矢野経済研究所
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製薬企業の研究開発の重点分野・領域は、がんや中枢神経系、免疫系疾患に集中

~CROでは一括受託に加え、小規模品目、グローバル、新たなサービス対応などが今後求められる~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越 孝)は、国内の製薬企業の研究開発戦略、CRO市場およびSMO市場を調査し、参入企業動向、将来展望を明らかにした。

1.市場概況

2021年度における国内主要製薬企業の業績は、2021年4月に行われた薬価改定やジェネリック医薬品の使用促進などに伴い、国内事業は苦戦を強いられているものの、大手企業についてはグローバル新薬の売上拡大などを背景に総じて堅調に推移しており、増収増益の企業も多く、全体としてはコロナ禍以前の2019年度の水準を上回った形となった。一方、国内市場を中心に展開する中堅製薬企業については伸び悩む企業も多く、厳しい状況が続いている。
そうした中で、製薬企業各社は高度な技術を応用し画期的新薬の開発を目指しており、研究開発費も総じて増加傾向にある。新薬の研究開発には長期間を要する他、さらに近年は新薬創出の難易度がますます高まっており、とくに開発段階での臨床試験費用(アウトソーシングの費用)の増加が製薬企業にとっては大きな負担となっている。
しかし、革新的医薬品創出を実現するための研究開発投資は製薬企業の生命線であり、今後も投資金額規模は拡大すると見込まれる。革新的医薬品の創出に経営資源を集中するため、各社は製造施設、長期収載品やジェネリック医薬品事業の譲渡などを進めている。

2.注目トピック

ポストコロナの治験として注目を集めるDCT(分散化臨床試験)

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、オンラインや被験者(患者)の自宅訪問などにより、医療機関に来院しない、もしくは来院回数を減らした臨床試験(治験)の取り組みが医療機関やCRO(医薬品開発業務受託機関)等で検討されている。その中で注目を集めているものが、DCT(分散化臨床試験:Decentralized Clinical Trial)である。

DCTとは、医療機関で行われていた治験に関する項目を患者の自宅などに分散化させることで、定期的に来院しなくても臨床試験に参加できるようになる仕組みである。従来、来院や対面が前提である医療行為などが、デジタル技術の進歩および普及によって、オンライン診療など様々な形で提供が可能となっている。こうした流れを背景に、DCTでは治験などもスマートフォンやウェアラブル端末を用いて対面を前提としない方法で実施できる。治験を実施する際には、患者に応募をしてもらい、参加が決定した場合は内容や今後の流れなどを説明する必要があるが、これらを対面で行う必要はなく、インターネットやビデオ通話によって患者の自宅で行うことが可能である。また、治験では患者に対して検査や投薬を行うが、これらも検査キットがあれば郵送で自宅まで届け、医師からの投薬に関する説明もオンライン診療を利用して自宅で受けることが可能となっている。

コロナ禍で改めてこのDCTという手法が注目されるようになり、CROもグループ関連企業などでDCT領域への取り組みを進めつつある。一方で、こうしたことが1、2年で急激に変化した為、プライバシーの問題や明確な基準の整備などが追いついておらず、現場の判断に頼るところも少なくないため、医療機関側の負担は増加している。また、患者にも心理的な壁があり、「対面の方が安心」「オンライン診療は不安」という意見も少なくないのが実情である。このような法的な課題、心理的な課題などを乗り越える必要があるが、DCTが活発になれば予防や治療方法の選択肢が増えることになると期待が集まっている。DCT支援サービス企業でも各種の取り組みが活発化しており、今後の動向が注目される。

3.将来展望

製薬企業では、治験のモニタリングだけではなく、臨床試験の一連の業務を一括してCROに発注するニーズが高まっている。CROがこうしたニーズに対応するためには、事業規模の拡大が必要となったことで、業界再編が進展してきた。こうした傾向は今後も継続すると見込まれるが、事業規模の急激な拡大は難しいものの高い専門性を持っていたり、特定分野に強いなどの特徴を持つCROは、小規模でも生き残る可能性は高い。

また、今後、製薬企業の開発品目が大規模から小規模品目、オーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)などに重心を移し、IT化への対応を含め治験の効率化が図られれば、CROにおける臨床開発モニター(CRA : Clinical Research Associate)の人員数に対する重要性は低下することになる。CRO業界では、国際共同治験などの海外対応や新たなサービス展開の必要性が高まっているため、海外企業や異業種企業など自社では持ち合わせていないノウハウを持つ企業との提携、買収などが増加する可能性が高い。

調査要綱

1.調査期間: 2022年7月~9月
2.調査対象: 製薬企業、CRO(医薬品開発業務受託機関)、SMO(治験施設支援機関)
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話・e-mailによるヒアリング調査、ならびに文献調査併用
<市場に含まれる商品・サービス>
製薬企業の研究開発戦略、CRO、SMO

出典資料について

資料名2022年版 製薬企業の研究開発戦略およびCRO・SMOの実態と展望
発刊日2022年09月29日
体裁A4 164ページ
価格(税込)165,000円 (本体価格 150,000円)

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