2018年5月に株式会社RuGu(ルーグー)として設立し、2021年8月に社名変更した株式会社BLANC(ブランク)は、最新式のトレーラーハウス型ホテルを運営する企業だ。トレーラーハウスは建築物には該当しないため、自然公園内など建築規制のかかる場所にも設置ができ、宿泊客はこれまで滞在することのできなかった自然の中で過ごすことができる。宮古島の離島である来間島にオープンしたRugu Glamping Resortは宿泊客から高い評価を得ており、今回、BLANC FUJIという新たな施設の立ちあげに際して「ソーシャルレンディング」の活用を開始した。「大自然の中で思考の余白を生んでほしい」と語る山中拓也代表取締役CEOに、自然共生への想いやトレーラーハウス型ホテルの特徴、将来性について聞いた。
自然の中で快適に滞在できる施設づくり
――2018年に株式会社BLANCの前身にあたる株式会社RuGuを設立されました。その経緯を教えてください。
初めて訪れた宮古島のある土地との出会いがきっかけです。当時2018年の宮古島は、新しい空港(下地島空港)の開港に伴って、島全体が開発ラッシュでバブルのような状況でした。そんな中、ご縁があり紹介された土地には、半径1キロ以内に民家すら見当たらない、ありのままの大自然が広がっていました。
その土地にテントを張りキャンプをした夜、人生で一番の満天の星を見ました。こんな場所に滞在できる場があったら最高だと感じ、ホテルの構想をはじめました。「美しい自然を残すこと」と「自然を活かしながら人が訪れる場を作ること」の葛藤の中で、自然と共生しながら美しい自然を堪能できる場所を作るというコンセプトが生まれました。
実際にホテルをつくるにあたってどんな形が良いかを考え、客室になり得るあらゆるプロダクトを比較しました。テントからトレーラーハウス、コンテナハウス、キャンピングカー、建築などあらゆるものを比較し、自然を最大限残しつつ、過酷な自然環境の中で快適に過ごせる客室として、トレーラーハウスが最適だという結論に達しました。
――新たに計画されているBLANC FUJIについて聞かせてください。
山梨県富士吉田市の6000㎡ほどの土地に、11室からなるホテル「BLANC FUJI」をつくることを計画しています。このプロジェクトは、山梨県からの紹介で出会った地主さんとのご縁からスタートしました。
ここは建築規制により長年利用されなかった土地でした。富士山を一望でき、森に囲まれたローケーション、そして土地を縦断する富士の雪解け水が流れる桂川が特徴的な場所で、初めて訪れた時にここでホテルを作ると決めていました。
プライベートサウナ、客室露天風呂が付いたスイートタイプの客室をはじめ、富士の土地の食材を使ったフルコースが堪能できるレストラン、桂川を水風呂として活用したアウトドアサウナ、余白を象徴する巨大ハンモックなどが楽しめます。
――ホテル開発時の資金調達はどのようにされているのでしょうか。
弊社のホテルの客室はすべて独立型のトレーラーハウスで構成されており、その1棟1棟にオーナーがいます。企画パースの段階でオーナーを募集し、一定の数が埋まり次第、開発をスタートするという流れになります。
オーナーは別荘としての利用はもちろんのこと、想定8.4−10.3%程度の利回りと4年償却による節税効果が得られます。お問い合わせも多く、宮古島のケースでは募集開始から2週間ほどで16棟が完売しました。BLANC FUJIでも現在、第二期のオーナー募集を行っています。
>>>自然豊かな土地に最新式ホテルを建設するBLANCのソーシャルレンディングについて詳細を見る
BLANCのホテルの特徴
――BLANCのトレーラーハウスの特徴を教えてください。
実は、既存のトレーラーハウスのイメージに引っ張られてほしくないため、客室にトレーラーハウスを使っていることはあまり公開していません。既成概念にとらわれずに、これまでにない全く新しい客室プロダクトを作るために、仕様からすべて自社で設計しています。
特徴は大きく①マイクロディべロップメントの追求、②自然と調和するデザイン、③建築を超える快適さの追求 の3つがあります。
①マイクロディベロップメントとは、最低限のダメージで客室を作ることを意味します。現在滋賀県立大学と共同研究で自立循環型客室のCirculla(サキュラ)を開発しています。建築をインフラから解放し、最大限自然に迫り共生することを目指しています。
②のデザイン性については、自然と調和するデザイン性を追求しています。人工物であるトレーラーに自然物や曲線をうまく採り入れ、自然と融合した独自の世界観を演出することを目指しています。
③の快適さについては、厳しい自然の中でいかに快適に過ごせるかを追求しています。トレーラーハウスと言っても、建築物に車輪が付いたものであり、狭小空間だからこそ断熱性や湿度管理は簡単にできるものと捉えています。
