経営者やビジネスパーソンに愛され続けるゴルフは、接待手段として利用しやすく、しかも会社の経費になるなど経営上のメリットは大きい。しかし、明確な目的を持たず、いつものメンバーの交流の場として活用し続けているのであれば、実はそれほど経営上のプラスにはなっていないのかもしれない。会社の業務との関連性の薄い仲間うちのゴルフであれば、経費にすることも危うい。
もちろん、ゴルフを経費にすることよりも、相談相手となってくれる経営者との出会いの場としての価値や、最新の経営情報を収集するための交流の場としての価値を重視する経営者もいるだろう。しかし残念なことに、ゴルフ人口は減少に向かっている。
この記事では、経費になるゴルフ代、経費にならないゴルフ代の判別方法を解説するとともに、地方経営者における経営相談相手の確保や情報収集の重要性を考慮した上で、あえてゴルフによる交流のデメリットを考えてみる。
目次
ゴルフ代金のうち経費になるものとならないもの
まずはゴルフ代金のうち、経費になるものとならないものを解説する。
接待目的のゴルフ代なら経費になる
接待目的のゴルフ代やゴルフコンペの参加費用は、接待相手が事業に関係のある者(取引先や顧客)であれば、その全額が接待交際費として、会社や個人事業の経費になる。 接待交際費として経費になるゴルフの費用とは、ゴルフのプレー代、ゴルフ場への交通費、ゴルフに伴う会食費などだ。
【接待目的のゴルフ代のうち経費にならないもの】
・業務の遂行上関係のない相手とのゴルフプレー代・交通費や会食費
・中小法人(期末の資本金等が1億円以下)で、すべての接待交際費のうち年800万円を超える部分(年800万円の代わりに「接待飲食費×50%」を上限とすることも可)
ゴルフ用品(ゴルフクラブやボールなど)も経費になる
ゴルフクラブやボールなどのゴルフ用品代が経費になるかどうかは、そのゴルフ用品の用途で判断される。
たとえば、会社で購入したゴルフ用品であり、会社のゴルフ接待のためだけに使用するものとして社内で管理しているようなゴルフ用品代であれば、経費になると考えられる。
ゴルフ用品代が経費になる場合、1セット10万円未満であれば全額をその年度の経費(消耗品費など)とする。「10万円未満」の判定は、1セットで機能するものは1セットで判断しなければならないため、ゴルフクラブのセットを購入した場合は、1セットの代金で判定する。
1セット10万円を超える場合は、青色申告者の特例(30万円未満までの資産をその年度の経費にできる特例)や一括償却資産(20万円未満までの資産を3年均等償却で経費にできる扱い)を利用するか、器具備品に資産計上して耐用年数(ゴルフクラブなら8年、その他であれば3年で検討)で経費(減価償却費)にすることとなる。
なお、ゴルフボール代については、比較的少額であることから、ゴルフプレー代と同じ考え方によって、使用の都度、接待交際費として経費にしても問題はないだろう。
【ゴルフ用品のうち経費にならないもの】
・社長などが私物としても使うゴルフ用品代
・個人事業主のゴルフ用品代(絶対に経費にならないというわけではないが、顧問税理士への相談がおすすめ)
ゴルフ会員権によってゴルフをしている場合
ゴルフ会員権とは、会員制のゴルフ場の利用権のことである。ゴルフ場経営の資金調達のために発行されるもので、売買市場は発達しており、資産価値も認められる権利だ。このゴルフ会員権の名義人になると、入会時に入会金と名義書換料、その後は年会費や年決めのロッカー料金などが発生する。ゴルフ会員権によるこれらの諸費用についても、経費になる場合とならない場合がある。
【ゴルフ会員権(入会金)の経費処理について】
まず、ゴルフ会員権の会員名が法人名義であれば、入会金は法人の資産として計上する。ただし、資産として計上しても、ゴルフ会員権は減価償却の対象にならないため、保有中は減価償却費による経費にはならない。
ゴルフ会員を退会する際に入会金が返還されなければ、退会時において、返還されない金額分を経費にすることができる。なお、一定のケースでは、期末に評価損を計上できる場合があるが、今回は省略する。
これに対し、ゴルフ会員権が個人名義であれば、入会金は、個人会員に対する給与となる。給与になる場合、経費になる場合もあれば、役員給与に該当するため経費にならない(損金不算入となる)場合もある。
【ゴルフ会員権(年会費、年決めロッカー等)の経費処理について】
ゴルフ会員権の名義書換料、年会費や年決めのロッカー料金等が経費になるかどうかは、入会金の処理によって変わる。ゴルフ会員権の入会金が資産計上されるケースでは接待交際費等に、給与になるケースでは給与となる。
なお、ゴルフ会員権にかかわる諸費用の処理がどのように行われていても、ゴルフ会員権に関係なくゴルフプレーに直接かかる費用は、業務遂行上必要であれば接待交際費等として経費になる。(前述の「接待目的のゴルフ代」と同じ)
経営者にとってのゴルフのメリット4つ
ゴルフは、それまで接点のなかった経営者との交流の場として活用できるチャンスのあるスポーツだ。ここでは、経営者にとってのゴルフのメリットを4つ紹介する。
メリット(1):ゴルフは経営者同士の情報交換の場になる
ゴルフは、経営者などのハイスペックな人に好まれやすいスポーツだと言われている。理由として、ゴルフは戦略が重要となるため、経営に似ているからという意見があるようだ。
ゴルフを続けることで他の経営者と交流するきっかけを掴みやすく、業界の新しい情報や経営に関する助言などを得るチャンスにつなげられる。また、ゴルフ場は地方にも多く分布しているため、地方の経営者にとっても利用しやすい情報収集の手段になり得る。
