主な部分が業務への使用でなければ認められないのに対して青色申告では業務に必要なことが明らかであれば認められる。

経費として認められないものは?

では経費にならないものはどのようなものがあるのだろうか。まずは、事業にまったく関係のない自営業者の出費・私的なCDや書籍、飲食費、交際費などは経費にならない。

もちろん、これらの出費を資料や仕入れなど事業に必要なものとして合理的な説明が可能であれば、すべて経費にすることが可能だ。しかし用途が不明確の場合、税務調査の際などにもめる原因となり追加納税が必要とある原因になる。また自営業者自身の給料や福利厚生、年金、保険料などは経費にならない。

例えば給料について従業員の給料や臨時スタッフの謝礼、外注スタッフのギャランティは経費になる。しかし自営業者自身の給料は経費にならない。福利厚生の面でも従業員の健康診断費を自営業者が負担した場合は経費になるが、自営業者自身の健康診断費用は経費にならないのだ。同様に自営業者自身の国民年金や国民健康保険の保険料も経費とはならない。生命保険料や地震保険料も同様である。

なお社会保険料は社会保険料控除、生命保険料は生命保険料控除等といった所得控除で、一定額の控除を受けることは可能だ。同様に個人事業主の支払う所得税や住民税も経費とはならない。なぜなら事業に対する課税ではなく、あくまで個人に対する課税だからである。逆に事業または事業用の資産に対する課税である印紙税や事業用資産の固定資産税、個人事業税は経費計上が可能だ。

よく間違えがちであるが青色専従者給与の届け出を出していない、自営業者の生計をともにする家族や親族に対する給与の支払いも経費として計上できない。未提出で「なんとかならないか」という相談を受けることがあるが、この制度はあくまでも原則として経費計上できず「届出書を提出している場合に限り特例として控除することが許されている」ということになる。

そのため「生計が同一ではなくなった」といった特殊な事情がない限り、所得から控除することはできない。また同じく質問を受けるものが多いものとして業務中の交通違反に対する反則金がある。交通違反の反則金に関しては、事業と関連するかどうかにかかわらず必要経費として計上できないと明確に定められているため、どれだけ事業中であったとしても経費にはならない点は押さえておこう。

自営業者ができる8つの節税方法

自営業の場合は、個人としての側面と事業主としての側面があるため、使用できる節税策も多岐にわたる。さまざまなメニューが用意されているのでしっかりと活用していきたい。

節税方法1. 小規模企業共済

まず代表的なものが、小規模企業共済だ。これは、退職金のない中小企業経営者のために退職金の積み立てを国の機関が行うものである。毎月の掛け金は全額所得控除の対象であるため、毎月上限の掛け金7万円を1年間かけ込んだ場合年間84万円の所得圧縮効果となるのだ。ただし小規模企業共済は20年以内に解約すると元本割れしてしまう。

節税方法2.経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)

経営セーフティ共済もよく利用される。これは、大口の得意先が倒産した場合などに貸し付けなどを受けられる制度だ。こちらも掛け金は全額必要経費として計上できるため、節税にも利用されている。毎月の掛け金の上限は20万円、1年間で240万円、さらに決算月に年払いで翌年分の240万円を支払うと最大480万円計上可能だ。ただ納付月数が40ヵ月以上ない場合に解約すると元本割れしてしまう。

節税方法3.少額減価償却資産の特例

また青色申告が前提ではあるが、少額減価償却資産の特例をうまく使うことが考えられる。10万円以上の固定資産を購入した場合は通常は固定資産に計上。毎年一定額を減価償却費として計上することが求められている。しかし少額減価償却資産の特例を使えば30万円までの備品を経費として一括計上することができる。

特例を適用できるのは1年間で300万円までと定められているため、計画的に購入していくことが必要だ。例えば20万円のパソコンを25台購入する場合を考えてみると一括で購入すれば15台(300万円)までを経費として一括計上できる。残りの10台は固定資産に計上したうえで法定耐用年数の4年間で減価償却をしていく。

しかし15台(300万円)と10台(200万円)を2年間に分けて購入していけば、それぞれに300万円を超えないため、固定資産に計上することなく一括で損金計上をすることができる。

節税方法4.青色申告特別控除

青色申告特別控除を期限内に行えば最大で65万円の所得控除を受けられる制度である。このような細かな所得控除制度についてもしっかりと利用していくことも重要だ。青色申告では、厳密な複式簿記での経理が求められているが、近年は便利な会計ソフトもたくさんあるため、自身で青色申告を行うことも十分できるだろう。

自信がない人に関しては、税理士に依頼するのも方法の一つだ。青色申告を行えば赤字を3年間繰り越すことができたり生計を同一にする家族への給与を専従者給与として計上できたりするなど、その他の特典も多い。

節税方法5.生命保険料控除

生命保険料控除も2012年1月1日以後の契約分に関しては「新生命保険料控除」「介護医療保険料控除」「個人年金保険料控除」でそれぞれに4万円、最大12万円の控除が認められる。

節税方法6.医療費控除

医療費控除においては、最大200万円までかかった医療費などをもとに一定の計算式で算出された金額を控除することが可能だ。見落としがちな点であるが、通院にかかったバス代やタクシー代なども控除対象になる可能性がある。そのため記録や領収書はきちんと保存しておくことが望ましく10万円を超えていなくても所得金額によっては控除が発生する余地があるので、少額でも領収書は保存しておきたい。

節税方法7.社会保険料控除

もし自営業で国民年金を支払っていない人であれば、過去10年間は遡って追納することができる。(2020年時点)その場合、支払った金額の全額が社会保険料控除の対象だ。逆に最大2年まで国民年金を先払いする前納制度もある。その場合、支払った年に一括で社会保険料控除を適用することもできるので、場合によっては過去10年分と将来2年分と合わせて12年分を社会保険料控除として計上できる場合がある。

節税方法8. iDeCo(イデコ)

近年話題になっているものに個人型確定拠出年金のiDeCo(イデコ)がある。iDeCo(イデコ)とは公的年金とは別に毎月一定額を積み立て投資信託などで運用し、60歳以降に受け取れるようにする年金制度のことだ。アメリカで広く普及している401kという個人年金の制度を参考にしたものであり特徴の一つとして運用益が非課税になることが挙げられる。

制度を利用した場合の毎月の積立額は自営業者の場合5,000~6万8,000円の範囲で選択可能だ。全額が小規模企業共済等掛金控除として小規模企業共済と同様に所得控除の対象となり最大で年間81万6,000円の所得控除を受けることができる。

文・内山瑛(公認会計士)

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