日本には多くの税金があり、その形態は多様である。それらの分類手法はさまざまだが、ここでは、主に直接税と間接税を取り上げる。
目次
直接税、間接税とは?
税金の分類のひとつに「直接税」と「間接税」がある。ここでは、その定義について述べる。
直接税
直接税は、税を納めるべき人と負担する人が同じものを指す。例えば、法人税は会社が自分自身で税金の対象となる収益を申告して税金を納める。この場合、税を納める人と負担する人が同じのため、直接税といえる。
直接税の長所は、多くの収入を得られる人から税金を取得するといった柔軟な対応ができ、貧富の差を解消することが可能な点だ。景気が低下して所得が急減したときに、税金を少なくすることで手取り額が大幅に落ちることを防ぎ、景気が急降下することを防止できる。
反対に、景気が上昇して所得が増加した場合、税金が増加分以上に上がることによって、手取り額がそれほど増えないという点は短所である。これにより、事業意欲や勤労意欲が失われるのではないかといった指摘もある。その他、所得によっては課税ベースの把握が難しいことも欠点だ。
間接税
間接税は、税を納めるべき人と負担する人が異なるものを指す。例えば、消費税を実質的に負担しているのは、最終的に物を買ったり、サービスを受けたりする消費者だが、実際に納めるのはその物を販売したり、サービスを提供したりする業者だ。そのため、税を納める人と負担する人が異なることから、間接税であるといえる。
長所としては、負担をしている感覚が少なく、事業意欲や勤労意欲が失われることがあまりないという点だ。一方で、税金を負担する人の事情が反映しづらく、そのために低所得者の負担が増えるといった逆進性が発生する可能性がある点は短所となる。
直接税は「垂直的公平」、間接税は「水平的公平」
税金は公平でないといけないといわれているが、公平さについては「垂直的公平」と「水平的公平」の2つがある。ここでは、それらについて説明する。
垂直的公平
垂直的公平とは、能力の高い人ほど税金を納める能力が高いと考えられるため、より多くの税金を納めるのが公平である、という考え方を指す。
水平的公平
水平的公平とは、所得と納税能力が同様の人は同じ税金を納めるのが公平である、という考え方である。
直接税と垂直的公平
直接税は垂直的公平を図るのに優れているとされる。これは、直接税は累進課税やさまざまな控除の制度を設けることによって、支払い能力に応じた課税ができるためだ。
間接税と水平的公平
間接税は水平的公平を図るのに優れているとされる。間接税は、所得の内容に関係なく、消費の内容が等しいときに等しい負担を求めることができるためである。
直接税と間接税の比率は?
税収における直接税と間接税の割合を「直間比率」という。直間比率は、その時期、その国の税収傾向のひとつを知ることが可能だ。ここでは直間比率について、日本ではどのような傾向にあるのかを説明する。
直間比率の推移
日本の租税における直接税の比率の推移は、以下のようになっている。
ここ10年間で見ると、直接税の内訳は70%近辺から60%台前半に低下している。これは、2019年に消費税が原則8%から10%に上昇したことが影響し、間接税の比率が上がったためと考えられる。 それよりも長いスパン(1955年から現在まで)で見ると、直接税の比率は60%近辺から80%近辺までの間で推移しており、ここ最近は直接税の比率が少なめの60%前半のところまでに移りつつある。
日本の主な直接税3つ
では、日本ではどのような税金が直接税にあたるのか、例を挙げて見ていきたい。
1. 所得税
所得税とは、個人の所得、すなわち「儲け」にかかる税金を指す。これは個人の所得を10種類に分けてそれぞれの所得を計算していき、その結果を基にして税額を求めるものだ。税額を計算した後に、所得税として納税する。
所得税は、「自ら取得した所得を、自らで申告して納税する」という意味で直接税と呼ばれる。直接税の特徴である垂直的公平があらゆるところで見られるのも特徴だ。
その例としてまず、累進課税が挙げられる。所得税の税率は、所得の金額に応じて最低5%から最大で45%までに設定されている(復興特別所得税を除く)。多く納税できる能力がある人は、それに見合った金額を納税できるように、設定がされているのだ。
次に所得税は、個人の事情に応じたさまざまな控除が用意されている。例えば、扶養している家族に応じた扶養控除や自分自身や家族に障がいがある場合の障害者控除、特別障害者控除などがあり、個々の状況や活動に応じた控除制度がある。
2. 法人税
法人税は、法人がその活動で得た所得にかかる税金である。法人の活動(法人によっては収益活動)に対して、収益といえる益金から費用や損失といえる損金を差し引いて所得を計算し、それに対して税金が課せられる。計算の結果、求められた税金を法人が自ら申告して納税する。
