(写真=vectorfusionart/Shutterstock.com)

消費の主役として注目、拡大するシニア関連市場

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、2017年のシニア関連市場を調査し、業界別の動向と企業戦略を明らかにした。

シニア関連主要マーケットの市場規模

シニア関連主要マーケットの市場規模

1.市場概況

今回算出した2017年のシニア関連主要マーケットの総市場は、50兆5,673億円と前年比2.0%の増加となっている。

大分類によるカテゴリー別にみると、介護・リハビリ市場が前年比1.1%増、住宅市場が同7.3%増、宅配市場が同3.2%増、各種支援サービス市場が同5.5%増、旅行市場が同2.2%増、スポーツ市場が同1.2%増、娯楽市場が同0.4%増、趣味・習い事市場が同1.3%減、食品・外食市場が同1.6%増、衣料品・日用品市場が同2.8%増、家電・情報機器市場が同21.6%増などとなっており、趣味・習い事市場を除く全ての市場でプラスとなっている。

さらに、シニアに特化した市場を小分類で見ると、「見守りサービス」「シニア向け婚活支援・マッチングサービス」「クルーズツアー」「シニア家電」「シニア向け携帯電話・スマートフォン」などが2ケタ増となっているほか、「訪問看護」「訪問リハビリテーション」「有料老人ホーム」「サービス付き高齢者向け住宅」「グループホーム」「在宅配食サービス・宅配弁当」「シニア向け化粧品」「大人用紙おむつ」などの市場の伸びが目立っている。

2.注目トピック

多様な業界で加速するシニアシフト

シニア層をターゲットとした各種ビジネスが注目を集めている。高齢化の進展により高齢者人口の増加が続いていることに加え、彼らは住宅ローンや教育費などを抱えておらず、自由に使えるお金を持っている。また、多くのシニアはリタイア後や子育て終了後の自由な時間を持っており、お金だけでなく時間もある。そのため、レジャーや教育など、時間消費型の分野の消費に関しても期待されている。

少子化により若い世代の人口が減っていることに加え、若者や女性、ファミリーなど、従来のトレンドをけん引してきた主力消費層の購買力は低下傾向が続いている。そのため、一層シニア世代の購買力がクローズアップされるようになってきている。

シニア層は収入の拡大は期待できないが、十分な資産を持っている。1億円以上の資産家は世界で600万人いると言われているが、そのうち150万人は日本にいるという。そうした富裕層の多くはシニア世代に属しており、1,800兆円超の日本の個人金融資産も、その過半は60歳以上が所有しているとされる。

加えて、アクティブシニアと呼ばれるように、最近の高齢者は活動的である。かつての高齢者は行わなかったような、より活動的な消費行動などにも積極的にかかわるようになっている。そのため、多くの産業界や企業などでは、販促や集客策などのマーケティングを、若者やファミリーなどから、シニア層へとシフトさせる動きが本格化している。

特に、高齢化社会に対応するため、各業界や企業では新たなビジネスモデルの構築が進められている。従来のモデルは若者やファミリーを対象としたものが中心だったが、少子化や節約志向の高まりなどにより売り上げが頭打ちとなってきている。一方、高齢者層は人口が増えているだけでなく、お金や時間にも余裕がある。

さらに、核家族化により高齢者世帯が増えており、従来の商品やサービスでは使い勝手が良くなかったり、不便を感じているなど新たなニーズも生まれている。また、活動的で消費意欲も旺盛なアクティブシニアが少なくないため、高齢者が商品やサービスに求めるものも変わってきている。そのため、各事業者では最近のシニアのライフスタイルや志向に合った商品開発やサービス提供、業態開発、売り場づくりなどに注力するようになっている。

3.将来展望

2018年10月1日時点の65歳以上の高齢者の人口は前年より43万人多い3,558万人となり、過去最高を更新し続けている。特に、2014年には人口のボリュームゾーンである「団塊の世代」が全て65歳以上の高齢者へと仲間入りしており、日本の高齢者人口を押し上げている。さらに、高齢者人口は今後も増え続け、2040年には3,920万人にまで達する見込みである。

一方、少子化の影響により若い世代の人口は減少が続いている。加えて、若者や女性、ファミリーなど、従来のトレンドをけん引してきた主力消費層の購買力は低下傾向が続いている。そのため、一層シニア世代の購買力がクローズアップされるようになってきている。

高齢者の人口が増えているだけでなく、シニア層は収入の拡大は期待できないが、住宅ローンや教育費などを抱えておらず、比較的自由に使える資産を多く持っている。さらに、多くのシニアはリタイア後や子育て終了後の自由な時間を持っており、お金だけでなく時間もある。また、活動的で消費意欲も旺盛なアクティブシニアが少なくない。そのため、様々な多くの分野で、シニアの消費に対する期待感が高まっている。

シニアに特化した商品やサービス、業態が伸びていたり、シニアに焦点を当てることで業容を拡大させる事業者などが目立つようになってきている。今後もシニアマーケットへの注力度は高まり、参入も加速していくものと考えられる。そのため、シニア関連市場は今後も成長を続けていくものと予測される。