――トレーラーハウスの安全基準はいかがでしょうか。
建築物の下にタイヤが付いていて移動できるもの、というのがトレーラーハウスの大まかな定義でして、実際の建築とほぼ同じ工程を踏んでいます。宮古島の施設では、開設後の2019年9月、宮古空港における観測史上2番目となる最大瞬間風速61.2mという台風の直撃を受けましたが、それにも耐えました。
火事などに関して言うと、建築物にはあたらないものの、旅館業法の厳しい基準、消防法や保健所の審査などをすべてクリアしています。
――施設の耐久性や、オーナーさんにとっての出口戦略についてもご説明いただけますでしょうか。
耐年数は一般的には25年程度と言われていますが、設置環境によっても大きく異なると考えています。弊社のホテルオーナー制度では途中で売却することも可能で、ご自身で買い手を見つけていただいてもいいですし、弊社でセカンダリーのマーケットを作ることも考えています。年数が経過したトレーラーハウスはその分償却期間が短くなり、さらに節税ニーズが高まるため、売却は十分可能であると考えています。
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「余白」という言葉にこめた想い
――2021年8月に株式会社RuGuから株式会社BLANCへと社名変更されました。その理由を教えてください。
「ブランク」は「余白」という意味で、余白を作ることが弊社の根底にあるコンセプトとなっています。
私たちは宿泊業の文脈をエンターテイメントからウェルビーイングに再定義し、訪れた方の「思考の余白」を生むことから逆算してクリエイティブやコンテンツを設計しています。
現代社会の中で固定化した思考によって失われた人間性を取り戻すために、自然の中で普段とは全く違う時間を、何も気にせず過ごしてもらうための場を作っています。
例えば山梨に開発しているBLANC FUJIにはプライベートサウナ付きの客室を作っていますが、私たちにとってサウナとは「思考の強制シャットダウン装置」であり、普段のことはすべて忘れて過ごしてもらうためのコンテンツの一つになっています。
より余白を追求していくために、これからはインフラが通っていないような野ざらしの自然の中にも入っていきたいと考えています。ちなみに、ブランクの綴りは本来「BLANK」なのですが、最後を「C」にして「BLANC」としています。これは「Collaboration」、「Circulation」、「Contemplation」という3つの「C」を表しています。
「Collaboration」は「協創の余白」で、不完全な存在である我々が地域と連携して、我々だけで完結しない場所を作っていくということです「Circulation」は「循環の余白」で、自然と共生するということ。最後の「Contemplation」は「思考の余白」で、先ほどお話した私たちが目指すウェルビーイングの文脈で再定義した価値にあたります。
――社名変更と同じタイミングで資金調達もされています。
余白を作るという価値観がかたまった時に、単なるいちホテルで終わらせず、全国に広げていくべきだと考えるようになりました。窮屈な現代社会の中で偏った思考に陥ることによるストレスや精神病は私たちがアプローチすべき社会問題として捉えています。思考の余白を生むことで、幸福度や創造性の向上に寄与できると信じています。
ただし事業として、組織としてドライブしていくためには資金を集めなければなりません。コロナ禍で相当のダメージを受け、足元が揺らいでいる状況でしたが、BREW株式会社の小原代表にお声がけいただき資金調達に至りました。
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ソーシャルレンディングで出会いを広げたい
――ソーシャルレンディング実施を決めた理由を教えてください。
より多くの方に弊社のことを知ってほしいというのが実施の一番の目的です。オーナー制度にご参画いただける方、ご宿泊に来てくださる方、地域で連携いただける方など、想いに共感いただける方といろいろな形でご一緒できればいいなと思っています。
6月からBLANC FUJIの先行試作棟の着工が始まっているのですが、実際に投資していただく資金は、試作棟の建設や、各客室の外装に活用したいと考えています。
――今後の事業構想を教えてください。
BLANCの施設を2年間で100棟作りたいと考えています。今のところ候補地は6カ所あり、主に自然公園等に指定されているエリアを候補地に考えています。
また、より自然の中に迫る自立循環型客室プロダクトの開発もスタートし、新たな事業にも着手したいと考えております。