福利厚生
(画像=PIXTA)

資金が少ない中小企業にとって、福利厚生の充実は難しい選択かもしれない。しかし、魅力的な福利厚生を整備することで、企業にもメリットが発生することをご存じだろうか。特に人材不足に悩んでいる経営者は、これを機に福利厚生に目を向けてみてほしい。

中小企業が福利厚生を充実させるべき3つの理由

資金に限りがある中小企業は、大企業と同じレベルで福利厚生を充実させることは難しい。実際に「中小企業は福利厚生が充実していない」というイメージは根強く残っており、その印象が従業員や求職者に大きな影響を与えている。

しかし、このようなイメージが強いからこそ、福利厚生の充実は中小企業にとって大きな武器になり得る。では、福利厚生の充実がどのようなメリットに結び付くのかについて、以下でひとつずつ確認していこう。

1.従業員のモチベーションアップにつながる

さまざまな種類の福利厚生がある中で、従業員のモチベーションアップにつながる制度は非常に多い。具体的なものとしては、主に以下のような制度が挙げられるだろう。

福利厚生の種類 概要
・経済的負担を軽減する福利厚生 住宅手当や食事手当など。給与水準が高くなくても、経済的負担が軽減されれば従業員の満足度は上昇する。
・コミュニケーションを活性化する福利厚生 懇親会や食事会など、イベントに関連する福利厚生など。社員間のコミュニケーションを密接にすることで、悩みが解消されやすい環境を整えられる。
・仕事に集中する環境を整えられる福利厚生 育児関連の福利厚生など。生活面をサポートすることで、従業員が仕事に集中できる環境を整えられる。

従業員のモチベーションは、企業の生産性に大きく影響するポイントだ。高いモチベーションを維持できれば、福利厚生で発生したコスト以上に大きな利益を期待できる。

また、福利厚生によって従業員の満足度が高まると、優秀な人材の定着にもつながっていく。

2.採用活動の幅が拡大する

対外的に「魅力的な企業であること」をアピールできる点も、福利厚生を充実させる大きなメリットだ。たとえば、求職者にとって福利厚生は志望先を判断するための重要な要素なので、福利厚生の充実は採用活動の幅を広げることにつながる。

大企業に比べると、中小企業は少ない資金や知名度の影響で人材不足に悩まされやすい。そのうえ、近年では労働人口が減少傾向にあるため、人材確保を喫緊の課題として考えている経営者も多いはずだ。

だからこそ、中小企業にとっては福利厚生を充実させることが重要なポイントになる。場合によっては、多額のコストを費やして求人広告を掲載するより、福利厚生の充実のほうが効果的な対策になるだろう。

3.企業イメージの向上につながる

福利厚生が充実した企業は、周りから「健全な企業」としてのイメージを持たれやすい。つまり、社会的な注目を集めやすく、さらに社会的信用性のアップも期待できるため、それに伴って対外的な企業イメージも向上していくだろう。

企業イメージは採用活動の面でも重要だが、業種によっては売上にも直結する。たとえば、「あの企業の商品だから買おう」「この会社の商品は信用できる」のように、企業イメージが商品・サービスの印象を左右するケースも珍しくない。

従業員から人気の高いものは?特に意識しておきたい3つの福利厚生

「福利厚生が重要だから」と言って、闇雲にさまざまな福利厚生を充実させるのは厳禁だ。従業員や求職者から評価される福利厚生でなければ、上記で解説したようなメリットが生じないどころか、コストの無駄が発生してしまう。

そのため、経営者は従業員・求職者から人気の高い福利厚生を押さえておくことが重要だ。人材不足や採用活動に悩みを抱えている経営者は、特に以下で紹介する3つの福利厚生に目を向けていこう。

1.食事補助系

まずは、2015年3月にマンパワーグループが実施した、福利厚生に関するアンケートを紹介しよう。

順位 会社の福利厚生として良いと思うもの 実際にあった福利厚生でよかったと思うもの
1位 住宅手当・家賃補助(48.3%) 食堂・昼食補助(17.1%)
2位 食堂・昼食補助(33.9%) 住宅手当・家賃補助(16.7%)
3位 人間ドックなど法定外の健康診断(33.0%) 余暇施設、宿泊施設・レジャー施設などの割引制度(14.5%)

(参考:https://www.manpowergroup.jp/client/jinji/surveydata/150422_01.html)

食事補助系の福利厚生は、生活面や経済面のサポートにつながるため、やはり従業員の満足度が高い傾向にある。また、経済的な負担を抑えられるだけではなく、バランスのとれた食事によって健康面をサポートできる点も、食事補助の人気が高い一因だろう。

特にあまり料理をしない一人暮らしの従業員にとって、食事補助系の福利厚生は心強いはずだ。

2.住宅手当・家賃補助系

毎月一定の家賃・ローンの支払いを補助したり、社宅を提供したりする福利厚生も人気が高い。これらの福利厚生も食事補助系と同じく、従業員の生活面・経済面を直接的にサポートするものだ。

