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産経ニュース エディトリアルチーム
岡山県総社市に本社を構える株式会社総社技術コンサルタントは、環境やエネルギー分野における各種調査や測量などを行っているコンサルタント企業だ。ドローンを活用した測量、河川、橋梁(きょうりょう)、港湾施設といったインフラの点検事業や新分野の開拓に力を入れている。建設分野を中心に蓄積してきた専門知識と経験に、ドローンの先端技術を組み合わせることでコンサルタント力を強化している。(TOP写真:総社技術コンサルタントが活用しているドローン)
建設会社への支援を通じて地域に貢献
1986年7月、当時40歳だった難波進代表取締役は、特別職国家公務員の職を辞して株式会社総社技術コンサルタントを設立した。当時、岡山県で全線開通に向けた工事が進んでいた瀬戸大橋のプロジェクトを通じて建設事業が地域にもたらす波及効果を実感したことが、建設専門のコンサルタント業という未知の分野に挑戦する動機になったという。「地域の社会資本の整備を進める上で建設産業は大きな役割を担っています。建設会社への支援を通じて故郷、岡山県の発展に貢献したいという思いで事業に取り組んでいます」と難波社長は話した。
3種類のドローンを測量や空撮に活用
難波社長が8年ほど前から力を入れているのが、遠隔操作や自動制御で飛行する無人航空機、ドローンの活用だ。3つの異なるメーカーから3種類のドローンを購入し、測量や空撮といった用途に応じて使い分けている。
情報収集とネットワークの構築を重視してドローンを運用
ドローンは、衝突回避機能や稼働時間の向上、搭載カメラの高精度化など日進月歩で進化している。難波社長がドローンを運用するにあたって重視してきたのが、幅広い情報の収集と同業者のネットワークの構築だ。そのための取り組みの一環として、一般社団法人日本ドローンコンソーシアム(JDC)に加盟している。ドローンの運行に関しては安全を徹底し、総務省と国土交通省のガイドラインを遵守した上で、会社独自の安全ガイドラインも策定している。
ドローンの活用を通じて空の産業革命を実感
「ドローンが建設産業と高い親和性を備えていることに早くから注目していました。ドローンを活用することで人が近づきにくい橋梁(きょうりょう)、鉄塔、建物を対象にした点検作業も迅速かつ安全に行うことができます。ドローンを導入したことで事業の幅は大きく広がりました。ドローンが『空の産業革命』であることを実際に活用しながら実感しています」と難波社長。2018年7月の西日本豪雨災害で総社市が被害を受けた際も、上空からの状況の確認に総社技術コンサルタントのドローンは大きな役割を果たした。人手が不足する中、全国の同業者の支援に助けられたという。
ドローンを使ったレーザー測量は、リアルタイムで測量結果を3次元データにすることができる。現場ですぐに測量結果を確認できるので、少人数で効率的な作業が可能だ。測量用の機材を持ち運ぶ必要もないので手間がかからず、コスト削減にもつながる。
建設会社へのICT分野のコンサルタントにも尽力
総社技術コンサルタントは、ドローンで計測した3Dの点群データ(無数の点の集まり)をクライアントの建設会社に提供している。2021年には、取引先とのデータ共有を円滑にするためにCADを導入した。ドローンを所有していない建設会社は総社技術コンサルタントと連携することで、3次元データの提供を受けて土木図面作成などの仕事を効率的に進めることができる。
ICTを活用して建設産業の生産性を高めるICT施工に関するコンサルタントにも力を入れている。建設会社が、ICT活用を条件にした工事に参加する際、総社技術コンサルタントを連携先に選ぶケースが増えているという。
「建設産業以外の現場でもドローンを活用することで、生産性を向上させることができます。例えば農業では、農薬散布への活用だけでなく、ドローンと最先端の画像解析技術を組み合わせれば手間をかけることなく農作物の生育状況のデータを取得し、スマート農業に寄与しています。そのほかの分野でもドローンの新たな活用方法を探っていきたいと考えています」と難波社長。林業の生産性向上のための森林管理にドローンやICTを活用する事業も検討しているという。