メリット(2):接待方法として有効
ゴルフによる接待は、ビジネス上の良好な関係づくりにも有効といわれている。
ゴルフは自然の中で行われるため、たとえば繁華街の飲食店などでは得られない解放感を共有できる。また、半日以上も同じメンバーと行動をともにするため、お互いの人間性に触れる機会も多く、親しくなれることが多い。
うまく活用すれば、ビジネスの相手との良好な関係を維持したり、新しいチャンスを発見したりすることができるだろう。
メリット(3):ゴルフ代金が経費になる
前述のとおり、取引先や顧客との接待目的のゴルフ代は経費になる。また、ゴルフ会員権でゴルフプレーをしている場合でも一定範囲の費用は経費になる。
メリット(4):ゴルフは運動になる
スポーツとしてのゴルフは、健康維持のための運動にも活用できる。屋外で行うことから、コロナ禍でも比較的取り組みやすいといえるだろう。
経営者にとってのゴルフのデメリット4つ
ゴルフには、プレー人口が減少しているなどの明るくない情報もある。ここでは、経営者にとってのゴルフのデメリットも紹介する。
デメリット(1):経費にならないゴルフ代もある
前述のとおり、ゴルフ代であっても経費にならないものがある。特に、私的なゴルフとの境界線が曖昧なケースでは、税務調査で否認されることもあるため、顧問税理士とよく相談した上で経費にするかどうか判断することが大切である。
デメリット(2):ゴルフ人口が減少傾向にある
ゴルフ人口は減少傾向にあり、ピークとされるバブル崩壊後に比べて半減しているというデータもある。20代の若年層でゴルフが再燃している動きも見られるが、団塊世代のゴルフプレーヤーの引退と重なる時期であり、しばらく減少は避けられないようだ。
ゴルフ人口がこのまま減少を続ければ、経営者の情報交換に活用できるという価値も失われていく可能性がある。
デメリット(3):交流できる相手が限られる
ゴルフは、経営者などのハイスペックな人に好まれやすいと言われるが、その一方で、ゴルフをしない経営者が多数いることも事実だ。ゴルフのみでは、それらの経営者と交流する直接のチャンスにはならない。
また、ゴルフで交流をするにはゴルフ場に集うという場所的な制約があるため、交流できるのはその地域の経営者に限られる。特に、経営者の数が都市部よりも少ない地方では、固定メンバーの集まりと化し、本当に必要な業界からの情報収集や、自社の成長ステージに近い経営者との交流の場として活用できていない可能性もあるのではないだろうか。
デメリット(4):健康維持のためならゴルフ以外の選択肢も
ゴルフは健康維持のための運動としても活用できるが、その目的を達成したいのなら、好きな時間に、屋内で有酸素運動を思う存分できるスポーツジムのほうが良いと感じる人もいるだろう。
ゴルフではなく経営者同士のネットワークづくりや情報交換が必要
多くの経営者にとって、相談相手として期待されているのは「経営者仲間」である。
「2020年版小規模企業白書」によると、中小企業に対して経営課題別に、もっとも期待する相談相手は誰なのかを尋ねるアンケート調査を行ったところ、「営業・販路開拓」、「技術・研究開発」といった、企業の売上高に直結する項目において「同業種の経営者仲間」と回答した経営者が多かった。
似た選択肢である「異業種の経営者仲間」よりも圧倒的に多くの経営者が選択している。
(参考)2020年版小規模企業白書
孤独といわれる経営者にとって、経営の要といえる営業や開発方針の舵取りの場面では、目的や立場が近い者の意見を聞きたいということだろう。
しかし、このような相談相手がいない場合は、どうすればよいだろうか。また、地方の企業では、人口減少に伴う需要の減少や人材不足など、個の企業の力ではどうしようもない経営環境の悪化に直面している経営者もいるはずだ。
そのような課題に立ち向かうには、「地方を盛り上げたい」と考える、同様の課題を抱えた地域の経営者とのネットワーク構築や、その地域への進出や自社の製品やサービスに魅力を感じている都心部の経営者との情報交換が鍵になるだろう。
地方経営者が効果的に情報を収集するゴルフ以外の方法3つ
地方経営者のネットワークづくりや経営者同士との情報交換の手段として効果的な方法に、下記の方法がある。
1.経営者のコミュニティに加入する
経営者用のオンラインのコミュニティに参加することで、さまざまな地域の経営者と必要な情報を交換できる。また、アイデアや取り組み事例のある経営者は、その情報をコミュニティで発信することによって、多くの経営者の助けになるとともに共感してくれる経営者に出会えるだろう。
2.経営者向けのセミナーに参加する
関心のあるテーマのセミナーに参加することで、同じ問題意識をもつ経営者との人脈づくりに活用できる。
3.専門家による経営支援を受ける
売上減少や利益増大など、企業の財政や業績の改善は、専門家の支援で解決できる可能性がある。特に、行政主導の専門家支援については補助金制度も拡充しつつあるため、このような情報も随時収集しておくとよいだろう。
経費になるゴルフよりも効果的な方法で経営者仲間を見つけよう
地方の企業は、その地域の雇用の受け皿として、長年にわたり貢献し続けている場合が多い。そのような地方企業が経営環境の悪化によって悩んだり、経営が続けられなくなったりすることは、日本にとって大きな損失である。
ともに走り続けることができる経営者仲間を早めに見つけ、経営も人生も、今よりもっと豊かなものにしていただきたい。
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