(本記事は、小宮 一慶の著書『伸びる会社、沈む会社の見分け方』PHP研究所の中から一部を抜粋・編集しています)

伸びる会社、沈む会社の見分け方
小宮 一慶(こみや・かずよし)
経営コンサルタント。株式会社小宮コンサルタンツ代表。十数社の非常勤取締役や監査役、顧問も務める。1957年、大阪府堺市生まれ。1981年、京都大学法学部卒業。東京銀行に入行。1984年7月から2年間、米国ダートマス大学経営大学院に留学。MBA取得。帰国後、同行で経営戦略情報システムやM&Aに携わったのち、岡本アソシエイツ取締役に転じ、国際コンサルティングにあたる。その間の1993年初夏には、カンボジアPKOに国際選挙監視員として参加。1994年5月からは、日本福祉サービス(現セントケア)企画部長として在宅介護の問題に取り組む。1996年に小宮コンサルタンツを設立し、現在に至る。
著書に、『社長の心得』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『経営者の教科書』(ダイヤモンド社)、『図解「ROEって何?」という人のための経営指標の教科書』『図解「PERって何?」という人のための投資指標の教科書』(ともにPHP研究所)など多数。

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CMや広告に注意してみると

CM,見かけなくなった
(画像=sdecoret/Shutterstock.com)

○ 売れる理由が一目で分かる伝え方をしている会社は◎
× いつのまにかCMが消えた会社はヤバい

▼急にコマーシャルを見かけなくなった会社はどこか

テレビコマーシャルは、作るのにも流すのにもたいへんお金がかかります。ですから、テレビのスポットCMを見ていると、会社の栄枯盛衰がよく分かります。

急成長して羽振りの良い会社がバンバンとCMを流すようになることもあれば、いつのまにかCMがまったく消えてしまったということもあります。

業績が悪くなると、CMの本数が減ります。一気にCM出稿が止まってしまった会社は危ないですね。また、CMを新しく作って流してはいるものの、以前に比べるとコストを削減していることが歴然と分かるようなケースもよくあります。

CMは世相を反映しやすいので、「最近は銀行や証券関係のCMが減ったなあ」といった業界全体の傾向も分かります。いまコマーシャルが圧倒的に多いのは、スマホゲーム業界です。たいへん儲かっている分野だということです。

ただし、業界、業態によって、テレビCM、紙媒体の宣伝広告、ネット広告、どこにどのようなかたちで広告を打つことが有効かというのは違ってきます。世の中の流れとしてテレビ離れが進み、いまやテレビCMは広告宣伝の主力ではなくなりつつあります。デジタル広告がどんどん隆盛になってきていますから、テレビCMだけを見て、その会社が伸びている、沈んでいると単純に決めつけることはできません。

しかし、CMをはじめ広告宣伝は、その会社の姿勢や他社との差異がけっこう浮き彫りになるので、そこから企業の特性を観察してみると面白いと思います。

▼同業他社とどう違う?

昨年から今年にかけて、あるメガバンクの「ATMおよびオンラインサービスの一時休止」というテレビコマーシャルを何度も見かけました。システム移行のためということですが、連休となる週末をはさんで数日間ストップすることが何度もあるのです。利用者にとっては、非常に不便なことです。

なぜ、他のメガバンクではそのようなことはないのに、そこの銀行だけ何度も休まなくてはシステム変更ができないのか。実は、合併により今の会社になったので、全社一貫システムができていなかったといいますが、大手金融機関はどこも何度も再編が行われており、合併があったのはその銀行だけではありません。

金融機関のシステムというのは、どこもコンピューターのベンダーとシステムエンジニアによって構築されていて、そこだけが特別なシステムだとは考えられません。

私は、これはおそらくシステムだけの問題ではなく、経営そのものがおかしいのではないかと考えました。実際、その会社の業績を見ると、明らかに他のメガバンクより劣ります。

このように、「同業他社と比べて、どこが違うか」「他社でやっていないようなことをやっているのはなぜか」という目で見ると、その会社の姿勢や能力に対して気づきが生まれます。これはCMだけでなく、ネット広告でも、新聞や雑誌の広告やチラシでもそうです。

いま例に挙げたのはよくない意味での他社との違いですが、その逆で「他社ではできないことが、その会社はできている」というところもあります。これこそわが社の強みですと、自信を持ってアピールできている会社は伸びる会社です。

ホームページをチェック

CM,見かけなくなった
(画像=PIXTA)

○見やすくて、大事なことがきちんと書かれている会社は誠実
×ホームページがない、あっても情報が古い会社は成長が望めない

▼お客さまに情報を開示しようとする「誠意」が欠けている

このネット全盛時代に、ホームページを開設していない会社というのは、今後の成長性を期待することができません。お客さまに情報を提供していない会社だからです。

どういうことをやっているどんな会社なのか知りたいと思ったら、いまは誰もがまずネット検索をします。ネット上にホームページがない会社は、よっぽど時代遅れの感覚しかないか、あるいは、お客さまや求職者に情報を開示しようとする「誠意」が欠けているかのどちらかです。いずれにしても、伸びる会社とは言いがたいです。

ホームページがあることはあるけれど、情報が古いとか、あまり更新されていないというのも、会社のことをきちんと知ってもらおうとする意識が薄いということです。

▼見やすく使いやすいか

業種によっても、またホームページの目的によっても作りは違ってくるでしょうが、大事なポイントは、「見やすさ」です。

どこに何が書いてあるのか、どこを開けばすばやく目的に行きつくことができるのか、それが分かりやすく作られているホームページだと、ストレスが少ない。つまり、利用する人に対して誠実な会社だと言えます。

ホームページから商品を購入したりサービスの利用をしたりする場合、使いやすいかどうかはとくに大事です。

私は仕事で全国あちこちに移動する機会が多いので、航空会社のホームページをよく利用しますが、使いやすい会社とそうでない会社とがあります。

そうすると、やはりホームページで目的の情報やページにすっとアクセスしやすい会社を選びたくなります。実際に飛行機に乗ったときのサービス以前の問題として、サイトの使いやすさが勝負の分かれ目となっているのです。

会社の経営理念やビジョンが示されているかも大事です。求人の際、理念やビジョンに共感・共鳴して応募してくる人を獲得できるということは、会社にとって非常に有益なことです。職種や給料、勤務地といったことだけに惹かれて応募してくる人よりも、良い仲間になれる可能性が高いからです。また、ビジョンや理念に共感していただける方がお客さまとなっていただけるのも有難いことです。

公式ホームページを見ても、どこにも大事な基本情報が載っていない、ときには代表者名さえも載っていないような会社があります。それは情報を開示したくない理由がなにかある「ワケあり会社」だと見て間違いありません。

ホームページは、その会社の事業内容とともに、誠実さを手っ取り早く知ることができるツールです。(提供:ZUU online