住宅手当・家賃補助系の福利厚生には、安定したサポートを長期間受けられる魅力がある。そのため、各従業員の仕事面だけではなく、ライフプランなどの将来設計にも良い影響を与えるだろう。

プライベートを充実させることで、仕事に集中して取り組める環境を整えられる点も魅力的なポイントだ。

3.施設利用時の割引

健康診断などの健康につながる福利厚生も人気を集めているが、従業員が実際に「よかった」と感じている観点から言えば、「施設利用時の割引」に注目しておきたい。この福利厚生は対象となる施設の選択肢が非常に多いため、従業員の特性に合わせた割引制度を用意できる。

施設利用と聞くと家族のイメージが強いかもしれないが、たとえば若い世代が多い企業では、独身者・単身者向けの割引制度を充実させれば問題ない。

中小企業の心強い味方になる?「福利厚生代行サービス」とは

「福利厚生を充実させたい」と感じながらも、コストや手間の影響でなかなか取り組めない中小企業は多いだろう。このように悩んでいる経営者は、積極的に「福利厚生代行サービス」の利用を検討しておきたい。

福利厚生代行サービスとは、企業に代わってさまざまな福利厚生を実施してくれるサービスだ。このサービスでは、宿泊施設やレジャー施設などを利用するための基盤がすでに整えられているため、中小規模の企業であってもスムーズに福利厚生を充実させられる。

では、福利厚生代行サービスを利用する具体的なメリットについて、以下で簡単に紹介していこう。

○福利厚生代行サービスを利用するメリット
・企画を考える手間が省ける
・人的費用や施設の工費などを削減できる
・ひとつのサービスで、さまざまなタイプの福利厚生が充実する
・オンラインで利用状況を把握できる
・大企業と変わらないレベルの福利厚生を用意できる など

自社のみで福利厚生を充実させようとすると、どうしても膨大な人的費用や工事費用などが生じてしまう。一方で、福利厚生代行サービスではプランを選ぶだけで福利厚生を実施できるため、これらのコストや手間を大きく抑えられる。

また、さまざまなタイプの福利厚生が用意されており、大企業と同等の環境を整えられる点も大きなメリットだ。このサービスを上手に活用すれば、中小企業でも従業員・求職者の満足度をぐっと高められる。

ただし、福利厚生代行サービスは利用するプランによって、システムや内容に大きな違いがある点には注意しておきたい。代表的なプランとしては、主に以下の2種類が挙げられる。

福利厚生代行サービスの種類 概要
・パッケージプラン 利用する企業が定額料金を支払うことで、従業員が全サービスを利用できるタイプの代行サービス。従業員は該当サイトに会員登録することで、好きな福利厚生サービスを利用できる。
・カフェテリアプラン 企業が用意している福利厚生と、パッケージとして用意された福利厚生を組み合わせて、自由にカスタマイズできるタイプのサービス。従業員は企業から付与されたポイントを使うことで、選択した福利厚生サービスを利用できる。

パッケージプランは福利厚生サービスの種類が多いため、福利厚生の利用率が高い企業に最適だ。一方で「特定の福利厚生を充実させたい」と感じている企業は、自由にカスタマイズできるカフェテリアプランが適した選択肢となる。

細かいシステムや福利厚生の内容はサービスによって異なるので、多くのサービスに目を通したうえで利用するサービスを検討していこう。

福利厚生を充実させる前にチェック!役立つ「助成金制度」と「法人保険」

中小企業が福利厚生を充実させる際には、もうひとつ押さえておきたい事前知識がある。それはコスト削減にも役立つ「助成金制度」と「法人保険」の存在だ。

では、これらの制度・保険がどのように役立つのかについて、以下で詳しく解説していこう。

福利厚生対策に役立つ助成金制度

助成金制度とは、各制度の要件を満たすことで一定の助成金を受け取れる公的な制度。実は福利厚生を充実させると、労働環境や労働スタイルが変わる影響で、いくつかの助成金制度を利用できる可能性がある。

福利厚生対策として活用できる制度としては、主に以下のものが挙げられる。

福利厚生対策に役立つ助成金制度 概要
・職場定着支援助成金 研修制度や健康診断など、従業員の定着につながる取り組みに対して助成金が発生する制度。介護事業主の場合は、介護福祉機器の導入も助成対象に含まれる。
・キャリアアップ助成金 非正規労働者を対象として、企業内でのキャリアアップに向けた取り組みを行った場合に助成金を受け取れる制度。正社員化や賃金規定の改定のほか、健康診断の実施も助成対象に含まれる。
・企業主導型保育事業 事業所内に保育施設を整備した場合など、子育てを支援する取り組みに対して助成金が支給される制度。従業員のために保育施設を設置すると、整備費・運営費のサポートを受けられる。

上記のような助成金制度は、時期によって実施されているものが異なる。また、社会的な必要性が高まれば、今後新たな制度が登場する可能性も考えられるので、経営者は常に最新の情報を追っておきたい。

企業の本拠地によっては、自治体が実施する助成金制度も利用できるため、各エリアの情報を確認することも忘れないようにしよう。

福利厚生対策に役立つ法人保険

法人保険とは、保険会社が法人向けに提供している保険商品のこと。法人保険は万が一の事態に備えられるため、各従業員が「安心して働ける環境の整備」という形で福利厚生の強化につなげられる。

