定量評価が大切な理由

評価制度には定量評価と定性評価の2種類があります。数字で表すことができるデータをもとにした評価が定量評価であり、数値では測れない言動に対する評価が定性評価です。識学社では、評価制度は定量評価でなければならないとお伝えしています。本記事では、定性評価との比較を通じて、なぜ定量評価が大切なのかを説明していきます。

目次

  1. 定量評価は可否が明確
  2. おすすめは3カ月ごとのゴール設定
  3. マーケットは頑張りを評価しない
  4. 評価とルールを使い分ける

定量評価は可否が明確

定量評価は、誰から見ても可か不可かが明確であり、社員の間でその認識がずれません。平等で、公平に評価をすることができます。

評価でもめることもないですし、評価の内容を個別に説明したり、部下に納得を求めたりするという作業もなくなります。また、評価プロセスが極めてシンプルになります。誰が評価しても同じ点数なので、評価者も直属の上司一人で運用可能です。

これに対し、定性評価だと、その人の能力や仕事の取り組み方を評価するので、上司の主観がどうしても入ってしまいます。悪気はなくとも、えこひいきが起きてしまうのではないでしょうか。

評価に納得できないと主張する社員の評価が高くなったり、経過アピールをしてくる社員が優遇されたり、戦略実行とは無関係なことで評価がなされてしまいかねません。定性評価では、平等、公平に不特定多数の社員を評価することは不可能です。

さらに、定性評価は個人の判断が入るので、平等性を別の方法で担保する動きを取ろうとします。例えば、一次評価者、二次評価者、最終評価者のように複数の人が評価を繰り返すアプローチです。

管理職は配下の社員をすべて評価しなければならず、時間と労力がかかります。また、評価を決めるのも自己判断が求められるので煩雑です。社員に評価の公平性を個別面談で説明するという作業にも時間を取られてしまうのです。

おすすめは3カ月ごとのゴール設定

定量評価のやり方は、期限とそのときに達成しているべき事実を設定し、その達成度合いによって点数を付けるというものです。お薦めしているのは3カ月ごとにゴール設定をすることです。点数は3カ月でリセットし、次のゴールに向けて項目の修正をしていきます。

正しいゴール設定がされていると、社員がその結果を達成したならば、会社が予定通りのスピードで成長します。誤ったゴール設定では、社員がそのゴールを達成しているのに会社の成長スピードが遅かったり、あるいは社員がそのゴールを達成していなくても会社が成長したりするということが起きてきます。

何を3カ月後のゴールとするかはまさに会社の成長戦略そのものです。この点からも、3カ月ごとに軌道修正を測ることが大事です。

会社の戦略と評価項目を極めて連動性の高い状態で運用することは、会社の成長に直結します。定性評価だと、協調性や積極性など普遍的な項目が評価されることになります。しかも、それらは戦略実行に直接関係ないものばかりとなってしまいやすいです。

マーケットは頑張りを評価しない

会社もマーケットから評価されている立場です。では、マーケットは会社の定性的な部分、例えば、社員が頑張っているかなどを評価するでしょうか。もちろんしません。

マーケットは会社が社会に提供した物理的な価値を評価します。いかに社員が真面目に頑張っているといっても、提供されるサービスや商品の質が悪ければその会社は目を向けてもらえないのです。

会社がマーケットに提示する大きな価値は、社員一人ひとりが実現する定量的な結果の積み重ねです。社内で社員の定性面を評価すると、社員が具体的な事実、結果をつくり出すのではなく、よりよい結果をアピールするようになります。そうなると会社のパフォーマンスも落ちてきてしまいます。

マーケットが会社を評価する軸と、社内の評価を合わせる必要があります。すなわち、評価は定量評価に統一すべきなのです。

評価とルールを使い分ける

目の前で部下が頑張っていたら、その頑張りも評価してやりたいと感じるかもしれません。ただ、それを制度として採用すると、不公平や不平等につながります。部下にとっての優先順位が、戦略実行ではなく個人として認められることや上司から好かれること、認められることなどにずれてくることが想定されます。だからこそ、定量評価で社内評価制度は整えていくべきなのです。

ただ、「誠実な顧客対応をすることが求められる職において、それをどのように数字で評価したらよいか」といったことを疑問に思う方がいるでしょう。これは、誠実な顧客対応をしていれば実現できる事実をルール化します。「お客様が店内にいらっしゃったら、立ち止まって手を前に組み、30度のお辞儀をすること」や「お客様からいただいたメールは24時間以内に必ず返信すること」などです。

難易度がないものですので、明確なルール化をすることで、社員全体の行動が整ってきます。評価とルールを使い分けることが重要で、難易度があるものを評価し、難易度のないものはルールとして整備します。ルールは組織の基準ですので、ルールが整い、社員が毎日守っていくと、そのルールは会社の文化になります。

評価は定量、定性面はルールで定義。このアプローチで社員の生産性を高める土台ができてくるので、ぜひ自社の評価制度を見直してみてください。