法人税も、法人自らが納税することから直接税に分類される。所得税ほどではないが、直接税の特徴として垂直的公平が見られる。法人税の税率は基本的には23.2%であるが、会社の規模や所得金額、あるいは法人の種類によって、部分的に税率を最低で15%に落としている。
3. 固定資産税
地方税にも直接税があり代表的なものに固定資産税がある。固定資産税は土地、家屋、償却資産について課税される。土地、家屋の税額は地方公共団体が内部で所有する情報をもとに計算し、償却資産については所有者が持つ資産を申告させ、地方公共団体が計算する。資産を持っている者が納税をするため、直接税とされる。
日本の主な間接税3つ
日本には、さまざまな間接税がある。その中の主な3つについて説明する。
1. 消費税・地方消費税
消費税・地方消費税とは、日本国内において商品やサービスを受けるときに支払う税金である。我々が一般的に消費税と呼んでいるのは、国税の消費税と地方税の地方消費税が一緒になったものだ。売買やサービスの提供を受けた際に、それらの価格に対して10%(国税の消費税7.8%、地方税の地方消費税2.2%)が課せられる。
最終的に税金を負担するのは消費者であるが、実際に税金の申告や支払いをするのはその商品を販売したりサービスを提供したりした者である。
すなわち、税金を負担する者と税金を納める者が違うため、間接税とされているのだ。同じ物を買った場合は同じだけ課税されるという間接税の特徴、水平的公平が見て取れるだろう。ただし、最近の改正においては、合計10%の税率の他に食品などについて8%の消費税率が設定されており、低所得者や消費者の担税力への配慮が見られる。
2. 印紙税
印紙税とは、印紙税法で定められた文書を作成する際に課せられる税金である。対象となるのは印紙税法で定められた20種類の文書であり、領収書、株券、不動産売買契約書、手形、会社の設立時に作られる定款などがそれにあたる。
文書を作成する者が印紙を貼るなどして納めることとなっており、分類上は間接税とされている。印紙税は消費税・地方消費税などの大半の間接税とは違い、消費する行為から生じる税金ではなく、取引によって生じる経済的利益に税源を求める流通税としての性格を持つ。
3. 酒税
酒税とは、酒類に対して課せられる税金である。酒類とはアルコール分1%以上の飲料をいう。酒税法では酒の種類を発泡種類(ビールなど)、醸造種類(清酒など)などで分類し、品目やアルコール分を加味して税率を決めて設定している。
税金を支払うのは酒類を購入した消費者であるが、実際に納めるのは製造した業者や輸入した業者だ。税金を負担する者と税金を納める者が違うため、間接税である。同じ酒類を同じ量だけ買えば同じだけ課税されるという点でいえば、間接税の特徴である水平的公平が見られる。
ただし、担税力に応じた負担を求めるという点から、高級酒とされるブランデーやウイスキーの税率は高めに設定するといった措置がなされている。
その他の税金の分類方法
税金の分類方法には、直接税と間接税以外にもある。ここでは、その分類方法について説明する。
国税、地方税
税金を徴収するのが国か地方自治体かによって、国税と地方税に分類する。地方税は、さらに都道府県が徴収するのか、市区町村が徴収するかによって道府県税と市町村税に分類される。 これらの税の特徴は、それぞれ納税先が違う点だ。しかし、同じものに対して別々にかけられる場合もある。
個人の所得を例にすると、所得税は国税、道府県民税、市町村民税は各自治体に納める税金だ。
また、国税の税率は全国で一つの基準に設定されているが、地方税は都道府県や市区町村によって任意に定めることができることもあるのも特徴のひとつだ。例えば、個人に課せられる道府県民税の均等割は、神奈川県は1,800円、京都府は2,100円と独自に決定している。
所得課税、消費課税、資産課税
どのような事実に基づいて課税するかにより、所得課税、消費課税、資産課税に分類される。 所得課税は所得を得たという事実に基づいて課税されるものであり、所得税、法人税、道府県民税、市町村民税、事業税がそれにあたる。
また、消費課税は物やサービスの消費に対して課税されるものであり、消費税、地方消費税、酒税、入湯税がそれにあたる。
さらに、資産課税は土地や建物などの資産の保有や取得に対して課税されるもので、固定資産税、不動産取得税がそれにあたる。
直接税と間接税の違いはしっかり理解しておこう
ここでは直接税と間接税について、その性質、長所と短所、例示ついて記した。
直接税と間接税について知っておくことが直接これらの税金の節税になるわけではないが、どのような税金がどのような場面で課せられるかについて知っておくことで、税金の知識をより深めることができるのではないかと考えている。
文・中川 崇