高梁川の河川敷でドローンを使った物資運搬の実証実験を実施
物流分野でのドローンの活用も広げている。その取り組みの一つが、2023年2月に総社市内の高梁川の河川敷で実施したドローンを使った物資運搬の実証実験だ。実証実験は国土交通省水管理・国土保全局の公募事業。ドローン開発を行う愛知県のベンチャー企業が機体を提供し、総社技術コンサルタントは飛行計画の策定や飛行ルートの設定、行政や関係団体との調整を担当した。
実証実験に使用したドローンは全長2メートル、高さ1メートル。大勢が見守る中、ドローンは米などの食品、飲料水、調味料などを入れた約25キロの生活必需品を吊り下げて高度30メートルまで上昇。事前にプログラミングした経路や速度で約800メートルにわたって自動飛行を行い、目的地に無事着陸した。風の影響や安全性など実験によって集められたデータは、運搬品が落下しても事故につながりにくい河川上空でのドローン物流の具体化に向けて、飛行ルートを設ける際のルールづくりや支援策の策定に活用されることになっている。
「ドローンで物資をスムーズに運搬する上で役に立つ情報やデータを収集することができました。ドローンを物流に活用することで、人口減少が進行する中での担い手不足・買い物難民といった地域の課題解決につなげていきたい」と難波社長。将来的に建設業界での建築資材の搬送へのドローンの活用も考えていきたいという。
環境関連の事業を通じて地球温暖化防止に貢献
ドローンの活用とともに総社技術コンサルタントが重視しているのが環境分野の事業だ。省エネ法に基づく省エネルギー診断、再生可能エネルギーの関連事業、風力発電の風況調査といった事業に取り組んでいる。2010年2月には環境大賞を岡山県から受賞した。国連の持続可能な開発目標、SDGsにも強い関心を持ち、倉敷市・高梁川流域SDGsパートナー、倉敷・総社温暖化対策協議会といった地球温暖化防止に関する様々な団体に所属している。難波社長自身も2016年4月から岡山県地球温暖化防止活動推進員を務めている。
「今後、地球温暖化が進行すれば、現在の温暖化対策より更に厳しい行動目標が課せられるようになるでしょう。先を見据えて行動しなければならないと思っています。地球環境を守って後世に伝えていくためにも、地球温暖化防止に貢献できる事業に力を入れていきたい」と難波社長は力強く語った。
環境に配慮して事業を進める上でICTは欠かせない
総社技術コンサルタントは、無駄を削減して環境に配慮しながら事業を継続していく上で、ICTやデジタル機器を活用して仕事を効率的に進めることを心掛けている。
2023年6月からクラウドサービスを導入し、本社に設置しているデスクトップパソコンとスマートフォンを同期させることで、外部からでも社内のパソコンの情報をスマートフォンで確認できるようにした。社外からスマートフォンで時と場所を選ばずに仕事ができるので、ノートパソコンを持ち運びする必要がなくなり、身軽に外出できるようになったという。「コロナ禍が落ち着くことで、Web会議よりも直接会って打ち合わせをすることが多くなり、外出や出張の機会が増えているので、とても重宝しています」と難波社長は話した。また、同じ時期に印刷に使う複合機も省エネ機能などが向上した最新機種に更新した。
これまで蓄積してきた専門知識と技術を活用し、地域社会への貢献を重視して事業に取り組んでいる総社技術コンサルタント。難波社長は「ドローンやICTといった最新の技術を安心、安全で持続可能な社会を築くことに使っていきたい。事業を通じて少子高齢化に伴う社会課題の解決や地域貢献ができるようにこれからも頑張ります」と話している。
企業概要
会社名 | 株式会社総社技術コンサルタント |
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本社 | 岡山県総社市中央4-22-109 |
HP | http://www.s-t-c.jp |
電話 | 0866-93-0493 |
設立 | 1986年7月 |
事業内容 | 省エネルギー診断、風況調査、騒音・振動調査、アスベスト調査、地球温暖化防止実行計画策定、地質・土質調査、ドローンを使った測量、空撮、インフラ点検 |