具体的な法人保険としては、従業員のケガや死亡に対して補償が発生する「生命保険」や、物損などに対して補償が発生する「損害保険」などが挙げられるだろう。たとえば、リスクの高い現場で作業をする従業員が多い企業、自動車を運転するケースが多い企業などでは、これらの法人保険の必要性が高いはずだ。

法人保険も福利厚生代行サービスと同じく、用意されているプランの幅が非常に広いため、自社の状況に最適な保険商品を選ぶことを意識しよう。

事例からチェック!中小企業が無理のない範囲で導入できる福利厚生

従業員にとって魅力的、かつ会社にとって効果的な福利厚生を整えるには、世の中の事例を知っておくことも重要だ。世の中には限られた資金を上手に活用し、無理のない範囲で福利厚生を充実させている中小企業が多く存在する。

そこで以下では、中小企業がぜひ参考にしたい3つの事例を紹介していこう。

1.妊婦から育児中のママまで幅広く支援/株式会社ランクアップ

化粧品を展開する株式会社ランクアップは、病児ベビーシッターと法人契約を結ぶことで働くママを積極的にサポートしている。たとえば、子どもが病気にかかってもベビーシッターが世話をしてくれるため、育児に追われがちな母親でも安心して仕事に取り組める。

ほかにもママランチ会やストレッチ教室の開催など、妊娠中から育児までを幅広く支援している点は、働く女性にとって大きな魅力と言えるだろう。その影響で社内の出産率・復職率は高い水準を誇っており、人材の定着につながっている。

これらの取り組みには一定のコストが発生するものの、優秀な人材が定着すればコスト以上のメリットを感じられる。近年叫ばれている「働き方改革」につながる点も、この事例の大きな魅力だろう。

2.仮眠タイムの導入/株式会社ヒューゴ

大阪府に本社を構える株式会社ヒューゴでは、「シエスタ」と呼ばれる制度を導入している。シエスタとは、午後1時~4時頃に休憩をとるスペインの習慣であり、同社でも各従業員に3時間の昼休みを与えている。

この福利厚生の最大の目的は、仮眠によって従業員のパフォーマンスを向上させる点だ。お腹が満たされた昼食後は集中力が続きにくいため、同社は思い切って休んでもらうために仮眠を積極的に推奨している。

3時間となると難しいかもしれないが、長めの休憩時間を設ける方法は多くの企業が取り組めるだろう。これも立派な福利厚生の一種であり、仕事の効率化や生産性のアップにつながっていく。

3.介護休暇・育児休暇の導入/サイボウズ株式会社

ベンチャー企業のサイボウズ株式会社は、介護支援・育児支援につながる福利厚生に力を入れている。2006年には、要介護状態を問わず利用できる介護休暇、男性でも気軽に利用できる育児休暇を導入した。

いずれの休暇制度も、期間は「最長で6年」と言うから驚きだ。この長期休暇制度を導入した影響で、同社は従業員の離職を食い止めることに成功している。

中でも「介護休暇制度」は、高齢社会に直面している日本ではますます必要性が高まる福利厚生と言えるだろう。

福利厚生を充実させる際の注意点

本記事では福利厚生の重要性を解説してきたが、実は福利厚生を充実させると企業側にはデメリットも発生する。具体的なデメリットとしては、主に以下の点が挙げられるだろう。

○福利厚生を充実させるデメリット
・コスト面での負担が生じる
・維持や管理に手間がかかる
・利用率が低いとコストが無駄になる など

どのような福利厚生を選んでも、基本的にはコストや手間が発生する。従業員の数が多いほど、そして福利厚生の規模が大きいほどコスト・手間も増大するので、福利厚生対策を進める前には綿密な計画を立てることが必須だ。

また、福利厚生によってすべての従業員を満足させることは難しい点も、事前にしっかりと理解しておきたいポイント。全従業員が満足する体制を整えようとすると、やはり膨大なコスト・手間が発生してしまう。中小企業にとってそれは現実的ではないため、いかに「効率よく効果的に福利厚生を充実させるか?」に重点を置くことが大切だ。

福利厚生対策に取り組む目的を明確にし、さらに従業員の特性・希望をしっかりと把握したうえで、利用率が高くなる福利厚生を効率的に導入していこう。

綿密な計画を立てたうえで、より効果的な福利厚生の導入を

福利厚生の導入にはコスト・手間がかかるものの、内容によってはそれ以上のメリットが生じる。たとえば、優秀な人材の獲得や定着につながれば、ある程度のコスト・手間がかかっても企業にとってはメリットのほうが大きいだろう。

ただし、より効果的な福利厚生を導入するには、事前に綿密な計画を立てなくてはならない。世の中の事例や福利厚生代行サービスに目を通すだけではなく、場合によっては従業員の実情をリサーチするような必要性も出てくる。

かけたコスト・手間を無駄にしないためにも、じっくりと計画を考えながら実行に移していこう。

文・THE OWNER編集部